第258回 平成30年7月22日
兼題 十薬 河鹿


  良人  
☆宿の灯の揺れんばかりに河鹿笛  
○吹く風に笛を合はせて初河鹿  
 どくだみの花咲く道に夜風吹く  
 絶え間なき瀬音を越えて河鹿笛  
 石垣に沿ひてどくだみ咲きにけり  

  美恵子  
○伽羅蕗や米寿の母の小さき碗  
○川歩く足の冷え切り河鹿鳴く  
○十薬や御手分厚き如来像  
・気温図の真つ赤に染まる猛暑かな  
 激辛の麺を啜りて猛暑かな  

  聖子  
○山宿に灯入れば河鹿鳴き初むる  
○十薬や文書ケースの古硝子  
○河鹿鳴くずつしり重くおんぶの子  
・山寺の東司の裏のどくだみ草  
 山並みの夕日に染まり河鹿鳴く  

  ミヨ  
○源五郎すいと乗りたる雲の舟  
・十薬や母の夜毎の古土瓶  
・捩花や低く風よびケンケンパッ  
 登山靴の紐をしつかと馬返し  
 銅都てふ月日の流れ河鹿鳴く  

  木瓜  
 河鹿笛川の流れの音に合はせ  
 草いきれ病床日誌あてどなく  
 夏草や分け隔てなし渺々と  
 毒だみのめまぐり迫る己が庭  
 孫の目がじいじを査定鰯雲  

  巴人  
三峰の阿吽の狼河鹿鳴く  
・笑ひ声湯舟に響く河鹿宿  
・河鹿鳴く明眸皓歯古社の巫女  
 吊り橋や足覚束無く河鹿鳴く  
 どくだみの四弁蒼白土恥し  

  信子  
○宿下駄で巡る外湯や河鹿笛  
・柩打つ石を手渡し百合の花  
・ビルの影ビルへと丸の内敦  
 鬩ぎ合ふごと十薬の石越えて  
 世の夏や水瓶に水貯へて  

  昭雄  
・星讃ふばかりに河鹿鳴きしきる  
・いづくかに水湧く処河鹿笛  
・父祖の地の自慢のひとつ河鹿笛  
 十薬や真顔の母の「ちちんぷい」  
 望郷の枕がかたし河鹿笛  

  青樹  
・ゴリを突く河鹿住む瀬を上り下り  
・奥入瀬の瀬音に紛れ河鹿笛  
 どくだみの根のたくましくあちこちに  
 どくだみの匂ひを指に持ち帰り  
 河鹿笛背に聞きながらゴリを突く  

  敬子
 鴎外忌青草なびく記念館
 小鳥の三羽鳴き合ふ夏椿
 下野や芋街道の夏めきて
 神様は千変万化河鹿鳴く
 金色の箸の添へられ夏料理

  栄伍
 遠雷に鳴きやむ河鹿夕間暮れ
 空耳か金襖子泣くらむ夕暮れて
 臭残るドクダミ毟り明日もまた
 覗き見る十薬の花清みし白
 蛍の消えしせせらぎ河鹿鳴く