第282回 令和2年7月26日
兼題 星月夜 炎天
炎天下スマホ画面が見えませぬ
形悪しきトマト失敬悪太郎
帰省子の舎監に声を掛けていざ
白南風や砂に打たるる左千夫の碑
山並を闇が塗り込め星月夜
小又美恵子
☆蛇姫の流れを濁し崩れ滝
○おそろひのマスクで散歩星月夜
○沢遊び昼餉の野菜の冷えたころ
○火を熾し山女魚を捌き日向沢
○リターンを押しトリミング星月夜
大貫ミヨ
☆黒塚の灯のなき苫屋星月夜
○首里城の焼けに黙して炎天下
○落電の擦過の大樹古戦場
○雨上がり羽蟻うごめく杣の小屋
吹くかれ来て日にてらてらと夏の蝶
◎炎天や宿のガラスの山揺れて
◎鯉跳ねる音が波紋に炎天下
◎炎天や水場へ小さき道しるべ
○道案内車の整理油照り
栃木昭雄
◎背の児の手足がはしやぎ星月夜
◎三猿と決めて炎暑の奥座敷
○老ひし母のしづかな湯浴み月見草
炎天に打って出るべく振る竹刀
星明り光年のひとかけらかな
会田比呂
◎かたつぽの靴が砂場に星月夜
○蜜豆や子の名を刻む銀の匙
○炎天下富士山の五合目迄のバス
○嘯けるままに散るらん花石榴
骨上げを待つ間の小食梅雨の闇
◎炎天に燃ゆる金剛力士像
○星月夜過去の光を今に見て
炎天や会津柏屋小饅頭
何事も許すと云ふか星月夜
蝦夷菊や自由気ままに咲きほこり
堀江良人
○山寺の参道白く星月夜
○炎天の川面に風の淀むかな
○炎天の渋滞空のタクシーも
○炎天の並木の陰の黒々と
○田の畔を歩む白鷺炎天下
野口英郷
○星月夜仄かな風を袖に入れ
○炎天に野良犬舌で息をして
○炎天の空どこまでも透けてかな
○炎天の舗装道路に影揺らぐ
部屋壁に跳躍蚤が横並ぶ
○江戸風鈴揺れて赤絵の宝船
○星月夜延長戦の眩き灯
保護犬に昏れる一日法師蝉
一つづつ空けて座す椅子梅雨の雷
限り限りを狙ふ好投炎天下