第210回 平成26年7月20日
兼題 筒鳥 祭笛
嘴に雫スワンの花氷
眦に朱入れ団扇の大首絵
御目見得の子の肩固く祭笛
匙舐めて宥める舌やかき氷
筒鳥や子無きは去るといふ昔
比呂
☆深梅雨や雌滝雄滝の混じり合ふ
・降り込めて祭浴衣を持て余す
・笛方の着きて始まる祭かな
・ねぶた笛撥ねる志功の厚眼鏡
・筒鳥の語尾のかするや雨激し
聖子
☆祭笛固き紅緒の下駄履いて
・祭笛聞けば幼子駆けだして
・眠る耳の奥に残りて祭笛
・祭笛揃はぬままの子の囃子
筒鳥や噂話を持ち帰る
△櫓はや月下に踊り待つ日かな
△梅雨深し元然々と訃報欄
・若者を加へ華やぎ祭笛
・筒鳥や深山に続くけもの道
梅雨木立一本づつの濡るる青
良人
△筒鳥や赤麻の沼を抜ける風
・唇をなめては吹いて祭笛
・神輿舁く日焼けの脚に白き足袋
・筒鳥や開ける原の古木道
祭笛聞こえ来風の変はるたび
昭雄
△筒鳥や鍬に凭れて聞き惚れて
・出を待ちて湿す歌口祭笛
・捨てられぬ郷里に直吹く祭笛
筒鳥のひねもす叩く古戦場
両脇に大志の花粉蜂帰る
△祭笛腰の根付けのとる調子
・切り株に坐せば押し寄せ夏の霧
・瓢剥く天日の心もと無き日
永らふやまぶしみながら着る縮
板倉や筒鳥来鳴く裏の山
芳子
△長梅雨や警策の音響く梁
・いつの間に輪のふくらみて祭笛
・筒鳥や道なほ細き峠茶屋
踏みしめて踏みしめて暮れ茅舎の忌
術前や何すべく蛇衣を脱ぐ
巴塵
△ぶつつけて競ふ屋台の笛太鼓
・筒鳥やセピア色した母の声
直会に癒やす火照りや祭果つ
祭笛老いて中ゆく宮の宵
白樺や筒鳥ぽぽと託す卵
・味噌蔵の喫茶コーナー新茶汲む
・椎の花玩具と戯るる老爺かな
・筒鳥や吊橋風に揺れゆれて
巴波川の鯉も聞き惚れ祭笛
梅雨の夜の夢のしらべのコンサート
一構
・鉢に投げ入れた紫陽花酒を酌む
・襖絵は藍の紫陽花座禅組む
・これやこの紫陽花嬉々と色尽す
梅雨寒やもう一枚と掛ける夜具
禅寺の雨の山門花四葩
輝子
・雨音の染み入る森や遠郭公
・筒鳥の沢音越えて鳴きしきる
・里山の頂埋めて姫小百合
筒鳥の響きし声の森深し
撥翳し太鼓高鳴る祭かな
・筒鳥のあてなき声の風を呼ぶ
・筒鳥や謎の迷路へ誘ひけり
美し音震はす指や祭笛
どくだみや意図し悪友戯れ寄る
祭笛父の背中に背負はれて
健
・ステージは車の荷台祭笛
着飾つた子のとるリズム祭笛
筒鳥やポンポンポンと鼓うつ
面つけて舞へる知り合ひ祭笛
祭笛鎮守の森にこだまする
鴻
いつまでも腕に刺し痕残しぶゆ
川遊び吸血アブに脚刺され
祭笛吹き手の男真剣に
影さして鉢の孑孑沈みけり
筒鳥やポポポポポポと鳴き叫ぶ