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シリーズ 7: ザ・バトルロワイヤル /
Series 7: The Contenders

Daniel Minahan

2001 USA 86 Min. 劇映画

出演者

Brooke Smith
(Dawn Lagarto - 殺人競技のチャンピオン、シングルマザーになる寸前)

Glenn Fitzgerald
(Jeffrey Norman - 挑戦者、ドーンの高校時代の恋人、睾丸癌で死ぬ寸前)

Michael Kaycheck
(Tony Reilly - 挑戦者、職人、戦い放棄を希望)

Marylouise Burke
(Connie Trabucco - 挑戦者、看護婦、人の命を救うのが商売)

Richard Venture
(Franklin James - 挑戦者老人、じっとよく考える)

Merritt Wever
(Lindsay Berns - 挑戦者、ティーンエージャー)

Donna Hanover (Sheila)

Angelina Phillips (Doria)

見た時期:2001年8月、ファンタ

2001年 ファンタ参加作品

詳しいストーリーの説明あり。

見る予定の人は即座に退散して下さい。1番最後の結末はばらしません。目次へ。映画のリストへ。

あちらこちらから頂戴して来たような筋なのですが、荒削りでエネルギッシュな作り方、ブラックなユーモア、モラルを全部蹴っ飛ばしたインディペンデント系の作品です。今年のファンタはなぜかプロの殺し屋がたくさん登場する年でしたが、昨年は妊娠中の女性がまとめて登場する年でした。その最たるものがこれ。主人公のドーンは臨月が近く大きなお腹を抱えて髪振り乱してののアクションです。

★ 元ネタ紹介

マルチェロ・マストロヤンニとアーシュラー・アンドレスのイタリア・フランス映画華麗なる殺人を覚えていますか。この SF には Robert Sheckley の The Seventh Victim という原作がありました。原作では7人、映画では10人の犠牲者となっていました。シリーズ 7: ザ・バトルロワイヤルはあのようなはっきりした SF ではありませんが、華麗なる殺人と同じく《殺人が公式に許される世の中》という設定になっています。それをテレビ中継します。《ある枠内で人を殺してもいい》という部分以外は世の中はほとんど現代と変わりません。中継するテレビ・チームはやらせ、パパラッチ精神、ジャーナリスムの究極の使命感にどっぷりつかり、描かれる殺人者の方は民間放送のお茶の間、正午、午後3時のドラマ性丸出しです。ここに登場するテレビ番組は「コンテンダー」と呼ばれています。一般から選ばれた数人が正当なルートで武器を提供され、お互いを殺し合い、それを中継するという番組です。

コンセプトが似ているのでパクったと言う方が出るかも知れませんが、元のアイディア以外はかなり変えてあります。音楽でもいろいろな人が編曲をして同じ曲を新しく売り出しますが、それと同じです。暗殺者フルタイムキラーぐらいの差はありますから華麗なる殺人を知っている方が見ても失望はしないでしょう。華麗なる殺人では華麗さにアクセントを置いていましたが、こちらはあくまでも泥臭く、えげつなく行くところが特徴です。

★ ストーリー

主人公の女性ドーンはこれまで連戦連勝のチャンピオン。興奮しやすく、凶暴で、かなりの迫力です。しかし実は家族に受け入れられず、妊娠中の子供は自分1人で育てるつもりでいるという悲しい面も持っています。テレビは家族を久しぶりで訪ねるシーンを追います。彼女は家から強引に車を奪います。

この作品の特徴は不条理さ。無茶苦茶な理屈で車を手に入れるドーンもそうですが、ドーンが死ねば子供も死ぬから戦っているのは規則の6人ではなく実は7人だということ、戦いたくない人がいても脱落は禁止。「やめた」と逃げ出した挑戦者を警察が追いかけて、殺人業に連れ戻そうとする、そのチャンスを人の命を救うのが職業の現役看護婦が利用し、ライバルを1人消してしまう etc... といった具合です。

挑戦者ジェフとドーンの関係も複雑です。癌の末期のジェフは高校時代から好きだったドーンを殺す元気もなければ、その意思もなく、彼女に殺されるのなら本望とばかりに、彼女に殺人を依頼します。2人の若かった頃の話も再現ビデオで放送されますが、ジェフは重病だから気力がないのではなく、高校時代すでに無気力で、強い女ドーンについて回るタイプです。2人は正反対の性格、いわば割れ鍋に綴じ蓋カップル。本人たちはメロドラマチックな悲劇のヒロインとヒーローになっていますが、簡単に言えばあかんたれの青年は凶暴なほど強いドーンにあこがれ、優しさを表現できないドーンはジェフの弱い面を出せるところに惹かれているだけのことです。その辺は限りなくセンチメンタルに昼間の民間放送に受けそうなトーンで強調しています。

といったスタイルで至る所にブラック・ユーモアがちりばめてありますが、看護婦との対決が特に愉快です。これまで人を助けることの大切さを強調し、モラルを強調していた人ですが、いざ自分がコンテンダーに選ばれると、あっけなく入院して来た別な挑戦者を殺してしまいます。ドーンが臨月になると、看護婦精神を発揮して休戦。子供は無事生まれます。都合良く最後は病院に生き残った3人が集合します。それが2人になり、and there were none...

1人残るはずなのになぜゼロになってしまうのでしょう?引き算は小学校でちゃんと習いましたが、これでは計算は合いません。そこにはテレビチームの読み違いがあったのです・・・。

この作品の最大の強さは主演のブルック・スミスにあります。最近 9 デイズで見ましたが、シリーズ 7: ザ・バトルロワイヤルとはかなり違うイメージで演じていました。その前 Kansas Cityランダム・ハーツバーバーで見たはずなのですが、どこにいたのか気付きませんでした。端役だったのかも知れません。将来性はありそうです。

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