長沢節さんの本 | ||
タイトル | 出版社 | 価格 |
新版デッサン・ド・モード | 美術出版社 | 2800円 |
わたしの水彩 | 2800円 | |
長沢節と風景たち | 4800円 | |
大人の女が美しい | 草思社 | 1200円 |
セツの100本立映画館 | 1550円 | |
弱いから、好き。 | 文化出版局 | 1240円 |
あいまいな色が好き。 | 1600円 | |
美少年映画セミナー | 角川書店 | 1200円 |
長沢節さんに関する本 | ||||
タイトル | 著者 | 初版発行日 | 出版社 | 価格 |
NEW!セツ学校と不良少年少女たち絶版 | 三宅菊子 | 1985年1月12日 | じゃこめてい出版 | 980円 |
長沢節物語 セツ・モードセミナーと仲間たち絶版 | 西村勝 | 1996年10月24日 | マガジンハウス | 1700円 |
NEW! |
1972年5月、金子さんは初めてのコレクションをした。
「あの初めてのショーを長沢先生が、よかった、って言ってくれたんだよね。僕はこわくて、先生の顔も見に行かなかったら、花井(幸子)さんが教えてくれたの。その年、お化けみたいなイヴニングを出したんです。イヴニングなのにブラウスも着て、腰巻も巻いて、とにかくいっぱい着込んだような。それを長沢先生が、量のバランスがいい、とてもキレイだった、って言ってるよ――花井さんからこれきいて、躍り上がる気分でした。」
それから何年も後、ピンクハウスの組織と資本が変わって初めてのショーのとき。(’81年春夏コレクション)
「この年の僕は孤立無援みたいな気分で、とても心細い半面、やるぞ、みたいな大頑張りのとき。先生の本(「大人の女が美しい」)の中に、そのショーのことが書いてあったんです。あんなに嬉しかったことないね。奮い立たせる、人を助ける言葉だと思いました。あの先生の本が、だから僕の勇気の源だね」
三宅菊子「セツ学校と不良少年少女たち」より
私のところにはいろんな婦人雑誌の類が送られてくるのだけれど、なにげなくふとみつけた中で、毎号が楽しみになってるコラムなどもあって、その一つがかつて「アンアン」に連載されていた「いいものみつけた」(’79−’81年版)という金子功のコラムだった。いつごろから続いていたのかはよく分からないが、ファッション・デザイナーでありながら自分の作品を売り出すことは二の次とし、自由な発想でただ美しいものをあらゆるところから拾い出してくるところがまことに面白かった。
やたらに自分を売り出すことばかりが習慣となっているファッション界の人たちとは思えない自由さなので、私は、彼のファッション・ショウなどより、むしろこっちがホントの金子功なんだなと思うようになったのだ。
たぶん彼のあまりにも耽美主義的な作品のせいだろう、彼のピンクハウスが一時は危なくなって、彼のファッション・ショウはもう日本では見られなくなってしまうのだろうかとさえ思ったことがあった。その後何シーズンかを休んだあとで不死鳥のようによみがえったのは、今年の春からだった。しかし以前の耽美主義は相変わらずでホッとさせながら、彼のモチーフには大きな変化が表われている。つまり「美しい女性」の年齢が、以前の二十歳代から三十歳代にぐっとあがってきていることだ。だから以前の、とかくかわいらしい西洋人形ぶりが、生なましい女に変身して、急に目の前に立ちふさがった感じなのだ。私はそこに彼のコラム、「いいものみつけた」が力強く刻みこまれているのを素早く見てとったのである。
若さが失われることでの美しさ、つまり、若さのせいでない、人間そのものの美しさのようなものが真のエレガンスというのなら、それが金子功の新しい発見ではなかったかと思った。彼、ムダに休んでたのではなかったのである。
派手さがその色や形からすっかり消え失せた代わりに、女の性の香りが全体のグレイ調のモヤの中にかなり強烈に閉じこめられていた。それは今までの彼の仕事にはついぞ見られなかったもので、三十代の女が、ニ十代の女などよりこんなにも美しいものなのかと改めて見せつけられたわけである。
私はふと、金子功が他の男性デザイナーに比してこんなにも女になれる……という点を面白いと思った。パリも含めて、現代を彩る男のファッション・デザイナーたちときたら、彼らがホントに女を愛し、女を美しいと思っているかどうかはきわめて疑問としなければならないからである。
・・・・・・中略・・・・・・
つまり男性デザイナーは、女を美しくしたい、女の美しさをひきだしたい、というよりも、自分を美しくデザインしたいというのが常に強烈なホンネなのだ。そこがスキャンダルになってしまうのであって、「俺が俺が」としゃしゃり出た男の作品なんかスキャンダル以外の何ものでもないであろう。金子功には男のくせに珍しくそれがないから、そこが彼の長所でもあり、ときにマスコミ受けをする強烈さがともなわないということで、欠点にもなっているのではないだろうか。
「大人の女が美しい」(1981年11月2日 草思社発行)より