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D/Türkei 90 Min. が縺れて延長戦
出場者
ヨアヒム・レーブ (監督)
イェンス・レーマン
(ゴールキーパー - 海外ティーム所属)
ルネ・アドラー
(ゴールキーパー)
ロベルト・エンケ
(ゴールキーパー)
マルセル・ヤンセン
(ディフェンダー)
アルネ・フリードリッヒ
(ディフェンダー - ベルリンのティーム)
クレメンス・フリッツ
(ディフェンダー)
ハイコ・ベスターマン
(ディフェンダー)
フィリップ・ラーム
(ディフェンダー)
ペール・メルテザッカー
(ディフェンダー)
クリストフ・メツェルダー
(ディフェンダー - 海外ティーム所属)
バスティアン・シュバインシュタイガー、
通称シュヴァイニー
(ミッドフィールダー)
ミヒャエル・バラク
(ミッドフィールダー - 海外ティーム所属)
トルステン・フリンクス
(ミッドフィールダー)
ピオトル・トロホウスキ
(ミッドフィールダー)
シモン・ロルフェス
(ミッドフィールダー)
トーマス・ヒッツルスペルガー
(ミッドフィールダー)
ティム・ボロウスキ
(ミッドフィールダー)
オリバー・ノイビル
(フォワード)
ミロスラフ・クローゼ
(フォワード)
ダビド・オドンコー
(フォワード - 海外ティーム所属)
マリオ・ゴメス (フォワード)
ルーカス・ポドルスキ
(フォワード)
ケビン・クラニー (フォワード)
ファティフ・テリム (監督)
リュシュトゥ・レチベル
(ゴールキーパー)
トルガ・ゼンギン
(ゴールキーパー)
ボルカン・デミレル
(ゴールキーパー)
エムレ・アシュク
(ディフェンダー)
セルべト・チェティン
(ディフェンダー)
ギョクハン・ザン
(ディフェンダー)
エムレ・ギュンギョル
(ディフェンダー)
メフメト・アウレリオ
(ミッドフィールダー)
アイハン・アクマン
(ミッドフィールダー)
ハミト・アルティントップ
(ミッドフィールダー - ドイツ・ティーム所属)
ハカン・バルタ
(ミッドフィールダー)
エムレ・ベロゾール
(ミッドフィールダー - 海外ティーム所属)
メフメト・トパル
(ミッドフィールダー)
ギョクデニズ・カラデニ
(ミッドフィールダー - 海外ティーム所属)
テュメル・メティン
(ミッドフィールダー - 海外ティーム所属)
アルダ・トゥラン
(ミッドフィールダー)
ウーウル・ボラル
(ミッドフィールダー)
サブリ・サルオール
(ミッドフィールダー)
メブリュト・エルディンチ
(フォワード - 海外ティーム所属)
ニハト・カフベジ
(フォワード - 海外ティーム所属)
セミヒ・シェンテュルク
(フォワード)
トゥンジャイ・シャンル
(フォワード - 海外ティーム所属)
カズム・カズム
(フォワード)
見た時期:2008年6月
★ やりたくない戦争前夜であります。
今日は野外の映画を見に行く日。同じ日、同じ時間にサッカー欧州選手権のベスト4進出をかけてトルコ対クロアチアの試合が行われます。
先週見るつもりでいた映画が実は今日。それを見に行くつもりでいたのですが、サッカーの方は何と主催国が敗退し、知らぬ間に各予選グループからトルコ、ドイツが生き延びていました。いよいよ本番の3戦はトルコが全勝、ドイツが2勝。
準々決勝で8カ国に絞られますが、昨日までにドイツがポルトガルを破りベスト4へ。今日はトルコとクロアチアの対戦で、0対0。その結果11メーターになり、その行方は如何に・・・。
★ うちにはテレビが無い!
・・・と、簡単に言いましたが、実はこの日、テレビの無い私は野外の無料映画館へ。そこで間もなく記事にするつもりの作品を見ていたのですが、すぐそばに飲み屋さんがあるのは先刻承知。2006年の世界選手権の時はそこに陣取って何度か試合を見ました。
それでこの日は途中で映画を抜け出して飲み屋へテレビを覗きに行こうとたくらんでいました。するとそれを見透かしてか、映画が半分ぐらい来た時に上映会の主催者がトイレ休憩を入れ、(休憩は毎回あるのですが、まさに絶妙のタイミングで)「今ちょうど11メーターをやっているから見たい人は飲み屋へ行け」とのたまうではありませんか。「ばれたか」と思いながらも飲み屋へ突進。
世界選手権の時ほどのにぎわいではありませんでしたが、店は机を片付け、大型スクリーンを出して来て、椅子はその前に並べてありました。採算度外視らしく、私が入っても誰も止めませんし、飲み物を注文しろとも言いません。ここは本来はドイツ人の店なのですが、トルコ人が数人大きな赤い旗を持って来ていました。
★ どちらを応援するか
実はここから大通りまでの道、そこから私の家までの道はカルチェラタンではなく、カルチェトルクなのです。ただ、トルコ人はお酒を飲まないので、そういう店には普段はドイツ人しかいません。飲み屋にトルコ人が入っているというのは尋常ではないのです。
諸般の事情を鑑みるに、クロアチアを応援する理由は見つからず - とは言ってもクロアチア人とトラブったとか、憎らしく思っているのではなく、これまで接する機会が無かったので何も知らないというだけなのですが - トルコ人とはベルリンに来て以来の隣人関係にあるので、まあ、当然のごとくトルコを応援。
全くの偶然なのですが、映画を見ている間に試合は時間だけどんどん進み、膠着状態。ですからそこまでは見る必要も無かったわけで。その後映画館が「11メーターだぞ!」と言ったので、酒場に押しかけたわけです。で、入って見ると、今まさに最初の選手が11メーターのボールを蹴る寸前。
★ 勝負あり
・・・なので、そのまま見ていました。しかし最初の選手が蹴るより前から「こりゃだめだ」と思いました。クロアチア選手はもう負けているのです。気合負けと言うのでしょうか。トルコ人は大任を負うゴールキーパーだけでなく、全員に完璧に気合が入っていました。監督など外野はやきもきしていたようですが、選手の方は《一分の隙もなくガードができている》などという生易しいものではなく、もう全身から稲妻を発しているような感じです。
真っ赤なトリコーを着て全員赤鬼状態のトルコ人選手。離れた所に立っているのに押しまくられているのが蒼白な、いえ、真っ青なトリコーを着ているクロアチアの選手。サッカーには疎い私でもこりゃ負けるなと思いました。
案の定。トルコのゴールキーパーは閻魔大王カーンのようなタイプ(超危険なゴールキーパー、守るだけでなく、100%フィールドに目を光らせていて攻撃計画を立てる)ではないのですが、確実に飛んで来るボールを弾き飛ばします。まるでクロアチアの選手が本人の意思に反してトルコのキーパーがガードしている方向に催眠術で誘われでもするかのようにボールを蹴り、そこで待っていたキーパーが「ありがとさん」とでも言っているかのようでした。
逆にトルコ選手がクロアチアのキーパーを前にすると、穴だらけ、隙だらけ。トルコの選手は当然といった顔でどんどんボールを入れてしまいます。その結果3対2でトルコの勝ち。それでもクロアチアは点を入れただけ偉いです。
★ 町中が深夜の結婚式か?
私はその後映画を終わりまで見て、深夜家に戻ったのですが、道中は予想通り。花火は上がるわ、車は警笛を鳴らし、旗を掲げて猛スピードで走り回るわ、たまに許される無礼講。咎める人はいません。ベルリンの町もトルコ人の喜び方は良く承知しているので、この日は警察の前を車が通ってもお目こぼし。どちらかと言えば事故に備えて救急車を準備していたのではないかと思います。そんな中を家に帰るのですが、2度ほどひやりとしました。
ちなみにドイツが勝っても花火が上がり、車が猛スピードで徘徊します。その他にもトルコ人が警笛を鳴らして車を走らせていい日というのがあります。それは結婚式。車に花やリボンでデコレーションをほどこし、町を走る時、警笛を鳴らしても良く、周囲の車もその車に優先権を与えます。その習慣はどうやらドイツ人にも伝わったようで、結婚当日ですと警察もお目こぼし。
★ 守られている礼儀
ドイツ人はトルコ人が特に礼儀正しいという印象は持っていないようです。私は80年代から色々トルコ人と接する機会があり、下々の人まで非常に礼儀正しいという結論に達しています。ドイツ人がどういう機会にトルコ人と接するのかが分からないのですが、私の方は学校で同じクラスだったり、買い物に行く店やご飯を食べに行く簡易食堂の人の応対、危ない目に遭った時に助けてくれた経験などを取り混ぜて出した結論です。
今回目についたのは旗。6月中サッカーがあるので町中の車にドイツかトルコの旗を立てています。中には車1つで5本以上立てている車もあります。そういう数になるとたいてい中の1本はドイツの旗です。2本立てている車でも1本はドイツという車を良く見かけます。週末買い物で町を歩いていたら、トルコ人が集まる集会場にも大きな旗が飾ってあって、中の1つはドイツの国旗。
★ 6月25日の頭痛
さて、この試合の結果に頭を抱えるのがベルリン市とレーマン。ベルリンはトルコ人の人口比率が非常に高く、60年代以後紆余曲折を経て、今ではトルコ人は町に良くなじんでいます。
トルコ人は《ガストアルバイター》と呼ばれることが多く、《ガスト》は《ゲスト》、つまり《お客様》、《アルバイター》は《労働者》という意味です。現代のドイツ人はよく知らないらしいですが、労働者不足の頃にドイツがトルコにお願いして来て貰った人たちです。そのため初期の頃はお客様として扱われ、その頃を知っているトルコ人は当時のことを良い扱いを受けたと記憶しています。後には《ガストアルバイター》は差別用語に近くなってしまったのですが、初期の頃にはそんなニュアンスも無かったそうです。
その後諸般の経済事情から徐々に《アルバイター》の方に比重が置かれ、トルコ人もドイツ政府と待遇改善、法律整備など色々の点で色々折衝しなければならなかったようです。私がドイツに来た頃はちょうどそんなこんなで色々な議論が行われていて、トルコ人が低く扱われているシーンにも出くわしました。しかし徐々にそこが改善され、双方それなりに満足の行く形で落ち着いていました。
ドイツ側のトルコに対する反発は他の国で聞く類似の紛争と比べ極端な緊張を生まず、トルコ人も極端な犯罪やテロに走りませんでした。両国の相性が良かったのかも知れません。あるいは以前外国人全体に対して警戒心と不安を持っていたドイツ人が、景気が良かった頃に休暇で色々な国に自ら旅行に出るようになり、外では自分の方が外国人だという立場を知り、その中でトルコ人が尋常の場合は犯罪に走ったりしない人たちだという認識が生まれたのかも知れません。
私が来た頃はまだトルコ人とドイツ人がつき合うと言うといくらかロミオとジュリエットかウエストサイド物語のような感じでしたが、その後の15年、20年の間に、「そんなの関係ねえ」「別に・・・」という風潮になって来ています。
ドイツ人にはあまり認識されていないようですが、もう1つ重要な要因がトルコ人のユーモアです。トルコ人が嫌な目に遭った時ユーモアで解釈するシーンを何度も目にしました。嫌がらせをされた時黙って泣き寝入りをすると胃に悪いですし、あまり溜まると切れていつか爆発してしまいます。トルコ人はその場でパッと言い返します。ところがそこに江戸の町人のような切れのいいユーモアが入っていて、言い返された人がたいてい負けます。
そこで負けっぱなしなのは主として西ドイツ人。一発返された時にもう一発お見舞いするのがベルリン人。ベルリン人も切れのいいユーモアを伝統としています。そこでやり合うとたいていはその後仲良くなります。手は出さず、口でスパッとやり合うのは無関係の外野にとっては見ていて楽しいです。喧嘩はレクリエーションみたいなものと考えるベルリン人とトルコ人も相性がいいようです。
上に書いたように町にはドイツとトルコの両方の旗を掲げた車も多いですし、先日のドイツ・ポルトガル戦ではポツダム広場にいたトルコ人がドイツ・ティームを応援していました。私もこの日はドイツを応援しました。
頭を抱えるというのは、その結果両ティームが勝ち進みベスト4に入ってしまったためです。めでたい反面、次の試合はドイツ対トルコ。フレッシュな若者、どでかい才能が集まっているドイツ・チーム。シュヴァイニーやバラクなど若者がうれしそうにプレーしているのを見るのは楽しいです。対するトルコ・チーム。どんな状況でも戦う姿勢は浅田真央と同じ根性。むさいおっさんと浅田真央を一緒に比べることができるのは気合の入れ方が同じだからです。
まるで浅田真央と浅田舞がアジア選手権のベスト4に残ってしまったかのようで・・・。どっちを応援したら委員会・・・。3位決定戦は無いので、次に負けると3位か4位かはあいまいのままになります。もしドイツが勝ったら、トルコ人はドイツ優勝を目指して応援するでしょう。なぜそういうティームが戦わなければ行けないんでしょうねえ。
★ レーマンはいつも悩む
2006年の世界選手権で思いがけずナショナル・ティームの正ゴールキーパーに選ばれてしまったレーマンはあの年ずいぶん悩んでいた様子。副ゴールキーパーになってしまった閻魔大王カーンがすばらしい ゴールキーパーだと分かっているし、自分もすばらしいゴールキーパーなのだから世界の晴れ舞台に出たいし、監督は2人に競争をさせるし・・・。そんな修羅場を経験したレーマンですが、今回当たるトルコのゴールキーパーもレーマンと似たような経歴。2人とも年なので、今期あたりを潮時として、間もなく国際舞台からは引退の予定。ライバル意識をかき立てられるより、お互いの境遇を理解し合ってしまうのではないでしょうか。
その上もう1つ悩みの種が。レーマンは子供の頃トルコ人の多い工業地帯に住んでいて、トルコ人と一緒にサッカーをして遊んでいたのです。隣近所がトルコ人、学校に行けばトルコ人。そんな環境で育った人は明日の試合で敵だと言われるとやりにくいでしょうねえ。
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