宗匠の一言

糸底に朱の窯印夜鳴蕎麦
洗い残しではきたないでしょう、夜鳴き蕎麦らしくてもそれはくそリアリズム

方円の古墳囲みて菰の松

神留守の堂の墨書に丸ひとつ
神仏混淆していませんか?

息白く嘶き合ひて馬車だまり
ブルージュの街を思い出したという福田さんの感想あり

遺言の口伝短し神渡し
なにやら不可解な句である

雨戸打つ夜半の風音夜鳴蕎麦

落葉踏む音の連れ立つ遊歩道
散歩道やら、遊歩道やら、場所に余程の意味のないとき意外使わないことです

白息やデフレの街の商戦旗
幟を旗指物、軍旗のごとく「商戦旗」とは面白い、客を呼ぶ必死の声も聞こえる

少女らのくるくる睫毛街小春
少女らと複数であるからにはケバい女子高生だろうが、それを少女というには抵抗あり

職辞きて主婦なる膝の毛糸玉


小次郎のかざす長剣菊人形
銀の長剣でしたが、菊の小次郎では言葉足らず、いずれにせよ、菊人形をそのまま詠んでもインパクト不足

トラックに乗せらる牛の息白し

カトレアを形よき胸にシャントゥール

木履の母に先立つ七五三
ポックリを履いた女の子が母親の先を歩いてました、というのが本意だろうが、ポックリを履いた母親がいて、七五三の子がその母親に先立って死んでしまったという解釈の方が自然であるのが切ない

裏街の灯のうるみたる夜泣き蕎麦

霜月の虹太く立つ高速路

晩秋の県庁所在地虹立てり
晩秋の虹で、一つの季語と考えますか?、普通には季重り

靴の泥ぬぐひ新酒の蔵に入る

残業を終えて今宵の夜鳴蕎麦

提灯のうしろは暗し夜泣きそば
上、中句はありそうで面白い表現だが、夜泣きそばで受けては、技あり!って感じになりません

肝溶きし醤油ころあひ温め酒
確かにあるけど、味加減まで見るたぐいのものではないかも
荒塊の田を夕霧の押し均す
夕霧やとすると、押し均すのは作者ということになるが

長元坊羽根を畳みて日矢を切る

自転車の鈴の躓き息白し
スズではなくて、リンと読みたいですね
園丁の空打つ鋏百舌鳥日和

葉をふるふ後の雄雄しき御神木
落葉のときも、という感じがわからなかった

コーヒーのにほへる街や息白し
手軽にコーヒーを飲ませる店が増えました
菊の香や導師故人の志を語る
「志:シ」と読ますか、菊と葬式も即きすぎだ

夜鳴きそば待っている間の道遊び
道で遊んではいけません

山深し剣のごとき月冴える
冴えるという中に、剣のごときも含まれるかもしれませんね

自販機に食はせる小銭息白し

シネマ果て笛の客呼ぶ夜鳴蕎麦
笛の呼ぶシネマ帰りにでは、映画館で笛を吹いて客寄せするみたい

湯豆腐を掬ふ女の赤き爪
女の爪赤き、と、女の赤き爪は見ているものが違うと思いませんか、爪赤きは女そのもの、赤き爪は女の指先だと思うのです

逆上りして舞ひ上げし落葉かな
逆上がり子の舞い上げる、では上句で切れてしまうので逆上がりの主体が見えなくなる

置き去りのしゃべる玩具や文化の日
しゃべる玩具、玩具のおもちゃ、で見えるものが違ってくる

城跡に犬呼ぶ人や昼の月
犬呼ぶ婦人としてあったが、それほど意味のあることではない

競り走るマラソン人の息白し
マラソン人ね、あんまりうれしい使い方ではないな

残業の煙草のこもり星月夜

信号で止まるチャルメラ夜鳴きそば

鳥の首伸びて木の実をつつきをり

残業の目鼻のつかず夜鳴きそば
終わりし頃の夜鳴きそばではなんの変哲もない、「一節」と重次はいいました、結局「ひねる」のです

早朝のジョギング仲間息白し
そうでしょうね、で、そこから何を感ずるか

ほろ酔ひてしばし眺める夜鳴きそば
これが許されれば何かを見たという報告が俳句になるということになります

朝まだき鞍上安下息白し
競馬場騎手馬ともに息白しでは、べたづき

チャルメラが調子外れの夜鳴きそば

ふるさとといふ寒灯のぬくさかな
見れども寒灯ばかりでは、普通は寒灯と秋灯、春燈がまじるのかとかなる、見る、聞くなどは余程のことがなければいわない

指揮官の朝の号令息白し

風花の舞ひたる朝の点呼かな

門限の時間をにらみ夜鳴そば
ただ今合宿訓練中とか、環境にしっかり影響された句ばかりですね

着脹れや朝の点呼の高齢者

尉鶲鏡に恋をしたりけり
恋を語るというのは、止まって鳴き掛けている、ちょっかいを出している図はよくあるけど

ゆく道のまつすぐなれや夜鳴蕎麦
転職して屋台をはじめる友人への激励句だそうだが、挨拶句は直裁であると味も素っ気もない

朝市の媼声高息白し
朝市のおばさんの月並みな景だな

引き寄せて眼鏡の曇る夜鳴き蕎麦

白き息足早にゆく通学路
通学のイメージをどうとらえるかだが、小学生にせよ高校生にせよ、足早って案外ないのが登校ってものでは?

箸を割るほども待たさず夜鳴蕎麦

貴婦人といふ白樺や大枯野
貴婦人という白樺は、もう沢山でしょ

半白の禰宜の祝詞の息白し
中年の禰宜ではなにやらぼんやりしたものだ

合宿のまどろみ覚ます夜鳴蕎麦

落日の光ともなひ鴨の陣

鳴き真似に応へし雀小春かな

息白し通学帽の埋める道
黄帽って、なんだか分からんでしょう、赤帽ってのはもういなくなりましたが

動くたびこぼす鈴の音七五三

掌に包む缶珈琲や冬紅葉
缶珈琲の温さは結構あるんです

夜鳴蕎麦店のシャッター風に鳴る

朝明けや窓より逃げる息白し

篭る湯気眉にまつはる夜鳴きそば

朝まだきバス待つ列の息白し

菊の香や雨の予感の駅の道
小雨上りの駅の路地では平板でしょ

露天湯へ渡る廊下の息白し

夜鳴きそばにはかに更けし町通り

ポスターを張替へ駅の冬の陣

木守柿ともしび色に昏れにけり

息白しギターぽろんとひびかせて
ぽろんでは息を激しく使う歌の感じにならない

試歩の径嵩となりたる落葉かな
元気になって結構でした

盛切りの酒とチャーシュー夜鳴そば

白息やトンネル工夫闇を掘る

風の棲むビルの抜け道散り銀杏

荒れ騒ぐ海を叩きて冬の雨

賄ひのおろし一匙焼さんま