ワンダフルハウス私物 8 KK−3 ¥32,000 (カールヘルム1987年夏物) |
メンズクラブ1987年6月号 |
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白地に黒のライン、ケーブル編みはVネックの黒い部分だけ。チルデン・セーターとしては非正統的なデザインですが、白い綿や麻のジャケット、ギンガムチェック・千鳥格子・グレンチェックのモノトーンのジャケットやスーツとの相性は抜群です。 | 当時メンズクラブの専属モデルだった田中カールさんが赤を着ていました。 |
チルデン・セーターについては、1979年から1981年までananに連載された「金子功のいいものみつけた」の36回目(アンアン1980年5月21日号)「テニスの白いセーター」で、金子さんが触れているので、それを紹介いたします。
たとえばゴルフ。昔は、ニッカーボッカーのズボンにツイードの上衣と帽子なんぞで、のんびりと、行儀よくやっていたらしい。一体いつの頃からか、ゴルフ族のファッションがあんなにも下品になってしまったのか。伸縮する布地で、敷物のような柄のついたズボン。胸のポイントマーク以外はどれも似たりよったりのシャツ。女は、脚の形に関係なくミニをはくのでどうかと思うし、10年前のセンスのパンタロンもいただけない。
同様に腹立たしいのはテニスのファッションである。アヒルのお尻のような女子選手のパンツはこっけいだし、男用のマーク入りシャツ(女用もあるようだ)はあまり氾濫しすぎて鼻についてきてしまった。
昔、ファーリー・グレンジャーという、ちょっとハンサムなだけが取柄のハリウッド俳優がいた。たしか「見知らぬ乗客」という映画にテニスの場面があり、憎らしくも粋な服装でテニスなどに縁のない我々を口惜しがらせたのである。「華麗なるギャツビー」にもテニス服が出てきたが、なにしろ白のフラノのズボンがダンディーだった時代である。ゆったりめの、しかしピリリと粋ないでたちで、レッドフォードの晴姿、ではあった。
こういうオーソドックスなテニスの服装といえば必ず、チルデン・セーターなるものが出てくるのだ。たっぷりとあきをとったVネックの白いセーター。首と袖と腰にストライプの入った、おなじみのあれである。
チルデンという選手が最初に着た(あるいは着用した)のでこの名があるらしい。この男は、1920〜30年の10年間もアメリカ1の大選手であり続け、大小の試合で2000勝近くをマークしたスーパーマンだそうだ。一生結婚せず、美少年を愛したのでホモの噂を立てられ、そのために投獄されたこともあるというが――古い写真で見るとなかなかの伊達男で、服のセンスも非常に良い。(ビル・チルデンは、デビスカップで1920年から26年まで13戦無敗と米国の7連覇に貢献し、1920年から10年にわたり全米ランキング1位を守り通した米国のテニス選手で、「ビッグ・ビル」と呼ばれたが、晩年は少年への同性愛強要で2度も服役した。)
古き良き時代の”確かなデザイン”には、揺るがしようのない気品や完璧な機能美があり……とほかの古いデザインに対するのと同じ称賛をまた繰り返すことになってしまうが。たしかに、このセーターは忘れ去るには惜しい。そして、軽薄なテニスブームとは関係なく、いろいろな場面で着るといいのではないかと思われる。
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もちろん、遊び着として活用するのが最高である。真夏の海岸、春の都会、一年中これを着るにふさわしい場面はある。ただし、チェックのスカートだの白いソックスだの、やや皇室ふうのコーディネーションは面白くないけれど。
もっとフリーに、いろいろなものと組合せる。釣の長靴にLeeの帽子、なんていう合わせ方をしても、このセーターの良さは断固変わらず、むしろ生きてくるのである。
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セーター¥18800(プレッピー)シャツ¥8900、パンツ¥6800(ピンクハウス)帽子¥2400、カバン¥7800(OUT POST)長靴¥12000(スポーツトレイン)商品・価格は全て1980年当時のものです。 |