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バンク・ジョブ /
The Bank Job

Roger Donaldson

2008 UK 111 Min. 劇映画

出演者

Jason Statham
(Terry Leather - 中古車のディーラー、強盗)

Keeley Hawes
(Wendy Leather - テリーの妻)

Taelor Samways
(Catherine Leather - テリーの娘)

Kasey Baterip
(Julie Leather - テリーの娘)

Saffron Burrows
(Martine Love - テリーの元恋人、強盗)

Michael Jibson
(Eddie Burton - 機械工、強盗)

Georgia Taylor
(Ingrid Burton - 秘書、エディーと結婚したばかり)

Stephen Campbell Moore
(Kevin Swain - 写真家、強盗)

Daniel Mays
(Dave Shilling - ポルノ俳優、強盗)

Ursula Mohan
(デイヴの母親)

David Suchet
(Lew Vogel - ポルノ産業の顔役)

Alki David
(Bambas - 機械工、強盗)

James Faulkner
(Guy Arthur Singer - いかさま師、強盗)

Les Kenny-Green
(Pinky - テリーに金を貸した男の手先)

James Kenna
(Perky - テリーに金を貸した男の手先)

Peter De Jersey
(Michael X こと Michael Abdul Malik、人種差別反対の運動家)

Colin Salmon
(Hakim Jamal - マイケルXの友人、ゲイルの恋人)

Mark Phoenix
(Brown - マイケルXに脅される男)

Richard Lintern
(Tim Everett - MI5)

Rupert Vansittart
(Sir Leonard Plugge - 保守党議員)

Hattie Morahan
(Gale Benson - 保守党議員の娘、マイケルXの友人、MI5)

Sharon Maughan
(Sonia Bern - 政界に食い込んでいる売春宿のマダム)

Alan Swoffer
(John Lennon - 歌手)

Louise Chambers (王女)

Gerard Horan
(Roy Given - 買収されていない警察官)

Rupert Frazer
(Lord Drysdale)

Christopher Owen
(Mountbatten - 王女に近い王族)

Craig Fairbrass
(Nick Barton)

Angus Wright
(Eric Addey - アマチュア無線家)

見た時期:2008年6月

ネタバレ予告

このページだけではばれないようにしてあります。実話が絡んでおり、その人たちがどうなったかについて書くと、かなりネタがばれるので、その点はページを分けて書きます。次のページに行くと、大半ばれます。

★ 予定が狂った

実はちょっと前に別な作品を見て、その記事を書く予定にしていたのですが、日付を覚え間違えていて延期。その次の予定に入れていて、楽しみにしていたバンク・ジョブが先になりました。

★ タイトル

何と言うお粗末な邦題ですか。「消えた強盗事件」とか、もう少し何とかならなかったんでしょうか。

★ 逆だった

実話らしいです。実話では「被害者の名誉を守るために名前や職業などをいくらか変えました」という断わり書きが出ることがあります。この作品は「犯人の名誉を守るために名前を変えました」という断わり書きが出ました。

★ 実話部分が多いストーリー

私もあの時代を生きていたので、いくらか覚えがあります。しかしロンドンではきっちり報道管制を敷いたらしく、メディアは書かなかったそうです。この作品にはそういう断わり書きがあったので、本当の話をそのまま剥き出しで描いたのではないかも知れません。ざっとこういう話です。

★ 荒いあらすじ

時は1971年、ロンドンはベーカー街のロイド銀行。元々は犯罪未経験の、後で落ち着いて考えて見るとかなり善良な数人が集まって、背伸びをした銀行強盗を計画したという事件です。以前イタリアの黄金の7人という作品を何本か見ましたが、コメディー・タッチにしていないだけで、ああいう感じの準備をします。黄金の7人のように特にずば抜けた頭脳の持ち主がいるわけではなく、中古の自動車販売業をやっているテリーの首が借金で回らなくなったのがきっかけです。知り合いを数人募って、黄金の7人より雑な準備をします。

なぜ本来はまじめな男テリーがそんなやばい話に乗り出したかが重要です。彼が自分で思いついたのではないのです。何も知らない、犯罪には素人のテリーに言葉巧みに《特定の》銀行の強盗を《特定の》時期にやるように持ち掛けた人物がいたのです。

それは政府の機密の仕事をやっている公務員。中の1人が麻薬密輸でドジを踏んだ女性マーティンに「銀行強盗をする人間をリクルートするように」と指令を出していたのです。強盗のドサクサに紛れて彼女はその銀行の《特定の》金庫から《特定の》品を持ち出すように言われていました。ちょっと考えるとインサイド・マンと似た筋書きですが、全く違う展開をします。

元々は単純だったこの事件。政府関係者の側から見ると、数人の銀行強盗たちは金庫から取った物全てを謝礼として受け取り、マーティンは《特定の》ブツを政府に渡し、それでチャラ。強盗は自分たちがそういう事に利用されたとは知らないままトンズラというはずでした。

《特定の》ブツというのはマーガレット王女の問題写真で、隠し持っていたのはマイケルXという市民運動家。人種差別反対運動をやっていながら裏では麻薬取引もやっており、さらにこういう写真も貸し金庫に隠し持っていたわけです。MI5 (軍諜報5課) は彼の身辺にもスパイを入り込ませていますが、なかなか尻尾をつかむことができません。

ちなみに私もよく混乱するのですが、英国では軍諜報5課が国内担当、6課が海外担当。5課は国内ではありますが、逮捕はだめなのだそうです。逮捕はスコットランド・ヤードがやるそうです。バンク・ジョブでも縄張り争いがあり、ある刑事が威信をかけて MI5 の前に立ちはだかります。

またバンク・ジョブでは海外もいくらか関連します。杓子定規な事を言えば国境を越えたとたんに MI6 の出番です。

これだけですと仕事もさっさと片付き、映画にするほどのことは無いのですが、話は途中から脱線してしまいます。ネタばれになると行けないので、あまり詳しく書けませんが、これまでほとんど犯罪に関わったことの無い人たちが、思いもよらず国家機密に関わってしまっただけでなく、その後ぞろぞろやばい話が出て来てしまいます。目を白黒させるのは強盗たちの方。ドイツでは「1番悪くなかったのは強盗たちだった」というようなことを聞きましたが、その通りの展開です。しかもとんでもない事に関わってしまった強盗たちは生き延びる手立てを大急ぎで考えなければなりません。ストーリーはそこからおもしろくなって行きます。

★ まじめなステイサム

主演はジェイソン・ステイサム。普段はおちゃらか映画が多いですが、バンク・ジョブではアクションは無し。作品全体にはユーモアがあるのですが、見た瞬間に笑う類のユーモアではなく、映画全体からかもし出される状況の笑いが主です。およそステイサムらしくない作品ですが、本人は昔から中堅の俳優であったかのような、そ知らぬ顔をして演じています。

ガイ・リッチの作品から注目を浴びるようになった人ですが、リッチをとっくに追い越して世界的名声をキープしています。私も結構な数見ています。どうやらアクション・スターだと思わせておいてこっそり演技の経験を積んでいたようです。バンク・ジョブにはいくらかイギリス流社会派のタッチもあるのですが、難無くこなしています。

★ 脚本

キャスティングではこの作品はステイサムを抜いてしまうと英国外では全く注目されないと思います。そうなると話題で観客を引き付けるしかありませんが、その話題も特に英国の政界や王室などに感心が無いようですと、鼻にも引っ掛けてもらえなくなるでしょう。

ステイサムは一応国際的に名の通った俳優ですので、連れて来たのは正解ですが、彼をファン・ダムよりちょっとできのいいB級アクション・スターだと思っている人も多いので、そうなるとまた株が下がってしまいます。ところがアメリカでは大評判だったようですし、見たばかりの私もこれなら人に推薦してもいいのではと感じています。

おそらくは3つの組み合わせた良かったからでしょう。1つはバカ受けしている大スターではないけれど、それなりに顔の知られているステイサムを連れて来たこと。トム・クルーズやケビン・コスナー級のスターですと、ちょっと枠からはみ出してしまうような気がします。

2つめはやはり一国の王女が絡んでいると、それなりにこの話題で人の関心を引くことができるだろうという点。この2つでまだ見ていない人が紹介記事を見たりして関心を持つのではと思われます。

そうやって人を映画館まで引きつけても、ドイツ人はあまりくだらない映画だと途中で帰ってしまいます。映画祭などでは最初の15分が勝負。そこへ良く書けた脚本を持って来ると、取り敢えず成功します。3点目は脚本です。

他のイメージが強いステイサムにこういうドラマを演じさせるのはちょっと冒険だったかも知れませんが、彼は十分期待に応えてまじめに演技しています。彼が脚本に合わせたのか、脚本が彼を予定して書かれていたのかは分かりませんが、良くマッチしています。英国ですとこの程度の役を軽くこなせる俳優はゴマンといます。そういう意味では脚本自体が良く書かれていたと評価するのが正しいかも知れません。英国にはこの程度のドラマを書く脚本家もゴマンといますが、結果が良ければ成功と言えます。

★ カメラ

70年代のロンドンの町の様子はよく出ていました。そういう意味での不満は無いのですが、カメラの高さが「見にくいなあ」と思いました。視覚的に見ると比較的地味な作品なので、もしかしたらあまり大きな映画館での上映は計算に入れていなかったのかも知れません。何か技術的な理由があってわざと下から上を見上げるような角度を選んだのか、あるいはDVDや小さ目の映画館を計算に入れて撮ったのかよく分かりません。私が見たのはファンタの会場の大ホールの方(また懸賞に当たったのです)。ドイツでも有数の規模とサウンド・システムを持っています。その中でも1番いい席に座っていたので、大スペクタクル映画でも大丈夫です。しかしバンク・ジョブをここで見ると、船酔いとまでは言いませんが、妙な感じになります。

★ 蛇足

実はこの日はドイツとオーストリーのサッカー欧州選手権の日。今年は各映画館でサッカー鑑賞を主催している他、その辺の飲み屋、レストラン、道端でも大型テレビを持ち出して来て、無料で試合が見られるようになっていました。 私がバンク・ジョブを見た会場に来ていたのはおそらくは懸賞に当たった人だけだったのでしょう。最高のホールなのにガラガラでした。

かく言う私も前回の世界選手権以後ミイラ取りがミイラバンク・ジョブが終わってポツダム広場のショッピング・センターをのぞいたら大きな通路にテレビを設置し、ソファーまで出してありました。それで、試合の後半を見ていました。世界選手権に比べるとちょっと手抜き試合に見えないこともありませんでしたが、ドイツの勝ち。

今年はかつての日本、韓国のようにスイス、オーストリー二カ国開催。ところがちょっと前にトルコが主催国を負かしてしまい、今度はドイツ。ええんやろか、招待者に遠慮しなくて・・・などと思いながらもドイツが勝ったので、まあ悲しくはなりませんでした。やはり地元なので、トルコかドイツが勝つとついニタリとしてしまいます。ちなみに今年のゴール・キーパーはレーマンです。

スイスは、チェコに負け、トルコに負け、オーストリーはクロアチアに負け、ドイツに負け、ポーランドと引き分け、その結果スイスが勝ったのはただの1度、オーストリーは引き分けが1個だけです。ええんやろか。

★★ この先はネタばれページです。

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