第207回 平成26年4月20日
兼題: 長閑 接木


  利孟
 たつぷりと水くれ首を刎ね台木
 花苺袋で売らる刻み藁
 新しき道の北へとなほ残花
 棘の疵までの香りや木の芽摘み
 駘蕩の雲より生れ飛行船

  信子
☆のどけしやしばにあづけし鳩の胸
・宵の春氷遊ばせブランデー
 一雨のしづくに濡れし接木かな
 影一つづつ一列の接木かな
 紐に紐足して電燈寒戻る

  木瓜
△接木して二つの顔を持つ男
△長閑なり雲はゆらりと座してをり
 隔たるも接木ひとつとなりにけり
 長閑さや味はひ深き日暮れ時
 囀の陽の光とや交じり射す

  聖子
△農業祭知事の手渡すチューリップ
・堆肥多目に水たつぷりと接木終ふ
・大木の桜由来の名所札
・長閑しや夕日に映えて寺の屋根
 農を継ぐことを心に接木かな

  一構
△せせらぎの音聞く足湯長閑なり
・長閑なりときに光の機影かな
・長閑なり眉にピアスの陶芸家
 長閑さや道でメールの女学生


  ミヨ
△長閑さや舞ひては鳶の風まかせ
・夕雉子一服もせで野良仕事
 お薬師の羽目の毀れや花は実に
 接木とて親木に重ね年輪かな
 夕ざくら笛の音遠くしづごころ

  昭雄
△五月かな草履輝く巫女溜り
 春の虹二重に三重に大谷川
 接木する父一徹の肥後守
 大マスク双眸語る佳人かな
 長閑けしや古へ語る埴輪の眼

  輝子
△山を背にうねり大きく鯉のぼり
 のどかなり枝飛ぶ鳥の桃源郷
 棚引きて姫白蝶ののどけしや
 頬撫でて流る風ものどけしや
 陽の流る山路越え行きのどかなり

  比呂
・よく走るアリスのウサギアマリリス
・軽病みの屈託の日々桜蘂
・古書店に入荷する古書長閑しや
・鳥交る鶏舎はいつも騒しく
 台木には遠縁なれど接木せる

  敬子
・桜茶屋客の列なす手打ち蕎麦
・床の間の母の愛せし紅き薔薇
・長閑けしや鳶ゆつくりと旋回す
・友引の日の軒先の接木かな
 脳トレの傘寿が描くチューリップ

  鴻
・魚下げて家路に向ふ日永かな
・春眠や雀の声を遠く聞き
・暮れ遅しいつも居眠り老夫婦
・眦を決しベー独楽春の宵
 春の昼子ら賑やかに水遊び

  良人
・板塀の続く小路やのどかなり
・頼もしきだい木の幹の太さかな
 のどけしや釣人癒す吹く小風
 子の遊ぶ川辺の風ののどかなる
 長堤をひとり歩きののどけしや

  健
・長閑なりベンチ二人で老夫婦
 おしやべりの長閑な口調座はなごむ
 手をつなぐそぞろ歩きは接木かな
 親木あり親子に似たる接木かな
 田園に遊ぶ童ら長閑かな

  巴塵
・長閑さや三枝の礼の親子鳩
 花に似ず池駘蕩の水面かな
 待ち焦る細い接穂に花一つ
 長閑さや池にただよふ夕日かな
 釣り人や風駘蕩の舟の上