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ミクロヴェレ 1

考えた時期:2002年12月

速報: 現在氷点下16度。やって来ました、気合の入ったまともな冬。待っておりました!

ミクロヴェレはドイツ語で Mikrowelle と書きます。英語式に言うとマイクロ・ウェーヴです。日本では昔から電子レンジと呼ばれていて、私もこの呼び名の方が好きです。渡米した従姉の話だとあちらではマイクロと呼ぶのだそうです。

こういう不思議な箱ができたのが1977年。日本人が発明したのだそうです。そしてその元になる分割陽極磁電管なる真空管のような物を発明したのも日本人なのだそうで、これは1927年だったそうです。こういう話を聞くと日本人は昔からウォレス&グロミットのような乗りだった事が分かります。日本人はもっぱら海外の良いアイディアを取り入れて、それをさらに使い易くするのが得意な国民だと聞いていましたし、実際その面では世界で大きな貢献をしているので、電子レンジが日本人の作だと聞くと意外な気がします。

なんで急にこんな話を持ち出したかと言うと、12月のまえがきでもちょっと触れたように、最近電子レンジを買ったのです。なんで発明されてから買うまで25年も待っていたかと言うと、それほど必要としていなかった事と、生活優先順位から見て、なかなか順番が回って来なかったからです。たまに帰郷すると母の台所のガス・レンジの下に大きな電子レンジがあって、「3分間、チーン」などと言ってご飯を暖かくして食べているのに出くわします。ウォレスも言っているように最近のモダンなライフ・スタイルに合わせなければ行けないのですが、通勤で職場に行く時間が短い時は15分、長くても45分などという国に住んでいると、家に帰ってから野菜を買いに行く時間もあり、冷凍冷蔵庫すらそれほど必要ではない世界。そんなわけで電子レンジとは縁のない生活をしていました。

日本の状況を多少知っている私にとっては不吉な予感がするのですが、ドイツではちょうど価格破壊が始まったところです。町に出ると景気が最悪なのに物価がどんどん下がって行きます。仕入れた品物を買ってもらわないと困るというのは分かるのですが、あれでは元を割っているのではないかと貧乏人の私が気を使ってしまうほど下がり始めています。確か以前はダンピングの取り締まりなどが理由でアジアの製品が拒否された事もあったと思いますが、今では一般の商店では値下げが当たり前になりつつあります。そんな中でシャープの電子レンジに出くわしました。中古ではなく新品を売る大きな店で、メーカーの条件と関係無くレシートを保存しておけば2年間保証。しかしシャープというのは家電ではあまり壊れたという話を聞かない会社なので、すぐ信用。

この店は種類も多く、ドイツ、フランス、韓国製などの他の製品もずらっと並んでおり、シャープにもいくつも種類がありました。私は途方に暮れてしまいました。25年の乗り遅れはさすがに大きい。電子レンジが電磁波で物を揺らせて熱を出す箱だという事は聞いていたのですが、行ってみると、電子レンジ機能だけという品の他に、グリル機能がついた物があり(その他にも別な機能がついた物もありましたが、私の脳はもうそんな話にはついて行けませんでした)、それも上下グリルというのと、片方というのがあり、もう頭の中は店員の話について行くのに精一杯。それにレンジを見ると何やらいろいろボタンやデジタルのディスプレーがついていて、複雑そう。これは1度家に帰って頭を冷凍冷蔵庫で冷やさなければと思い、退散。しかしこの時点でシャープの製品が値段の割に良さそうだという見当だけはつきました。日本にいると他に松下とかサンヨーとかライバル会社があって、迷うでしょうが、この店に来ていた日本製品はシャープだけでした。韓国からはサムソン。

家電製品を色や形で決めるのはアホですが、この日売っていたブラウン、シルバーの製品にはどうも食指が動きませんでした。なぜか冷たい感じがします。白はそれこそ病院の手術室みたいで人間的でないように思えるのですが、実際は逆。白を背景にすると食べ物の色がきれいに見えるからなのかも知れません。それで白以外の製品は機能の良し悪しに関わらず全部落第。

グリルがついている製品は多少高めですが、その差に比べメリットが多そうだというので、とりあえずグリル付に決定。しかし上下グリルと片方でどういう違いがあるんでしょうかねえ。でもまあシャープはそれほど大きな値段の差がないのに上下ついているというので、そちらの方になびきました。実は私は電子レンジで最終的な料理をするという気には全然なっていませんでした。電子レンジでカチカチに凍った食料品を解凍(UNZIP)してそれをオーブンに放り込むつもりでいました。うちは入居した時からガス・オーブンがついていますが、大型で、ちょっとした料理では大袈裟な事になってしまいます。それでウインナー・ソーセージを焼いたり、ケーキを作る程度の事をするためにオーブン・トースターぐらいの大きさの電気オーブンを買いました。それでたいていの事ができるので、大型ガスオーブンを使ったのは80年代に入居してから10回にも満たないでしょう。小型オーブンがあることも長い間電子レンジを買わなかった理由。ちなみに単純な構造のフランス製で、1度も壊われたことがありません。

さて気を取り直して店に出向き、最後に絞った2つの中から1つを選び買いました。この時ふと思ったのですが、ドイツにはなぜガス・テーブルの下につける電子レンジがないんだろうという疑問。日本の家では母が使っているレンジは電子レンジ。私がまだ日本にいた頃は同じ場所にガス・オーブンが入っていました。うちのはごく普通のキッチン・ユニットなので、よそのうちも似たようなものだと思います。ところがベルリンで遊びに行った家、中には高級住宅に住んでいる人もいたのですが、どこに行ってもモダンな電気テーブルのついた電気レンジは見たことがあるのですが、電子レンジが日本で言うガス・テーブルの下に入っているのを見たことがありません。この大きな電気屋さんにはその辺の棚に置ける電子レンジの他に、テーブルとオーブンがセットになっていて台所に取り付けるレンジも売っているのですが、それは全て電気式(ガス式の物は電気屋さんでなく、ガス専門の所で買うか、家主があらかじめ取りつけています)。この疑問に答えてくれる人は結局いませんでしたが、ドイツ人が日本に来たら、なぜガス・テーブルの下に電子レンジが入っているんだろうという疑問にぶつかるのかも知れません。電子レンジが台所のユニットの1部に入っているケースは無いわけではありません。ガス・テーブルの高さから床までをびっしりレンジ、食器洗い機、洗濯機、乾燥機、棚で固め、腰の高さから頭ぐらいの高さまでが空間で、その上がまたびっしり棚というドイツで典型的なキッチン・ユニットの上の棚1つ分の場所を電子レンジにしているというのを見たことがあります。家具屋さんのモデル・ハウスでも見たことがあるので、ユニットの1つとしてはめ込むのは珍しくないのかも知れません。ガス・テーブルの下というのはしかしまだ見たことがありません。交際範囲があまり広くないから、どこかにそういうのがあるのかも知れませんけれど。

ま、そんな疑問は横に置いておいて、ある土曜日ついに電子レンジを買ってしまいました。それから暫くはマニュアルを見て途方に暮れる毎日。いろいろな言語で書いてあるのですが、日本語はありません。シャープとは言ってもヨーロッパ仕様ですからね。日本人の客を対象にはしていません。これまでレンジを使った事がある人なら簡単に分かる事も、私には初めて。音を上げて、インターネットへ。シャープのホームページ。日本とまったく同じモデルはありませんが、似たようなのがあり、ざっと何ができるかを見ました。でき過ぎます。こんなにたくさん要らない!ついでに会社以外の人が書いたホームページもいくつか見て、改めて感心。まるで電子レンジがあれば世の中他に何も要らないかのような印象。

結局1番原始的な事を覚えて恐る恐るやり始めました。
原則1: 使用時間は長過ぎるより短か過ぎる方がいい。
原則2: 火が入ったら消えるまで放っておく。煙が収まらないのにドアを空けたら酸素を吸ってまた火が入り、火事の元になる。
原則3: 金属はご法度。
この程度なら覚えられるので、ではと始めてみました(本音: 小型電気オーブンに戻りたくなった)。 

ミクロヴェレ 2

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