ダイは剣を構えた。
ポップの手から放たれようとしている魔法の威力は、先ほどの彼の言葉のとおり、
まともに食らえば致命傷にもなりかねない威力であろうことは、今までの戦闘経験上、
たやすく推測された。
そう、ポップは本気で、ダイに攻撃をしているのだ。
しかも動きには何の躊躇いも、隙も見当たらなかった。
ダイは自分に向けられる攻撃魔法からの防衛に、身構えた。
久々に再会した彼は、少し大人びていたが、その纏う雰囲気は何ら変わりが無かった。
癖のある髪、額に巻かれた黄色いバンダナ、
線の細い顔立ち、自分の大好きな漆紫の瞳…
記憶よりも少しだけ低くなっていた、自分に何度も勇気を与えてくれていた声…
その声が紡いだ言葉は…
ポップから放たれた魔法を防御しながら、予想よりも強かった衝撃に耐えつつ、
ダイはさっきのポップの言葉をも打ち消すがごとく、歯を食いしばった。
『何故、 何故 ?! どうして…?!』
何故、ポップがこの魔界にいるのか?
何故、ポップは自分に攻撃をするのか?
どうして、
どうしてこんなことになってしまったのか?!
とても信じられない状況を冷静に受け止められず、疑問が浮かぶばかりだ。
考えられるのは、ポップが操られていることだった。
そうだ、ヴェルザーが自分を葬る為に、ポップを何らかの策略に落としいれたのだろう。
ポップは、自分の為に魔界に連れ去られ、操られているに違いない。
しかし、どうやってポップを正気に戻すことができるのだろう?
どうやら、自分のことをダイと呼んでいるコトからして、記憶を失っているわけではなさそうだ。
何らかの術をかけられたか、それとも呪いのアイテムか…
どちらにしても、ヴェルザーの仕業には違いない。
『よくも、よくもポップを!!』
ダイは久しぶりに、体中が熱くなるほどの憤りを覚えた。
この魔界に来て5年余り。
一人で戦うダイにとって、怒りに我を失うことは致命的なことだった。
敵の卑怯な戦い方に、何度も怒りや苛立ちを感じたことはあったが、頭のどこかは冷静だった。
戦いの本能の遺伝子が、そうさせたのかは判らない。
しかし今は憤りに身を任せてしまいそうだ。
体中が熱いが、視覚と聴覚は妙に冴えわたっていた。
何も見えない闇をギッと睨みつける。
実体の無いはずの闇の向こうが、うすら笑うような気配がした。
(続く)