麻耶雄嵩 14


メルカトルかく語りき


2011/05/17

 この1年間で3作目の麻耶雄嵩さんの新刊である。奇跡的ペースだ。『隻眼の少女』が第64回日本推理作家協会賞、第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞するなど、麻耶フリークにとっては盆と正月が一緒に来たような1年間だったに違いない。

 さて、本作はタイトル通りメルカトル鮎が登場する作品集である。そもそも、メルカトル鮎というキャラクターを僕はよく知らない。デビュー作『翼ある闇』に続く4作品は、現在では入手困難。果たして僕が読んで理解できるかどうか。結局は読むわけだが。

 結論から言うと、十分楽しめました。わははははは、すげえよ「銘」探偵・メルカトル鮎。付き合わされる作家の美袋(みなぎ)は大変だ。

 「死人を起こす」ってそういうことかい。1年前、別荘で亡くなった生野の死の真相を突き止めるため、再び別荘に向かう面々。そこにメルカトルを呼んでいたのだが…それらしい推理を推理を並べた挙句に何じゃそりゃぁぁぁぁぁ!!!!! 本作中では比較的まともか、「九州旅行」。メルカトルをなめてかかると…。どうやって切り抜けたんだろ。

 「収束」。教祖と信者が共同生活を送る島に渡ったメルカトルと美袋。倒叙的な展開の理由は…確かに収束はしたけども、そんなんでいいのかぁぁぁぁぁ!!!!! 珍しく学園が舞台の「答えのない絵本」。『木製の王子』を彷彿とさせるややこしいアリバイ検証の結果、メルカトルが導いた結論は…何じゃそりゃぁぁぁぁぁ!!!!!

 最後の書き下ろし「密室荘」。20pほどしかないが、最も呆れ…いや、敬服しましたとも。ええ。そんな解決あんのかぁぁぁぁぁ!!!!!

 本作にフェアプレー精神を求めても意味がない。メルカトル鮎がこの世界のルールブックなのだ。木更津悠也より役者が上なのは間違いない。なお、僕が1つだけ確信したことがある。麻耶雄嵩ブームが訪れることは未来永劫ないであろう。



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