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狗咬狗 /
Gau ngao gau /
Dog Bite Dog

Cheang Pou-Soi

2006 HK 109 Min. 劇映画

出演者

陳冠希/Edison Chen
(Pang - カンボジア人ヒットマン)

李燦森/Sam Lee Chan-Sam
(Wai - 乱暴者の刑事)

林雪/Suet Lam
(Lam - ワイの同僚刑事、)

張兆輝/Eddie Cheung Siu-Fai
(ワイとラムの上司)

黎耀祥/Yiu-Cheung Lai (刑事)

Ka Wah Lam
(ワイの父親、刑事、現在意識不明で入院中)

Weiying Pei
(大陸から移住して来た娘)

Lee Ka-Wing

Chow Ka-Sing

見た時期:2007年3月

2007年春のファンタ参加作品。

大体のストーリー説明があります。後半、特に伏されていた事実や結末はばらしません。

春のファンタ初日の香港映画です。もう1本中国から作品が来ているのですが、狗咬狗は香港色が強いです。ジョニー・トウ作品を見慣れた方にはおなじみの顔も見えます。トウ作品と似て、出演者は今回は刑事、次回はやくざといった風にかわりばんこに出る人たちです。

タイトルの漢字は内容をよく表現していると思います。獣編の漢字が2字、間になんだか噛みついているような漢字が1つ。実際狂犬が2匹噛みつき合っているような作品です。

それでいてメロドラマ的要素もたっぷり。そこはエディソン・チェンの担当で、ちょっと自閉症気味のカンボジア人ヒットマンを演じています。設定は全然違いますが、レオンのジャン・レノーを思い出します。チェンとラムは少しカンボジア語を練習したらしく、ちらほらカンボジア語らしき言葉を喋っています。すらすら饒舌というわけにいかず、自閉症気味という設定で辻褄を合わせたのかも知れませんが、不自然ではありません。

狂犬刑事を個性たっぷりに演じているのがサム・リー。誉めている記事を何度か見かけました。フィルム・ノワールだと思って見に行ったのですが、彼が1人で映画をハードボイルドに変えてしまったと言えるぐらいのテンションの高さです。

テーマを欲張り過ぎた感があり、せっかくの重要なテーマを個々に扱う時間が不足気味です。ジョニー・トウだったら上手に重点を絞り、テーマが多過ぎたら、2つ作品を作ったのではないかと思います。

1つは薄幸の青年パン。カンボジアには闇の賭博があり、そこでは子供の頃から戦うことだけを躾られて来た孤児らしい子供の集団がボクシングを習っています。ルールなどは無く、相手を殺すまで戦うように教えられている様子です。

これを見て思い出すのはディア・ハンター13 (Tzameti)などの闇の賭け。需要があるから供給者がいるのでしょうが、なぜ人はこれほど賭けたがるのでしょう。

賭けに参加するボクサーたちは人間の心などは持っておらず、まさに狂犬。人に優しくなどすれば、自分が死ぬのです。そこで育ち、青年になったパンは、やくざの元締めのような男から船で香港へ派遣されます。

船の中でも彼は動物のような扱いを受けていて、着ている物はぼろぼろ、食事は餌のような与えられ方です。。到着後すぐ受け入れ側からターゲットの写真と必要経費、謝礼を渡され、その足で目的地へ向かいます。パンは見知らぬ土地で地理に疎いのですが、連絡係がタクシーの運転手ということで辻褄を合わせてあります。

エディソン・チェンにまつわるシーンでは食べ物に執着しているシーンが強調されています。お腹を空かせ、食べるためには何でもやるという風になっています。それだけで観客はかわいそうな青年と思い、チェンに肩入れしてしまうようになっています。

殺しの仕事はあまり大きなテーマではありません。意外とあっさり片がつきます。そこへ捜査のためにやって来る刑事が重要な主人公の1人です。ワイという出来損ないの刑事が暴走。彼は上司も同僚も困り果ててしまう乱暴者。しかし親父さんが皆の尊敬を集めている名刑事だったため、皆が父親のようにワイを諭したりなだめたり。親父さんは捜査中に銃弾を受け意識不明のまま長期入院中。

この息子というのが暴走刑事でありながら、刑事としてのカンは良く、他の刑事がもたもたしている間にもう手がかりを見つけて来ます。それでパートナーと一緒に追い掛け始めます。これが私も最近ファンになってしまったラム。ラムや上司役のエディー・チェンがワイのしでかす事に切れて怒り始めるシーンは愉快です。

その後ワイは強引にどんどん証人をぶん殴り、証言を引き出し、パンの後を追って行きます。元から乱暴者だったワイですが、パートナーが重症で入院、意識不明に陥ったことでさらに頭に来て、尋常の切れ方ではありません。まさに狂水病にかかった狂犬と化して、パンを追い続けます。

パンはヒットマンとしてはいい感覚で、追われていることにすぐ気づき、逃亡。あるゴミ処理場にたどり着きます。そこで父親に犯されている若い娘を救います。2人の運命の出会いです。彼女はどうやら大陸から移住して来た一家の娘らしく、カンボジア語を話すパンとは言葉では交流ができません。しかし良く見ていると彼女もやや自閉症的。長い間父親からそういう目に遭ってなったのか、元からそうだったのかは分かりませんが、本来は気立てのよい娘さんです。

始めは上手く行かなかったコミュニケーションも娘の思いやり、パンの思いやりが通じ、2人を結びつけることになります。そこへ現われた警察の狂犬。2人は一緒に逃げることになります。簡単ではなく、2人は1度病院に寄ってから港を目指します。まるで双六の罰ゲームか、ハードル競争のような作りです。

こういうのが大筋なのですが、間にいくつかのエピソードが入り、そのため詰め込み過ぎという印象になります。

ワイの家庭の事情にも時間を割き、さらにそれがワイの父親の負傷の原因にも通じ、パンの逃避行と平行して語られます。ワイの話だけで映画1本撮れそうなドラマです。

命がけで傷を負いながら何とかカンボジアまでたどり着いたのですが、その先にもまだ障害があり、さらにワイが追って来ます。109分がかなり長く感じられますが、それはエピソードの数が多いからかも知れません。退屈で長いと感じるのではなく、「まだ何かあるのか」という展開が多いからです。手際の良さ、時間配分などを見るとジョニー・トウの方が上手です。エピソードを詰め込むのに忙しく、観客がどういう風に感じるかまで気が回らなかったのではという印象でした。

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