第279回 令和2年4月19日
兼題:惜春 蘖
蘖の伸び転生の雑木山
囀りに応へさへづり起ちにけり
シーソーの刹那の高み春逝けり
音立てて田ごとに別れ春の水
汐の香と花の薫りの桜餅
比呂
☆亀鳴くや竜の蹴爪の掴む珠
☆惜春や手打たばるると竜の声
〇蘖や峠を守りて石の神
・湧水に揺らるる小石春紫苑
・忠敬の草鞋を濡らす春渚
信子
〇どこまでも青惜春の飛行雲
・蘖や岸を離るる手漕ぎ舟
・惜春の日のなほ燃えて落ちにけり
・校庭の朝の歌声ひこばゆる
ソファーに仔犬の寝息紫木蓮
・微紅き蘂落つ小道春惜しむ
・惜春やオンライン授業の通知来ぬ
・オンラインで呑む同期会春逝けり
蘖やケーキの蝋燭数へ立て
蘖や椀のお替はり競ひ合ふ
木瓜
・還暦となり道半ば養花天
・ひこばえや住めば都ぞ陽を受けて
・ピョンと跳ぬ小かわずとして生まれけむ
ひこばえや生まれ落ちれば一等地
猫の子の眼は大きくて揺るぎなし
英郷
・惜春の情や齢を重ねけり
・駅前に人の影なく春逝けり
・山歩き蘖の芽を数へては
惜春や新型コロナ厭ひけり
更地には主なしとて蘖る
・ひこばえや風に運ばれ沢の音
・幾重にも重なる山並み春惜しむ
吹く風や裏磐梯に春惜しむ
安達太良の山をまぢかに春惜しむ
お岩木山の白き頂春惜しむ
敬子
・歩く人立ち止る人夕桜
・目薬の甘さとつぽり花疲れ
百歳のレシピに学ぶ春の味
大平山の山満開の桜かな
被災地へ桜前線届きけり
昭雄
・渾身の鐘の一打や春惜しむ
抽斗に仕舞ふが如く春惜しむ
まつすぐなひこばえを活け奥座敷
ひこばえや仏と神の国繋ぐ
ひこばえにたしかな大地子の背丈