第154回 平成21年9月13日
秋天や抱かれ疲れに子の寝入り
肩肘を張らぬ雲湧き夏の果て
朝刊の束投げ積みに霧の駅
秋めくや音無く震へ着くメール
大木樽並ぶ蔵元重九の日
比呂
◎秋草や左千夫の墓は川渡り
・秋めくや野の花の載る斎の膳
・重陽や齢九十の生仏
鯖雲やひらひら潜く海女の足
・菊酒や奉納太鼓試し打ち
ともこ
◎蔓につる絡め朝顔咲き登る
・秋めくや梢の鴉遠見して
今日の菊一輪挿しに朝の卓
・朝顔の咲き継ぎ小さき花あふる
ジュルジュルと音立て秋刀魚焼き上がる
△飛び入りにつられ加はる踊りの輪
・一つ誉め一つ叱りてところてん
・秋めくや木々の影伸ぷ午後の苑
・磴上る神輿と百の祭足袋
・夏の雲貸し農園へ行く支度
ミヨ
△炒りたての麦茶の香立て大薬缶
茅葺きの切り口厚し月見茶屋
・秋めくや陶土に押して粗布目
・日輪に鎌研ぎ澄ましいぼむしり
・かこ結び解きてとくとく菊の酒
清子
△実の成るもならぬも南爪花盛り
・消灯の後の病間の良夜かな
秋めくやゴンドラの影すれ違ふ
稲すずめ一輌車には驚かず
菊の宴祖父のおはこの詩吟かな
△重陽の酒の菰解く蔵座敷
初あらし向ふ岸よりサキソホン
リハビリの棚に癒さる茄子メロン
マネキンの衣装一足早く秋
・新蕎麦を打つ尼御前の襷掛け
昭雄
△帯に喝入れ炎天に出陣す
秋めくや少しかさつく風の音
・重陽や軍鶏の昼告ぐ明治村
茄子胡爪今も暮らしの中に井戸
重陽の湖の鳥居か陽に映えて
登美子
・売店にハイカーあふる菊日和
・水引草紅の小花の雨宿す
秋の星アルバムに足す笑顔かな
・すくと立つ茎も赤みて曼洙沙薙
大都会無限の窓に秋灯
・新涼に誘はれそぞろ歩きかな
・秋めくや風やはらかく肌を過ぐ
重陽や仕事探しに明け暮れる
・菊一輪節句の酒に浮かべけり
居酒屋や酒に菊かと思ひつつ
鴻
・菊の宴朋遠方より来る
・畦道にあふれて実る稲穂かな
・芋虫のギクシヤク描を脅かす
学童の衣服の色の秋めきぬ
秋涼しゴルフコンペの戦果良し
一構
・秋めくやターミナルには人の波
ワイン抜き寄り添ふ灯影秋めけり
・銀しやりの結びを囓り終戦忌
料理本赤で線引く菊の酒
学校に安全教育秋の蝉
・街中の廃墟を秋の草埋めて
菊の目の朝日隠れに残り草
・川底の魚影光りて秋めきぬ
街絡樹の栃の色褪せ秋めきぬ
・入り日射す山田色付き秋めきぬ