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2002 USA 85 Min. 劇映画
出演者
Jesse Bradford
(Benjamin Cronin -
高校の花形水泳選手)
Kate Burton
(Carla Cronin - ベンの母親)
Erika Christensen
(Madison - 転校生)
James DeBello
(Christopher Dante -
マディソンの親戚)
Shiri Appleby
(Amy - ベンの恋人)
Clayne Crawford
(Josh -
ベンのライバル)
Dan Hedaya
(Simkins -
水泳のコーチ)
Michael Higgins
(Tillman -
ベンのアルバイト先の病院の患者)
Monroe Mann
(Jake Donnelly -
昏睡状態の青年)
見た時期:2003年5月
雑誌でケチョンケチョンにもしてもらえず、無視寸前というB級作品。演技が傑出している俳優もおらず、有名人と言えば、ダン・ヘダヤぐらいという学園スリラーです。ところが見終わって損をしたという気持ちにはなりませんでした。こういう出来事を改めて考える材料になります。感じの良い地味さがにじみ出るのはスタッフの方針でしょう。
主人公ベンは平和に暮らしている学園の水泳選手。ぐれた時期もあったようですが、現在は水泳という生き甲斐をみつけ、コーチとは信頼関係も成立。地味な恋人エイミーがおり、母親との意思の疎通も良く、 学内にはライバルもいますが友達に囲まれて、これといった不満のない生活をしていました。彼の水泳の才能は間もなく行われる大会でも花開く予定、タレントスカウトも来ているので、前途は明るい。
そこへ現われたエイミーより美人のマディソン。地味な顔立ち、気立ての良い黒髪のエイミー(どことなく型にはまった出で立ち)よりは強引なブロンドで肉感的(キャスティングは意識して対照的にしてあるようです)。 お互い恋人がいると自己紹介してあるのに、あっという間にベンを誘惑して一夜限りのセックスにこぎつけてしまいます。マディソンは「2人だけの秘密よ」と言います。しかしこんな秘密は持たない方がいいのは分かり切っています。
マディソンは一瞬にしてストーカーと化し、ベンにつきまといます。使うトリックには慣れ切っているという感じですし、即興も行けるマディソンの作戦勝ちで、エイミーに取り入ったり、母親に取り入ったりして、自宅にまで踏み込み、鍵を盗んだりします。サイバー・テロの方も行けるらしく、最初は気軽なチャット。ベンが「勉強があるから」と断るとエスカレートが始まります。 突然コンピューターのモニターに(アップルか?)大量のメイルがどっと飛び込んで来ます。まだ2桁の数ですが、同じメイルが85通も並ぶとベンでなくとも気味が悪くなります。添付されているマディソンの裸の写真はエイミーに見られるとヤバイ。メイルはごみ箱に捨ててしまえば済みますが、次にベンのポケット・ベル(携帯にしてはやけに小さい)にメッセージがひっきりなしに入ります。コーチとコンディションや試合の話をしている最中にもピーッと鳴り続けです。 これはまだ嫌がらせとしては軽い方。
その後アルバイト先の病院では顔なじみの患者に与える薬をすり換えられ患者が死にかけ、責任を追及されて首。エイミーに浮気を告げ口した者がおり、水泳大会では知らずにステロイドを混入されドーピング検査で失格。母親はまたドラッグに手を出したのかと大いに失望。エスカレートは続き、ライバルの選手が死体でみつかり、ベンに非行の過去があったので疑われます。といった具合でマディソンの行為はどんどん正常さを逸して行きます。
失うものはほとんど失いかけたところへ助っ人が現われます。マディソンの身内。知恵遅れ風で、学校ではみなからバカにされている大男。 ベンは常識人なのでなぜここまでマディソンがしつこくつきまとうのかが分からず、 意を決して1度マディソンの家に忍び込みます。そこで妙な薬品、病院に忍び込むために使った白衣などを発見し、彼女が犯人だということは確認しますが、分からないのは動機。軌道を逸した人にも何かそれなりの理論というものがある場合が多いですが、それが常識人にはすぐ分からない。
忍び込んでいる時に出くわした親戚の少年は、家人に知らせるどころかベンを逃がし、後でしょげ返っているベンを追って来ます。彼に言われて出かけた先は昏睡状態の患者が眠るクリニック。マディソンのかつての恋人ジェイクです。野球の選手でベンと同じくいろいろな賞を取っていました。自動車事故で同乗していたマディソンは無傷、ジェイクは重症。ジェイクはそれ以来目を覚ましません。ベンはジェイクの代わりにされていたのです。
眼の敵にされてエイミーまで襲われてしまいます。マディソンはベンの車を使って、単車のエイミーに襲いかかり、エイミーは救急車で病院へ。マディソンの秘密を知ったベン側の反撃が始まり、マディソンは逮捕。ところが・・・。キャリーではありませんが、最後の一幕おまけがついています。そこは見てのお楽しみ。
B級と言われて仕方ない作りではありますが、出演者のバランスは良い方で、出来の良い俳優に囲まれてジュリア・スタイルズが出るシーンだけエアーポケットになっていたボーン・アイデンティティーのようなことはありません。
映画雑誌に無視された原因は登場人物がみな影も深みもない型にバッチリはまっていて、型通りの演技しかしない点ではないかと思われます。トラフィックでマイケル・ダグラスの娘を演じた女優が演じているマディソンはクレージーで常識を逸している、怖い、エイミーはパッとしない容姿だけれど気立てが良くて、努力する、可哀想、学校の英雄ベンは過去の非行を改めるべく努力していて偉い、母親やコーチに見守られる、といった具合です。みなパターンをそのまま演じているだけ。
これがパターンだと分かって来ると、ああ、こういう人間もいる、ああいう人間もいるという風に分かりやすい − 同じ事情を反対側から見た場合です。決めつけはまずい、どんな凶悪な犯人にも何か事情があるだろうというのが現実ですが、常識的な人間はこの手の事件に巻き込まれると何をどういう風に考えて良いのか分からなくなってしまいます。その常識的な人間の反応が常識的に描かれています。
例えば客席に座って見ている観客にはベンがマディソンに「ね、これ秘密よ」と言われた時、すぐエイミーと話し合えばここまでエスカレートせずに済んだ、あるいはエイミーの信頼だけは保てたと考える余裕がありますが、ベンは「浮気がばれては困る」と考えてしまいます(そういうのが普通でしょうねえ)。母親かコーチにマディソンに付きまとわれていることを相談すれば良かったと観客は思いますが、前に心配かけたからこれ以上はダメとでも思ったのか、あるいは男ならこのぐらいの事は自分で片付けなければと思ったのか(学園のチャンピョン、ヒーローは弱みを見せたくないでしょうねえ)、沈黙を通します。見ていると「あ、まずい」というような事を主人公はやってしまうのですが、こういうのが現実なのではないかと思えます。それがどんどん重なって、後になると証拠を出さない限り説明がつかなくなってしまう・・・というところがスリラー仕立て。
型ついでにこちらもはまってしまいますが、主人公はアメリカ人やヨーロッパ人としては普通に、本人に何度もはっきり誤解の余地のない言葉で交際を断わっています。これは長く欧州に住んでみて、よくある行動だという印象を受けました。しかし相手が悪かった。観客にはマディソンが拒絶されるたびにヒステリーを起こし、エスカレートするというパターンが知らされます。はっきり見えるような演出になっています。
マディソンは入院させるか、死ぬ以外に他の人を傷つけることを止めないという役になっています。その決め付け方が批判を受けたのかも知れません。スクリームやラスト・サマーと似たような年代の若者がたくさん出て来るストーリーですが、ゲーム的な要素は無く、まとまりは大人向きに作られたザ・ウォッチャーより良いかも知れません。私もケチョンケチョンに言うべきなのか、まだ見たばかりなので優柔不断の状態です。
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