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2008 USA 85 Min. 劇映画
出演者
Bradley Cooper
(Leon Kauffman - カメラマン)
Leslie Bibb
(Maya - ガールフレンド)
Brooke Shields
(Susan Hoff - ギャラリー経営者)
Vinnie Jones
(Mahogany - 殺人鬼)
Tony Curran
Peter Jacobson (Otto)
Roger Bart (Jurgis)
Quinton Jackson
Dan Callahan
(Troy Taleveski)
Barbara Eve Harris
(Lynn Hadley - 刑事)
見た時期:2008年8月
★ しょ〜もない北村
あのしょ〜もない VERSUS -ヴァーサス、ALIVE -アライブ、あずみを作った北村龍平なので本来なら避けて通るはずでしたが、ウィニー・ジョーンズが出るというので見に行きました。犠牲になったのはデンマークの作品ですが、ドイツにはデンマークの作品はわりと楽に入って来るので、DVDで見る機会があるだろうと思いこちらを選びました。DVDが出ると言うのなら北村龍平の作品もわりとすぐDVDが出るのでどちらにしても良かったのですが、何となく今回は北村龍平にしようかという気になりました。最終決定に至った理由はさっぱり分かりません。
★ 今年だけ期待を裏切らなかった
さて、見た結果ですが、大当たりでした。今年はあまり秀でた作品が無い年だったのですが、スプラッター部門にも少しは目をやらなければ行けないと思い、その1つとして選んだつもりでした。しかし見終わってみるとなかなかの力作で、これがあのしょ〜もない VERSUS -ヴァーサス他を作った同じ人とは思えませんでした。スプラッター性もあるのですが、ショーダウンを知ってしまうと意味深なスリラーと名づけることもできます。子供騙しのお遊び映画とは一線を画します。
主演の1人あるいは重要な脇役と言えるウィニー・ジョーンズも俳優としてしっかり役を演じています。元々スポーツ畑の人です。英国では超有名人。欧州でもかなりの有名人。本職と違うので台本を読むのが上手いのか下手のかは知りませんが(台詞の多い作品を見たことが無い)、使い方が上手ですと、身振り手振り、顔の表情は良く生きます。同じくスポーツ畑から転職したジェーソン・ステイサムは主役でしかも台詞の多い作品によく出ますが、英国人の俳優としてはちょっとしゃべりに格調が無く、体を張った役や無口な役にはいいですが、台詞の多い作品ではいくらかぼろが出るように思います。その点ジョーンズはこれまで見た作品では使われ方がいいと言えます。ミッドナイト・ミートトレインはカメオ出演とか本人役などといった軽い役ではありません。台詞は少ないですが、というかありませんが、この作品は彼抜きでは作れません。説得力のある演技と言えるでしょう。彼をキャスティングできたことで映画製作半分成功と言っても過言ではありません。
★ 外国で高い評価の北村
アメリカに移住してしまった北村龍平ですが、未成年の頃に既にオーストラリアへ行ってしまった人なので、どこに住んでも同じなのかも知れません。初期の頃から映画を目指していたらしく、まっしぐらに映画を学びに行っています。批評家と私では趣味が全く違うらしく、初めから高い評価を受けたそうです。
★ これまでと違う作品
私が見たのは全てファンタを通してで、ファンタでは別格扱いされています。新作が出るたびに上映されます。私が騙されて見たのが、VERSUS -ヴァーサス、ALIVE -アライブ、あずみ、荒神。子供騙しと分かって見たのがゴジラ FINAL WARS (北村だから見たのではなく、ゴジラと主演のために見た作品)、その他に も2本ほど情報が入っています。ファンタで見た作品は概ね私のタイプではなかったのですが、せっかく日本語の映画が来るのでと思って見、これなら止めておけばよかったと後で悔やんだものです。
これまで私個人の評判はすこぶる悪いのですが、今度見たミッドナイト・ミートトレインはいきなり世界で通用する力作。驚いたの何のって。皮肉なことにお金を全部出してくれ、作る場所も提供してくれたアメリカでは大こけで、公開は数ヶ月延期、4万箇所の映画館のうち100箇所ちょっとで、1週間しか上映されなかったそうです。「なぜこうなってしまうの?せっかくストーリー的にも映像的にも見るに耐える作品ができたのに・・・」と思ってしまいます。
★ ミッドナイト・ミートトレイン
ハリウッドからお金がもらえることに決まった後、作品を選ぶのに長く時間がかかりようやく決めたのがミッドナイト・ミートトレインだそうです。私には良い選択に思えました。私は読んでいませんがクライブ・バーカーの原作(短編)があり、映画は全て原作通りというわけではないそうです。アメリカでは超小規模に8月初旬に公開。ドイツでは8月12日に始まったファンタで約1ヶ月の間に8都市でそれぞれ1回公開。ベルリンは2館。ファンタの場合ほぼホールが満員になるので、アメリカよりずっと多くの人が見ること になりそうです。(後記: これを書いていた時はまだファンタ開催中)
★ あらすじ
ギャラリーの手配もつき、間もなく成功すると思われる若手カメラマンが展覧会の素材を求めて近代都市の夜の顔の取材を始めます。ところが彼の被写体になった人が行方不明。死者も出ています。あれこれ考えたり観察しているうちに、深夜地下鉄に乗って来る鞄を手にした紳士風の男が怪しいということになります。これがマホガニー、演じるはウィニー・ジョーンズ。
夜な夜な最終列車に乗り合わせた乗客が寡黙な男ジョーンズに屠殺されているのですが、それだけで終わってしまわず、なぜ、そしてジョーンズの他に誰が・・・などという所まで掘り下げたストーリーです。しかも最後にあっと驚く展開も用意されています。そしてその全部がお笑いスプラッターとは程遠い、それなりに理にかなった説明になっています。
★ 全体の出来
ここまでに書いたように出来のいいスリラー仕立てで、スプラッター・ファンのために十分血と肉も用意されています。私は気分転換にたまに見る程度で本格的なスプラッター・ファンではありません。どちらかと言えばミステリーやスリラーの方が好きなのですが、今回の北村はそういう趣味の人に焦点を当てた感じです。
画面全体は暗く、青味がかった冷たい印象なのですが、本題がそうなので良く合っています。これまで見た北村の作品は色とりどりだったので宗旨変えです。ファンタの場合ファンが十分いるだろうということで大きい方のホールで上映されました。一緒に組まれていたプログラムが特殊効果などを滅多に使わないデンマークの作品だったこともあり、大きなホールには実際結構な人数入っていましたから、この選択は正解ですが、映画の性格から言うと、良い設備の映画館のやや小さめなホールが合うように思います。深夜の地下鉄の中という雰囲気はあまり大きなホールですと白けてしまいます。以前フランカ・ポテンテ主演、ロンドン地下鉄失敗作 0:34 レイジ34フンというのがありましたが、ミッドナイト・ミートトレインは 0:34 レイジ34フンで失敗した部分が全部上手く行ったと言えます。
北村を誉めるなどという珍しいことをやってしまいましたが、ファンタが終わってからアメリカで興行的に大失敗したと聞いて、皮肉だと思いました。欧州のファンに希望がつなげるかも知れません。DVDで見るよりは小さ目の映画館で見る方が怖さが出ておもしろいと思います。DVDでご覧になる場合は部屋の電気をやや暗めにして、大勢で騒いだりせず、コーラやポップコーンなどはつつしみ、できれば生肉を刺身にしてご覧になるといいかと思います。
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