March.8,2005 この本持って勉強に出ようか

        そば屋を商っているから、お昼には毎日、そばを食べている。不思議とそばという食べ物は毎日食べていても飽きない。ところが、休日には、そば以外のものを食べたくなる。何もいつでも食べられるものを、わざわざ金を払ってまで食べたいとは思わないのだ。余所のそばも食べて研究、精進しなければいけないとは思うのだが、ついつい他の食べ物に目が行ってしまうのだ。

        三遊亭円龍さんが、東京都内23区のそば屋を食べ歩いた本が出た。『円龍のそば行脚(あんぎゃ)』だ。



        これを読むと、自分の勉強不足がわかってくる。東京23区限定でも、こんなにうまいと思われるそば屋があるのだ。308店とはよくぞ回ったものだ。

        実をいうと、この本には、うちの店も載っているんです。それで書きにくいんですが・・・・・(笑)。

        去年の秋、お昼が一段落ついたときに円龍さんが店に座っているのに気がついた。挨拶すると、「インターネット見ました」と答えが返って来た。私は一瞬にして凍り付いてしまった。あっ、あれだ。インターネットというのは恐ろしいもので、書かれた本人が調べようとしたら簡単に検索でひっかかってしまうことを、書いた当時はわかっていなかったのだ。「あっ、どうもすみません」と最敬礼してあやまったら、「いや、思ったことを書いていただいてありがとうございます」と答が返って来た。こちらとしては土下座したい心境だった。そば屋の食べ歩きの本を執筆長とのことで、このところ毎日そばを食べ歩いているとのことだった。こうやって食べ比べていれば、私なんかよりは、そばの旨い不味いは確かだろう。私が年中、あちこちの寄席や落語会に顔を出して芸の上手い下手を体験しているように、円龍さんは密かにそば屋の旨い不味いを体験していたようだ。幸い、この本の中では私の店は酷評を免れた。すみません、円龍さん、今度また、高座を味合わせていただきにまいります。


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