□幻想書館□
□中世ヨーロッパの祝祭日□
ほとんどのファンタジー世界は中世期の西ヨーロッパをモデルに構築されていることが多いです。そのファンタジー世界で生活する人々がどのような日常を送っていたかを想像するにあたって、モデルとなった中世ヨーロッパを参考にできるかもしれません。
当然のことながら中世期のヨーロッパは、キリスト教圏に属し、その思想的支配下にありました。しかし、キリスト教の伝教以前に広まっていた土着の古代宗教の名残も根強く残っており、さまざまな風習や祝祭にその跡が見受けられます。今回は、そうした中世ヨーロッパの祝祭日をご紹介しようと思います。
□1.一年の始まりについて
中世ヨーロッパの社会において、「一年の始まり」とされる日は三つありました。
ひとつ目は、12月25日、「クリスマス」。イエス・キリストの誕生日とされている日です。
二つ目は、春の「復活祭」。十字架にかけられて刑死したキリストが復活したとされている日です。
三つ目は、9月1日「世界創造の日」。ギリシャ正教会では、この日に世界が創造されたとして、一年の始まりの日になっています(この関係で、ヨーロッパ文化圏の「学年の始まり」は現在でも9月1日です)。
カトリック教会圏では、「クリスマス」か「復活祭」のどちらかになっていたのですが、地域地域によってバラバラで、同じ王国内でも異なっていたりしました(現在のヨーロッパでは、クリスマスが一般的となっています)。
また、「復活祭」の日にちは「春分の日の後の最初の満月の夜の直後の日曜日」で、毎年変動します。これはユダヤ教(太陰暦採用)の「過越の祭」に関連する祭日だからなのです。
・「クリスマス」 (12月25日)
クリスマスは、「待降節」(または「降臨節」)から「始まり」ます。これは、クリスマス直前の日曜日から数えて四つ前の日曜日から始まるもので、祈りと断食、苦行の期間です。
13世紀からは「教会暦」の一年の始まりとなります。
「民間のお祭り」としては、1月6日の「公現祭」までの12日間続きます。
基本的には「冬至の祭」で、参考としてはローマ帝国時代の「太陽神ソルの祭(12月11日)」や「サトゥルヌスの祭(12月17日)」「供儀アゴーニア(1月9日のヤヌス神の祭儀)」、そして「ミトラの祭(12月25日)」「オシリスの祭(1月6日)」などとの関連が考えられます。
参考:もうひとつのクリスマス (1月6日) |
なお東方教会(正教会系)においては、クリスマスは1月6日として祝われています。 理由としては、教会暦の元がローマ教会ではグレゴリウス暦を使用しているものの、東方教会においてはユリウス暦に従った教会暦を採用しているためです。そのため、ユリウス暦とグレゴリウス暦とのズレによってクリスマスが12日移動し、1月6日となりました。 ちなみに21世紀現在、このズレは13日になっており、ロシアやウクライナ、ベラルーシ、グルジアなどの正教会、またエチオピア正教会、エジプトのコプト教会では、クリスマスは1月7日で祝されています。 |
・「公現祭」 (1月6日)
日本ではあまり馴染みのない祭日ですが、欧米では大きな見本市が現在でも開催されたりする日になっています。商売人にとっては「仕事始めの日」といった位置付けの日でしょうか。「見本市=メッセ」という言葉は現代日本でも定着したようですが、これはドイツ語での「ミサ」=教会での儀式の事です。つまり、こういった祭日に開催されたのが語源になっているようです。ドイツ語が由来になっているのは、おそらくハンザ同盟がその前身が関わっていたのかもしれません。
この祭日は、生まれたばかりのキリストの元に、東方から三人の博士がお祝いにやってきた、という聖書の記述を元につくられました。その為、この日はその三博士の祭日にもなっています。
なお、中世ヨーロッパにおいては、「三博士」ではなく「東方の三人の王」だった、と一般民衆には信じられていたらしく、「三王礼拝の日」とも言われていたようです(白人の王、黒人の王、黄色人種の王、の三人として描かれた絵画もあります)。
・「謝肉祭」 (2月)
別名、カーニバル。この謝肉祭の期日は、四旬節の始まる1週間前で、復活祭の53日前になります(復活祭の期日によって決まるので、この祭日の期日も毎年変動します)。
「謝肉祭」という訳語の由来は日本的解釈かと思われます(動物達の霊を慰めるとか、そういうものではありません)。この祭日では肉料理がメインとなり、その後の四旬節では祭日以外の肉食は禁じられるようになります(魚は問題ありません。なお当時は農業生産能力が低く、肉食がメインになりがちなので、通風予防の意味合いもあったようです)。
お祭りの由来としては、ローマ帝国時代の「サトゥルヌスの祭日」との関連が考えられています。サトゥルヌスの祭日は、本来はクリスマスの項にも書いたように12月の祭日だったのですが、どういう訳か年末から年始後に移動して謝肉祭の前身になった、と伝えられています(現在のサトゥルヌスの祭日は、4月1日のエイプリルフールです)。
「謝肉祭」の最終日は「告解の火曜日」と言い、祭りというよりも、主に教会でこれまでの事を告解(懺悔)する日になっています。
その翌日が「灰の水曜日」で、この日から「四旬節」が始まります。
これは、「復活祭」から数えて日曜日を除いた40〜46日前から始まるもので、「祭り」ではなく、僧侶にとっては節制、済戒、断食の期間であり、一般でも肉食が禁じられる期間です。しかし、この四旬節の最初の日曜日も「派手な祭り」を行う場合が多かったようです。
「灰の水曜日」ですが、これは本当は「樹木を燃やした後の灰」の事で、6世紀頃のガリア教会から始まったもので、樹木信仰との関連が指摘されています。
・「喜びの主日」
「バラの主日」とも言われます。四旬節の真ん中の日曜日で、この日も派手な祭りを行ったようです。
・「枝の主日」
復活祭直前の日曜日の事で、僧侶は復活祭前日まで瞑想、断食などを行うよう指導されます。
・「聖木曜日」
「洗足木曜日」とも言います。いわゆる「最後の晩餐」の日です。この日の夕方から、ユダヤ教の「過越祭」が始まります。
参考:「聖木曜日」(「過越祭」)に起きた出来事 |
12世紀頃からヨーロッパ各地で都市化が進み、異教徒であるユダヤ人との接触が日常的になってきたその頃に起き始めたのは、ユダヤ人への良くない噂話や中傷でした。それは「ユダヤ人達は過越祭の生贄としてキリスト教徒の少年を殺す」というものです。その為、この「聖木曜日」に反ユダヤ人暴動が頻発し、多数のユダヤ人がヨーロッパ各地で虐殺されたようです。 教会側は認定していませんが、この日にユダヤ人によって殺されたという少年が(民間で)「殉教者」として扱われ、「聖人」として祭られるようになりました。 ・聖リシャール(パリ) ・聖ウィリアム(ノリッジ) ・聖ヴェルナー(オーベルヴィリエ) などなどが記録に残されています。 |
・「聖金曜日」
キリスト受難の日です。
・「聖土曜日」および「復活祭」 (4月)
一緒にしたのは、徹夜でのドンチャン騒ぎが丸々二日間続くからです。肉食禁止期間が終わり、鬱憤が一気に解放される、といった感じでしょうか。
□2.冬の祭り
・「主の洗礼の祝日」 (1月13日)
現在は「公現祭」直後の日曜日となっています。
・「使徒聖パウロ回心の祝日」 (1月25日)
聖パウロは初期キリスト教最大の伝道者。もとは熱心なユダヤ教徒としてキリスト教を迫害していましたが、この日キリストの啓示を受けて回心しました。
・「シャルルマーニュの日」 (1月28日)
パリ大学の守護聖人で、パリの学生たちの祭日です。ただし、教会によって正式に列聖されていた訳ではないので「聖人」と言えるかは、微妙です。もっとも、シャルルマーニュを守護者とする際、大学側と教会側とでひと悶着があったようです。
・「聖母マリア 潔めの祝日」 (2月2日)
「キャンドルマス」の別名で知られる祭日です。どちらかと言えば「光のミサ」とも呼ばれる祭儀が中心です。ローマ時代の「フェルブリア」(2月5日)という浄めの儀式が原型かもしれません。
・「聖アガタの日」 (2月5日)
「女性だけの祭日」で、女性はこの日は一切の仕事をしなくても良い、という決まりがありました。当時の農村の女性は家事に子育て、農作業と休まるときがなく、唯一ゆっくりと休める休日だったのでしょう。中世日本にも、端午の節句(5月5日)と同じような休日がありました。
・「聖ユリアヌスの日」 (2月12日)
旅人、渡し守、商人、旅芸人、吟遊詩人の守護聖人です。特にフランスで人気のあった守護聖人で、フランス革命前には約800の聖ジュリアン教会があったようです。
・「聖ヴァレンティヌスの日」 (2月14日)
恋人、友人を守護する3世紀の聖人。失恋の痛手を癒す聖人として人気がありました。元は「ルペルカーリア」という多産祈願の祭日です。
・「聖ジークフリードの日」 (2月15日)
ゲルマン系の国で人気のあった守護聖人です。英雄物語の主人公の名前にも使用されるようになりましたが、元々はただの修道士です。スウェーデン王国の守護聖人で、フリードリヒ1世の時代にドイツ王国の守護聖人とされました。ローマ教会側はこれを認めず、ひと悶着あったと記録にあります。
・「聖ペテロ 使徒座の祝日」 (2月22日)
聖ペテロがアンティオキアに使徒座(司教座)を定めた記念日です。
□3.春の祭り
・「聖グレゴリウスの日」 (3月12日)
教皇グレゴリウス一世。教師、音楽家、学生の守護聖人です。ユリウス暦の「春分の日」として扱われていたようです。
・「聖母マリア受胎告知の日」 (3月25日)
復活祭の前後に「聖母マリア受胎告知の日」というお祭りがあります。
これは、聖母マリアの元に天使が現れ、子供を身ごもった事を伝えた、という聖書の記述に由来する祭日です(「クリスマス」の10月10日前が「聖ヴァレンティヌスの日」の前身である「ルペルカーリア」で、その1月と10日後がこの日です)。
中世ヨーロッパの場合、キリスト本人よりも聖母マリアのお祭りの方が(民間では特に)派手な祭りになる場合が多く、この祭りも例外ではなかったようです(特に復活祭前だと節制が強要されたことも大きいでしょう)。
14世紀からは、この日に「蚤の市」が開催されたようです。
・「蚤の市」
「聖母マリア受胎告知の日」の3月25日は「善き盗賊の日」という祭日にもなっています。
伝承では「聖デュスマス」という人物となっていますが、名前の由来は不明です。この「聖デュスマス」は、キリストが十字架で処刑された際、一緒に処刑された罪人の一人で、キリストを弁護し「天国へ行くだろう」と言われた人です(「受難の日」が3月25日だった日に決められたのでしょう)。
この「聖デュスマス」が「善き盗賊」で「蚤の市」の守護聖人になっています。他には、盗賊、改心した罪人、古着商、古物商の守護聖人となっているのですが、まるで「盗品の流通ルート」の説明をしているような存在です。つまり、「蚤の市」=「泥棒市」というのが、その実態だったのではないかとも考えられますが……。
・「聖ゲオルギウスの日」 (4月23日)
農村では「家畜放牧開始の目安となる日」です。また春の「歳市」の日でもあります。
聖ゲオルギウスはドラゴン(ワーム)退治で有名で、中世ヨーロッパでは人気のあった守護聖人です。
・「福音の聖マルコの日」 (4月25日)
「マルコによる福音書」の作者である聖マルコの祭日です。船乗り、航海の守護聖人です。
・「使徒聖ピリポと使徒聖小ヤコブの日」 (5月1日)
共に洗礼者ヨハネの弟子。聖ピリポは帽子製造者の守護をする1世紀の聖人。小ヤコブは外典に名を冠した「ヤコブの黙示録」の著者とされます。
・「聖ヴァルプルギスの日」 (5月1日)
聖女ヴァルプスルガの祭日。前夜祭が魔女の祭り「ワルプルギスの夜」として知られています。本来はドイツなどゲルマン系の祭りです。
・「メーデー」 (5月1日)
イングランドなどでの祭り。元は「地母神マイア(Maia)の祭日」でした。五月=MAYの語源ともいわれています。
・「聖十字架発見の日」 (5月3日)
コンスタンティヌス大帝が母と共にエルサレムに巡礼した際、キリストの処刑に使用された十字架を発見したのを記念して作られた日。第4次十字軍の際、ローマにその聖十字架が移されてしまったので、それ以降はカトリックでも祭日となりました。
・「全ての聖人と聖母マリアの日」 (5月13日)
旧万聖節。610〜834年まで祝日とされていました。
□4.夏の祭り
・「昇天祭」
復活祭から40日目の木曜日。12世紀以降のヴェネツィアの「海との結婚式」もこの日です。古くは「雷神トゥールの祭日」だったようです。
・「祈願祭」
昇天祭直前の3日間。豊熟祈願祭、とも言います。
・「聖霊降臨祭」
五旬節、ペンテコステともいいます。復活祭前日から50日目のの日曜日。ユダヤ教の「五旬節」(収穫祭)は、「過越祭」から50日目。プロテスタントでは、復活祭から50日目となります。
・「三位一体の主日」
聖霊降臨祭の次の日曜日。以降、待降節開始まで「三位一体節」。
・「聖体祭」
聖霊降臨祭の11日後の木曜日。(1264年認可、1311年制定)
・「聖体降福祭」
聖体祭から8日間。
・「聖ヨハネ降誕祭」 (6月24日)
バプティスマの聖ヨハネの生誕日とされています。職工、仕立て屋、皮なめし、毛皮屋、レンガ職人の守護聖人。
「夏至のお祭り」で、本来はドルイドのお祭りでした。中世には火祭りの形態が多く、12匹の黒い動物、黒猫や黒山羊を悪魔に見立てて、(生贄として?)焼き殺す事が多かったようです。
・「聖ペテロと聖パウロの日」 (6月29日)
聖ペテロは初代ローマ教皇とされていて、漁師、船乗り、鍛冶屋の守護聖人となっています。
・「聖母マリアのエリザベツ訪問祭」 (7月2日)
現行教会暦では、5月31日。14世紀からのお祭りです。
・「聖マグダレーナの日」 (7月22日)
マグダラの聖マリアの事で、十二世紀以降の中世で最も人気のあった守護聖人の一人。偽典の「ピリポ福音書」では「イエスの最愛の女性」とされ、異端のカタリ派は彼女を「イエスの妻」としていました。
プロヴァンスの伝説では、イエスの死後マルセイユに舟で辿り着いた彼女は一人の男子(イエスの子)を産み、その子孫がシャルルマーニュ(カール大帝)であった……。そう信じられていた伝説がありました。
・「聖クリストフォルスの日」 (7月25日)
中世ヨーロッパで最も人気のあった守護聖人の一人で、交通関係全般の守護聖人でもあります。犬頭人身(エジプトのアヌビス神に似ています)で描かれる事が多く、街の出入口や渡し場や橋などに多く祭られていました(「道祖神」的な存在だったと思われます)。
異教的な外見と伝説などから、現行教会暦からは削除されています(今でも「聖クリストファー」のお守りとかはあるらしいです)。
・「聖ヤコブの日」 (7月25日)
使徒聖大ヤコブの事で、9世紀以降の巡礼地となるサンチアゴ・デ・コンポストラで遺体が発見された、とされています。レコンキスタの精神的支柱というべき存在でした。現行教会暦では、こちらがメインです。
・「聖ヨアキムと聖アンナの日」 (7月26日)
聖母マリアの父母、つまりキリストの祖父母の事です。カトリックでは、第四次十字軍以降に盛んになった祭りですが、ギリシャ正教会では古くからの祭りです。
・「聖母マリア被昇天の日」 (8月15日)
中世ヨーロッパで最も派手な祭りで、クリスマスや復活祭よりも大きな祭りになっていた地域も少なくありません。以後、「聖母降誕祭」(9月8日から)までを「女の三十日間」と呼んでいました。
・「聖ヨハネ斬首の日」 (8月29日)
パプテスマのヨハネの殉教日。聖ヨハネの祝日は誕生日とされます(6月24日)。
□5.秋の祭り
・「聖母降誕祭」 (9月8日)
上述の「聖母被昇天祭」と並んで、最も大きな祭りのひとつです。期間は一週間程度が多かったようです。
・「聖十字架称賛の日」 (9月14日)
四季の初めに魂を清めるために断食をする日。
・「聖ミカエルの日」 (9月29日)
中世欧州で最も人気のあった守護天使。この日は、天使カブリエルと天使ラファエルの祭日でもあります。
「収穫祭」「歳市」の日。「秋分の日」という扱いの日でもありました。
・「万聖節」 (11月1日)
「諸聖人の祝日」(Hallowmas)とも言います。前夜祭が、いわゆるハロウィンです。835年制定。
元々は、ケルト系の「正月」といわれています。「冬のはじまりの日」という扱いの日です。
・「万霊節」 (11月2日)
「全殉教者の祝日」で、祭りとしては、後に「万聖節」と統合されました。11世紀に制定。
・「聖マルティヌスの日」 (11月11日)
中世ヨーロッパで最も人気のあった守護聖人の一人。子供の病気や貧人を守護する4世紀の司教。フランスだけでも、約3600市町村の守護聖人になっています。マルティンマスとも言い、家畜屠殺の日という位置付けでした。当時は冬期の間、飼料が乏しいので、必要な家畜以外は冬の前に屠殺する習慣があったためです。
・「聖母マリア 神殿参りの祝日」 (11月21日)
第四次十字軍以降、カトリック教会圏で広まりましたが、正教会では古くからの祭りです。1371年制定。
・「聖カタリナの日」 (11月25日)
中世ヨーロッパで最も人気のあった守護聖人の一人。これも、第四次十字軍以降にカトリック教会圏で広まりましたが、東方教会では古くからの祭りです。
・「聖アンデレの日」 (11月30日)
猟師を守護するイエスの最初の弟子の一人。聖ペテロの兄弟。
・「聖ニコラウスの日」 (12月6日)
子供、船乗り、盗賊、商人などなどの守護聖人です。ご存知のサンタクロースの原型となった聖人です。
・「聖母マリア 無原罪の御宿りの祝日」 (12月8日)
第四次十字軍以降の採用。1854年公認。聖母マリアが無原罪のまま母アンナの胎内に宿ったことを記念します。なお東方教会では、無原罪の解釈がことなるためこの祝日はありません。西ヨーロッパでは7世紀頃から、ナポリでは9世紀、イングランドでは11世紀前半に一般に広まった模様です。
・「聖ルチアの日」 (12月13日)
目および視覚障碍者、シラクサの守護聖人です。この日は旧ユリウス暦では1年で最も夜の長い日であり、キリスト教伝来以前の晩冬の祝祭と結びついたためか、北欧諸国で人気の高い聖人の一人でもあります。
□6.農耕用カレンダー
農村の農作業にまつわるカレンダーです。実際には中世から外れている項目もありますが、当時の農村の様子を伺える内容です。
聖アガタの日(2/5)には氷が張っていても玉葱を蒔け。
聖ウルバヌスの日(3/1)には羊の毛を刈れ。
聖キリアヌスの日(3/1)には蕪を蒔け。
聖グレゴリウスの日(3/12)にはエンドウ豆を蒔け。
聖ベネディクトゥスの日(3/21)はオート麦、大麦を蒔け。
聖ゲオルギウスの日(4/23)に大麦を蒔け、
聖マルコの日(4/25)ではもう遅い。
聖ピリポと聖ヤコブの日(5/1)にはレンズ豆を蒔け。
聖ウルバヌスの日(5/25)には亜麻と麻を蒔け。
聖バルナバの日(6/11)には牧場の草を刈れ。
聖ウィトゥスの日(6/15)には菜っ葉を蒔け。
聖エギウスの日(9/1)になったらライ麦を蒔け。
聖フランチェスコの日(10/4)になったら、小麦を蒔いても良いが、
聖クレメンスの日(11/23)が過ぎたら、もう小麦は蒔くな。
聖ヴァリエの日(10/22)に梨の下を耕せ。
万聖節(11/1)が来たら、鋤を手放せ。
<参考文献>
・『キリスト教歳時記』(平凡社:八木谷涼子)
・『教会暦』(教文館:カ−ル・ハインリヒ・ビ−リッツ)
・『守護聖人―聖なる加護と聖人カレンダー』(新紀元社:真野降也)
・『新約聖書』(日本聖書協会)