映画のページ
2003 USA 130 Min. 劇映画
見た時期:2003年前8月
この先は最後のびっくりシーンです。よく考えてみると確かに前のページのままで終わってしまっては、納得の行かない部分が出て来ます。最後このぐらいひねらないとケビン・スペーシーを起用する意味はないでしょう。しかし、この役、危ういところでジョージ・クルーニーやニコラス・ケイジに回るところだったのだそうです。クルーニーはここまでひねった役では嘘臭く見えてしまいます。不精髭生やしてしょぼくれるシーンはいいかも知れませんが、彼に子供好きのお父さんの役はちょっとねえ。ニコラス・ケイジですとお涙頂戴シーンに熱がこもり過ぎて笑いを誘ったりしかねない、それに彼に教授の役が似合うかという問題もあります。というわけで、ケビン・スペーシーの方がいいです。子供を思って泣き暮らすシーンはまだちょっとはまり切っていませんでしたが、ひねりにひねりにひねりにひねった結末に持って行くところはスペーシーならやりかねないと思わせてくれます。
事件が一応報道され落着しそうな頃、ビッツィーの仕事先にゲイルの息子の動物のぬいぐるみが届けられます。これは息子が特に大切にしていたもので、父親と別れスペインに行く時に息子が父親にプレゼント。ゲイルは子供を思い出すたびに取り出して、ため息をついていました。ゲイルの死後誰かがビッツィーに郵送して来たのですが、腹の中に何か変な物が・・・。開けてみるとビデオが入っています。驚いて再生してみると、例のビデオの続きです。
これでビデオ・シリーズは完結したのです。
ここまで来ると死刑に反対するためにこんな大芝居をかまして果たして効果があるのだろうかと考え込んでしまいます。自分が反対派の1人だとすると、この事件を材料に「あなた方は無実の人間を殺した、それ見たことか」とは言えなくなってしまうのです。わざと警察をミスリードしているのですから。2つ目のビデオだけで終わっていればまだコンスタンスが勝手な事を考え出した、ゲイルはコンスタンスに対して善意を持っていたのにはめられた、彼は死刑に相当しない・・・という理論が通るでしょう。しかしゲイルがマスター・マインドで弁護士やラスティーも動かしているとなると、彼自身が自分の死を招く行動をしていることになり、彼が死刑になっても警察や裁判所を死刑反対論者の理論で攻撃することができなくなってしまいます。通常死刑になる人間は
ような場合で
は普通の場合には当てはまらないのです。これは言わばコンスタンスとゲイルの時間のずれた心中事件。弁護士とラスティーはその世話人。ですからこの作品を死刑反対運動に使おうとすると足をすくわれます。
では死刑反対という政治問題を切り離して考えるとどうか。所々細かいほころびはあるにしても、全体としてはユージュアル・サスペクツと同じぐらい凝っています。前にも言ったように語り部がケビン・スペーシー、騙され役がケイト・ウィンスレットとガブリエル・マン。そしてそれらしく見える話の裏は全然違っていた、というもの。違うのはこれは殺人事件でも金を目的とした事件でもなく、絶望した2人の人間が協力して起こした狂言事件だということ。自殺という部分をゲイルとコンスタンスが協力してやったかどうかは解釈によります。ゲイルならコンスタンスの自殺を止めたかもしれないからです。しかし起きてしまったコンスタンスの死亡事件をゲイルが承知しており、ビデオをフルに利用していることは間違いありません。そしてラスティーはコンスタンスのために弁護士やゲイルと全面的に協力しています。弁護士がグルだったというところはユージュアル・サスペクツで最後に小林が登場し、バーベルがびっこを引くのを止めるシーンと同じぐらい見事なうっちゃり。
スペーシーという俳優にも一発かまされます。彼はある日突然演劇界からしっかりした演技で登場し、あっという間にオスカーを2個貰った人ですが、その高い地位を利用して、新しい企画のえり好みをし(大いにやって下さい)、同じ役は決して繰り返さないという人でした。ですから原点に戻ったような、ユージュアル・サスペクツと同じタイプのプロットをもう1度演じるとは誰も思っていないわけです。見事引っかかってしまいました。
なお、この映画のタイトルは The Death of David Galeの方が良かったのではないかと思います。これで全部ばれてしまいました。とことんまで付き合ってくださってありがとうございました。
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