第116回 平成18年6月18日
◎曳舟の水尾濃く蒼く夏めけり
◎初夏の馬の目にある草千里
◎日時計の影の短さサングラス
釣座にて出して形見のサングラス
岩崎
◎化粧塩纏へる煙鮎を焼く
初夏の風を絡めて漕ぐオール
利き過ぎの糊の音立て宿浴衣
大澱に丸き波立て打つ投網
植竹
釣竿の巾ほどの陣首夏の川
子が真似て掛け行く夫のサングラス
どくだみの花摘み指の香りけり
堰に飛ぶ稚鮎を狙ひゐたる鷺
逆波を立てて遡上の稚鮎かな
どこまでも続きて栃の木下闇
清子
人声の次々に来る木下闇
サングラスして憚りも失せにけり
みどり児の大き泣き声初夏の朝
敬子
初夏の空へと謡ひ武田節
六月や少女の膝の滑らかに
父の日や藍の褪せたる剣道着
縞シャツの釣の青年梅雨の蝶
聖子
緑蔭に真白き椅子のレストラン
初夏の一人旅する豪華船
サングラス外し男気失せにけり
腹に朱を抱きせはしき目高の子
尺蠖の頭は鍵穴をさぐりけり
心太の濁りに差して杉の箸
ともこ
◎ロープウェー降りて真白き夏帽子
初夏や耳にタグつけ牧の牛
浮島の草に絡みて蝌蚪の紐
信子
◎蛇と会ふことに始まり出羽詣
日々の事しばし空つぽサングラス
比呂
◎頭より外すタオルの麦ぼこり
標本の髑髏目を剥く梅雨の雷
◎菜種打つ唐箕の風の回る音
一手打ち間合ひ取る琴夏温習
初夏の風入り来る宿の五穀粥
雨雫残る林の春の蝉
カーナビに無き道を行き藪萱草
芳子
初夏の朝日に光る釣の糸
蝌蝌の池群れゐて墨のごとくなり
白壁の館ポピーに包まれて
サングラス髪にかざして行く少女
良人
◎天耕の田毎田ごとの菖蒲かな
老鶯の声谺する雨の尾瀬
山女釣る燧ケ岳しらじら明け初めて
ほととぎす石屋が開く墓の蓋
初夏や海よりらしき遠汽笛
おしやべりに飽きて取り出すサングラス