第277回 令和2年2月16日
兼題 雛飾る 凍滝


   瀧凍てゝ水にねむりの刻もどる 重次






利孟
 金色の艶の畳や雛飾る
 顔の古りて艶よき享保雛
 凍滝の奥に寝息の水の音
 大瀧の凍て龍神の深睡り
 春隣り皇居周回してジョガー

信子
〇氷瀑へアイゼンの音一歩一歩
〇かすかなる鼓動月下の滝凍てて
〇サハリンの風哭く浜や雛の宿
・姑の手も借り八段の雛飾る
・父祖の地に生るる風音雛の灯

良人
〇音もなく凍滝滝壷へと落ちて
〇凍滝や仰ぎ見る人拝す人
・凍滝の観瀑台に声上がる
・夜更けまでかけ雛飾る畳の間
・古宿の一間を埋め雛飾る

美恵子
〇アイゼンの青き凍滝蹴り登る
〇縞の黄の淡き仔猫や雛飾る
・手送りに親子三代雛飾る
・水温む色鉛筆で街を描き
 両手の手を添えて飾るや二十歳雛

比呂
〇四度の滝凍て岩肌の蒼光り
・稲穂簪挿し裃の年女
・凍てきれぬ細き水音禊滝
・母許に急ぐ近道寒夕焼
 婚の日の定め賢し雛飾る

聖子
〇袋田の山家の水や滝凍つる
・滝凍てて岩場の苔も凍てるかな
・大正の嫁入り道具の雛飾る
・凍滝の袋田駅に投句箱
 雛飾る平家道具の雅叙園

ミヨ
〇草も木も絡め滝の凍てつけり
・雛飾る灯火こぼるる帯桟戸
 軒つくと蜂巣たちゆく大内宿
 冬たんぽぽ未来の声をひそめけり
 川敷や凍てつくビルの影ゆらす

昭雄
・政事雛に任せて雛飾る
・凍瀧の奥に水音満つ命
・六歳の頃に婚約雛飾る
・荒行の乱れし声や瀧凍つる
・凍滝の奥にかすかな谺かな

木瓜
・老ゆるほど春の光のまばゆくて
・沁みついた古き匂ひの雛飾る
 昨今の不安を脇に雛飾る
 温暖化豪の山火事果てもなく
 凍滝やぽつりと種田山頭火

英郷
・高坏の菱餅一つ反り返る
 今年また見果てぬ夢や凍り滝
 空温み遊びも華やぐ雛飾り
 我が家でも普通に見れるか雛飾り
 底冷えて凍てつく瀧に身も縮む