第283回 令和元年8月24日
兼題 芋虫 踊り

 利孟
 蝉の殻貯め音軽き宝箱
 芋虫の葉を喰ひつくし残す糞
 熱きもの啜り寝冷えの腹癒やす
 タンク背に戦闘開始水鉄砲
 闇踊り白きうなじが手を追ひて

 比呂
◎日雷閻王金の総入れ歯
◎踊り子の金の長爪ジヤワ更紗
△芋虫や釉剥落の虫食手
△峨眉山の影を渡りて月の舟
△遠流の島のマリア観音鰯雲

 聖子
◎校内放送に蜩の声昼休み
△旅役者開演前の盆踊り
△倒れたる鉢より芋虫によつきり
△いつの間に入りて手を真似踊りの輪
・文月の居酒屋のまづ体温計

>  信子
◎変はる世に変はらぬものや蝉時雨
△芋虫の葉つぱの色となり肥ゆる
・共にゐて蚊の選り好むわが腕
・村挙げて踊る広場となりにけり
 月光に翳し花笠踊りかな

 ミヨ
△大雷雨山頂駅の人いきれ
△切つ立ての蒲の穂さはぐ薬研堀
△苧殻火やどつと燃え立つ戦の火
△足長の真菰の馬の駆け来る
・寄せ太鼓夕餉さうさう宵祭

 美恵子
△踊り唄囃子が煽り闇が吸ふ
△鈴の音の揃ひて和楽踊りかな
△芋虫の頭ふり立て葉を削る
△町ごとの囃子ぶつつけ秋祭
・踊り子の笠と手踊る和楽唄

 良人
△盆歌を歌ひ踊りの輪のふくる
△踊り笠はずし女の額の汗
・芋虫の横断歩道渡りゆく
・輪踊りの後に戻りてまた進み
・盆踊り矢倉に登る子の続き

 木瓜
△風なきに風を呼び寄せすすきかな
△若人の酸つぱき孤独青林檎
・芋虫の闇に飛ぶ夜を夢見つつ
 踊り歌気になるあの子先にゆき
 白桃のうぶ毛の皮を剥き上げて

 英郷
△生まぬるき夜風や母と盆踊り
・コロナ禍や踊り囃子を口ずさみ
・盆踊り広場彩る吊り電燈
・盆踊り白地浴衣に博多帯
・犬走り青芋虫が這ひゆける

 昭雄
・捨てきれぬ村の絆や秋祭
・芋虫や少年ついに村を出る
・ご時世に一周遅れ祭笛
 芋虫を見つけて人の集まり来
 芋虫や隣は寝落つ二人の息