第96回 平成16年8月22日

    耕
☆ 大津絵の鬼踊り出る暑さかな
  芋虫の重みに垂るる薄葉かな
  息かけて冷まして処暑の水餃子

     昭雄
☆ 瓜馬の轡を取りて母来ます
  芋虫眠る万丈の星明り

     登美子
  処方薬減りたる友ときのこ汁
  埃茸ほうけ煙に囲まるる
  毒茸の朱を育てたる昼の闇
  日時計の針影尖る大暑かな
  沓脱ぎの脇にひろげて干す茸

     比呂
  山墓へ一人の巾の草を刈る
  芋虫の小足思はぬ足力
  跫に混ぢる鈴の音踊りの夜
  母祀る母の手順の精霊棚

     良人
  那須岳の煙定まり秋立ちぬ
  呼び合へる超えの間遠くきのこ狩
  葉の裏にひそむ芋虫透かし見る

     ミヨ
  水の面の風に息継ぎ糸蜻蛉
  芋虫の角冠の青光り
  母と住む話しまとまり大豆飯

     ともこ
  芋虫を囲み下校の膝小僧
  川べりの草は弓なり銀やんま
  物干しのシャツに風来る今朝の秋

     聖子
  芋虫の憧れ青い空を飛ぶ
  いも虫や日記のペンの進まざる
  名も知らぬ茸は毒と思ふべし

     一構
  梅干して終る一日日曜日
  新妻のぬかどこに埋め茄子の紺

     清子
  舞茸のほどよく揚り平家蕎麦
  次々に葦切り発たせ舟進む

  敬子
  指欠けし古仏の嘆き秋に入る
  茸篭赤子労はるごと背負ふ

       憲巳
  腸のかきむしられて大花火
  夏草や石の地蔵の首失せて

     信子
  取れたての乳茸乳吐く目籠かな
  芋虫にひねもす空の青さかな


     芳子
  独り居の身を持て余す夕端居
  空耳に嬰の泣き声秋立ちぬ

     鴻
  他人の後はづれて歩き茸狩り
  葉脈を残し芋虫去りにけり

     利孟
  手作りの味噌の濃き味茸汁
  芋虫の六腑に満てる草の青
  みそはぎやナビにデータの無き小径