映画のページ
副題: あと一息でハリウッドを越えられた惜しいSFアクション
2003 Korea 114 Min. 劇映画
出演者
Ji-tae Yu
(R - クローンの捜査官)
Jae-un Lee
(シオン - 娼婦、リアと同じDNAのクローン)
Rin Seo
(リア - サイボーグの踊り子)
Doo-hong Jung
見た時期:2004年3月
ガッカリシタナモー。
ファンタの前菜ではこの作品に1番期待していたのです。前宣伝によるとブレード・ランナー式の SF。最近の韓国映画には良い作品も見られるので、前夜祭の中でも1番いいのではと思っていました。ところが退屈して居眠りしてしまったのです。終わって仲間に聞いてみたら「眠る事ができた君は幸せだ」と言われてしまいました。
★ こけた力作
正直なところこれは力作。力だけはかなりこもっています。お金もかなり使った様子。俳優も悪くない。韓国映画をあまりたくさん見ていないので名前は知りませんでしたが、「その辺の素人」とは絶対に言えないしっかりした演技の男性陣。女性の方はストーリーの関係上演技より外見が要求される役の人が多いのですが、哀愁を漂わせた笑顔を作れる人がいたりと、決して引けを取りません。
衣裳、セット、小道具、そして撮影の色調、アクション、どれを取っても一流どころばかり。将棋の駒は全部揃っていて、各専門家は自分の分野で全くミスを犯していませんでした。ミスはその完璧過ぎるところとストーリーだったのです。SF アクション・ドラマなのですが、SF アクション大メロドラマと言い直さないとだめで、メロのところがメロメロに強調され過ぎたため、せっかく揃った才能がスケールを小さくしてしまい、私は居眠りしてしまったのです。ああ、もったいない。
アクションはと言うとジェット・リーが黒侠で登場した時のような新鮮な驚きを韓国映画でも味わえ、2009 ロストメモリーズよりやや上を行っていると思います。主人公のカップルがカプセルの中でつかの間の幸せを味わっているシーンは、タイム・アウトになると冷たく、切なく、悲しく、筋に多大な貢献をしています。血飛沫も節約しておらず景気良く、どんどん血が流れます。ミリタリー・ルックの主人公たちも雰囲気を上手に出していて、作品のコンセプトにぴったりはまっているのです。こういう風に部分を見るとどこにも文句の付け所がない気合の入った作品。それでも全部を見るとこけてしまうんですねえ。ピーター・ジャクソンが初期の頃なけなしのお金をはたいて自力で作ったバッド・テイスト、セットも衣裳も特撮も最低、お粗末な作品といい対照を成しています。ストーリーのおもしろさで強引に引っ張ったジャクソンの勝ち。映画を作るのは本当に難しい仕事だと感じます。
★ あらすじ
ブレード・ランナーのハリソン・フォードのような仕事をしている孤独な男 R が間もなく寿命が尽きる若い踊り子のサイボーグに恋をしてしまいます。年齢の関係か、虚しい職務のためか、心はすっかりくたびれ切っています。で、脱線を始め、軍の規則を破ってでも彼女の寿命を延ばそうとします。延命に必要なのでサイボーグと同じ DNA を持つ娼婦シオンを探します。その頃サイボーグにプログラム・ミスが発見されます。R の任務は抵抗勢力になったサイボーグを抹殺すること。サイボーグの方はクロイ博士の研究に望みをかけます。サイボーグと人間の境がどんどん分かりにくくなる研究が行なわれていました。
★ 自然に手を加えるとしっぺ返しが来る
このサイボーグの望みは鉄腕アトムを思い出させますが、ああいう可愛いマンガでなく、ナチュラル・シティでは一目見ただけでは人間とサイボーグの違いは分かりません。ブレード・ランナーの世界です。人間はつくずくバカだなあと思ってしまいます。後で揉めるような事はしなければいいのにと素人は思いますが、どうしても高度な研究に携わっている人は、クローン人間を作るとか、サイボーグを作るという誘惑に勝てないのです。遺伝子をいじってしまうだけでも問題は容易に予想できます。豊作になるようにと害虫に強い植物や、害虫に強い農薬を作ってしまうとさらにそれを越えた強い害虫が生まれてしまったり、特定の害虫を食べてくれる虫がいなくなってしまったり、と世の中はすでに充分混乱しているのにです。母親の遺伝子のみを受継いだ子供というのも心配だなあ。血族結婚を繰り返して障害を持った子供ができてしまうという、DNA 技術から見るとローテクに当たる出来事で人類は充分弊害を学んだと思いますが。なぜ普通に出産、乳児が死んだら、次の子供を妊娠、養子という風に昔風のやり方では行けないんだろう。植物もこれまでのような交配では行けないのでしょうか。ゆっくり試して弊害も見極める時間的余裕が欲しいところ。
★ 解決になっていなかった
途中居眠りした私ですが、謎として残ったのはこの男なぜクローンに恋をしたのかという点。孤独な男が誰かの慰めを求めていたのは分かりますが、人間でなくクローンを選んだとなると、孤独は全く減らないのです。AI で子供が意識不明になった夫婦が慰めのために AI 坊やを養子にしたのと同じで、目先では代わりがつとまりますが、深く考えると結局は人は孤独なまま。AI で実子が目を覚ましたとたんに AI 坊 やが捨てられたのと同じことで、いくら恋をしたと思っても相手はプログラムされた人形。人間が決めた通りの事しかやらないのです。相手も意思を持っていてその相手が自分を好きだと言ったのなら価値がありますが、どう振舞うか決められた存在では、何か言ってもらっても、自分について来てくれても結局は人形に過ぎないのです。居眠りしている間に何かこの謎を解くような話があったんだろうか。やはり映画はちゃんと目を開けて見ていないとだめですね。
この後どこへいきますか? 次の記事へ 前の記事へ 目次 映画のリスト 映画一般の話題 映画以外の話題 暴走機関車映画の表紙 暴走機関車のホームページ