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Vienna

Peter Gersina

2000 D 104 Min. 劇映画

出演者

Roman Knizka (Ludwig -
世間知らずの元墓堀人夫)

Max Tidof (Anatol -
飲んだくれの元音楽家)

Axel Milberg (Bruno -
盲目の芸術評論家)

Elke Winkens (Maria -
キオスクとガソリンスタンドで働く女性)

Erika Marozsán (Eva -
大道芸人)

Detlef Bothe (Thomas)

Heio von Stetten (編集長)

Viola von der Burg
(悪魔の格好をしたダンスショーの司会)

見た時期:2002年7月

今月は予想を越えた数映画を見られるという幸運に恵まれました。ですから中のいくつかが 似ていても仕方のないことでしょう。今回見た Vienna は先日ご紹介した Vaya con dios と設定がちょっと似ています。おじさん2人と世間をまったく知らない若者が1人登場します。ですから主演のローマン・カニツカをどうしてもダニエル・ブリュールと比較してしまい、軍配ははっきりダニエル・ブリュールに上がってしまいます。おじさんたちの方はこちらの方がちょっと上かも知れません。マックス・ティドフはローマン・カニツカと同じく無難にやっていますが、それでも割り当てられた役はちゃんとこなしています。アクセル・ミルベルクはもしこの2人に何かが欠けているとしてもそれをきれいに補っています。Vienna の方が全体の出来は弱いように思いますが、Vaya con dios と比べ主演3人の作る雰囲気は勝っています。3人の人間関係が主題なだけに、ここで3人のハーモニーが悪ければ致命的です。その肝心な点が成功しています。だからストーリーの弱さがあっても、見終わって3人の付き合い方が印象に残ります。

その弱いストーリーの主人公というのが、両親に早く死なれ成人に達するまで知人の所に世話になって、墓堀人夫をやっていたルドヴィッヒ。人員整理の犠牲になって、面倒を見てもらっていた教会から追い出されます。解雇という言葉の意味も理解できないほどの世間知らず。わずかな退職金を貰って教会兼墓地を離れますが、間もなく全てを盗まれてしまいます。お腹を空かせて町を歩いていたら、自転車と衝突。一時気を失い、それを機に自転車を運転していた盲人ブルーノの所に転がり込みます。教会という人に施しをする場所でも冷たくリストラしてしまうということでチクっと批判の目を向けています。

ブルーノは美術評論家で時々記事を出版社に売り込んでいます。ここでも話は変です。盲人がどうやって公道を自転車で走っているのか、などと聞かないで下さい。作品が見えないでどうやって美術評論をするのか、それをどうやって普通のタイプライターで書くのかなど、重箱の隅をつつくようなことは聞かないでおきましょう。盲人ギャグがかなり入っています。

ブルーノは1人暮しではありません。アナトールという音楽家崩れの酔っ払いと同居して、ホームレス寸前の生活をしています。工事現場で作業員が休憩したり、道具を置いておく車のようなものがあるのですが、そこを寝ぐらにして、取り壊し中のビルの近くに住んでいます。工事の責任者との諍いは毎日のことです。そこへ転がり込んだルドヴィッヒは頭を打って記憶がないと言い張り、帰る所がないからと居座ります。

その彼にはちょっとした超能力があり、危険を予知したり、人がお金を恵んでくれるようにしむけたりできます。本人ははっきりそのことを意識していません。彼は教会を追い出されるまでほとんど全生涯を教会で過ごしていたようで、言うことは聖書、神の方向を向いています。予知能力で助けてもらった人は神の奇跡だと言い出して感激します。

この後の展開は貧乏のどん底にいる3人がどうやって暮らして行くか、ルドヴィッヒの超能力で何をするか、ガタガタになっているアナトールの人間関係はどうなるか、ルドヴィッヒの初恋の行方はなどと、南ドイツからオーストリーにかけてのお好みのエピソードの連続です。気のせいかも知れません。あるいは偶然かも知れませんが、ミュンヘンやウイーンなどが舞台になる映画は、1つの筋を追って行かず、小さいエピソードのつなぎ合わせのような作品が多いです。何本かそういう作品を見た結果、好きになれなかったのですが、Vienna はその欠点を3人のハーモニーで補い、見た後あたたかい後味を残します。

終わり近くに葬式のシーンがあるのですが、そこで葬式を取り仕切る神父がなんとなくろれつの回らないしゃべり方。あれあれ、どうなっているんだろうと思いました。

アクセル・ミルベルクは演技だけでもいいなと思いますが、ギャグ、そして太っているのにジーン・ケリーばりに軽々と踊るダンス、冴え切っています。それなのに冴えているというシャープさ(張り切り過ぎ)を感じさせず、ワンマンショーのシーンと3人のシーン、両方ともいいです。

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