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考えた時期:2011年10月
今日、2011年10月30日からまた冬時間に切り替わりました。日本から遅れること8時間となります。夏場は7時間の遅れ。
日本で夏時間を取り入れるという話は戦後すぐからあり、試したこともあったのですが、また中止になっています。私も緯度の高くない地域は夏時間を取り入れてもあまり意味が無いように思います。
★ ドイツの夏時間
ドイツが1916年に取り入れたのが最初で、英国、米国と続きましたが、米国ではブーイングに遭って頓挫(第2次世界大戦中に米国では戦略的な目的で復活)。アメリカのような国土の大きな国は緯度の高さの他に経度差が大きく、欧州の国や日本とはかなり事情が違います。
★ 日本の夏時間・・・頓挫
日本では戦後暫くアメリカの方針で占領中実施されていましたが、占領が終わった年に終了。両親の世代からは眠い、眠いという言葉を何度も聞いたことがあります。日本は地理的条件から見ると特にサマー・タイムにせずともやって行け、緯度の関係でメリットがあまり多くありません。なので立ち消えになったのでしょう。
311後暫く節電を視野に夏時間を取り入れてはという話がでたようですが、これも結局は立ち消え。夏場、猛暑の中早めに家に帰れば自宅で冷房をつけざるを得ず、電力は多く使われてしまいます。会社など大勢の人がいる場所で一まとめに涼しい方が、会社員全員が自宅に戻ってそれぞれ冷房をつけるより安上がりかも知れません。
★ ベルリンの夏時間
最初に始めたのが北欧やアラスカではなく、ドイツだったのは意外ですが、ドイツは6月末ですと夏時間の午後10時近くまで、日本の午後4時頃のような感じです。夏時間生活をやったことがない人はあまりピンと来ないかも知れません。私も最初体が慣れるまでちょっと時間がかかりました。
気持ちから言っても日本から来たばかりでしたので、午後6時頃になれば家に戻って夕食でも作り、本でも読むかと思っています。ところが6時なんかですと、まだ日本の午後3時ぐらいの明るさ。なんだか家にいるのがバカバカしくなってしまいます。
逆に時計を見ずに何かやっていて、薄暗くなって来たからそろそろ家に帰ろうと思ってふと気がつくともう9時半!夕方家でやろうと思っていた事がまだ終わっていなかったりして、焦ります。
と言うわけで最初は戸惑いますが、慣れて来ると素敵でもあります。例えば午後8時などでも公園を散歩したり、プールに泳ぎに行ったり(当時は私もプールに行けたのです)、そういう日はとても気分がいいです。ドイツは公園を閉園することはまず無く、24時間開いていますが、暗くなると襲われるような事件が無いわけではありません。
★ 暗い時間が短い方が防犯になる?
ドイツの治安は比較的いい方ですが、8月中のある日、ファンタが終わって大きな公園を通って帰宅しようとした時、公園の入り口に女性が座り込んでいて血を流しているのを見ました。付近の人や警察が彼女の世話をしていましたが、まさにファンタの映画に出て来るような一場面でした。若いおなごで、様子からするとファンタの観客風。自転車に乗って公園を通ろうとしたらしいのですが、NVD(ナイト・ビジョン・デバイス=夜間光の殆どない所でも見える眼鏡) をつけていたのではないかと思われる犯行。私も長年ファンタ終了後この時間にここを通っていたのですが、事件の後は、灯りが消える10時以降は通らないようにしています。
実はそれまで歩行者としてこの公園を灯りが消えた真夜中通ると危ないとは思っていたのですが、自転車でスピードを出して走れば大丈夫と思っていました。一直線に数百メートル走ると、その向こう側は大通り。灯りもついています。ところがこの女性、私と同じ事を考え、自転車で公園を抜けるつもりだったらしいのです。怪我の様子を見ると自転車から落ちたようでした。それで私1人ではなく、その辺にいた人はもしかしてこの女性NVDをつけた人間に自転車を倒されたのではないかと思ったわけです。もしそうだとすればまさにファンタのホラー映画差ながらの出来事。
こんな事が起きたこの場所でも6月の午後8時、9時なら昼間のように明るいわけで、散歩にぴったり。人通りも多いです。
★ 夏時間とはなんぞや
夏時間というのは標準時間(=冬時間)の時に朝8時と称していたものを夏時間の間9時と称するだけ。会社も学校も朝8時に始まる場合、夏時間に切り替わると1時間早く起きなければなりません。冬時間の計算では7時から始まるからです。国中がこの時間に合わせて生活を1時間ずらします。切り替えの後数日は眠いです。
逆に夏時間から冬時間に切り替わるとその日1時間寝坊できます。例えば今日。
つまり、時間の呼び名を変えずに、国中が「始業を夏場半年間7時にするぞ」と宣言しても同じ事になります。なのに時計をずらす理由は1つ。印刷屋さんと名刺屋さんと、看板屋さんは儲かっていいのですが、これをやると切り替えごとに始業時間、終業時間を書き換えるか、1年を通して2通り書かなければならないのです。
例えば医者などは
月 9時から12時 (夏時間、8時から11時) と16時から18時(夏時間、15時から17時)
火 9時から12時 (夏時間、8時から11時) と16時から18時(夏時間、15時から17時)
水 休業
木 9時から12時 (夏時間、8時から11時) と16時から18時(夏時間、15時から17時)
金 9時から12時 (夏時間、8時から11時)
ってな具合に2通り表示しなければなりません。これを全職種、全業界、全公官庁、全学校、病院などありとあらゆる方面でやらなければなりません。ウェップ・サイトなら紙代、ペンキ代はかかりませんが、誰かが管理していて夏冬切り替えるか、同時に2通り表示しなければなりません。銀行強盗をやろうという不届き者までもが銀行の閉店時間を間違えないように気をつけなければならないわけです。
時計をずらしてしまえは1年を通して同じ操業時間を1種類出す だけでOK。
ちょっと困るのは海外と取引がある会社や、在外公館。日本人が日本のドイツ大使館に用があって行くと、大使館の人がドイツに電話をかけてくれたりしますが、そんな時、夏場と冬場でドイツ側の勤務時間が1時間ずれているので、運が悪いと、問い合わせは翌日。外資系の会社で仕事をしていて、欧州に本社がある場合も同じです。欧州側は人の迷惑顧みず、やって来ました電線マン・・・ではなく、就業時刻になれば外国支店の迷惑を顧みず、さっさと家に帰ってしまいます。欧州人は残業を嫌いますし、上役の側もあまり残業は計算に入れていません。
★ 切り替えの時
冬時間・夏時間の切り替え時期は私の渡欧後変わりました。以前は10月末ではなく、1ヶ月ほど前だったように記憶しています。ドイツの大学は10月中旬に新学期が始まります。確かその時にはこれまではもう冬時間に入っていたような気がします。変更の日は常に土曜日から日曜日にかけての午前2時頃。大半の人が寝ている間に小人が出て来てこっそり時計を1時間戻します。
私が卒業論文で忙しく、他の事に構っている暇が無い間に今度は妖精が現われ、切り替えの時を1ヶ月ずらしてしまったようです。それ以来変更は10月末の日曜日となりました。
私はこの変更にはちょっと違和感があります。冬時間から夏時間に切り替わるのは3月末で、これは妥当に思えます。ちょうど冬が終わり、短い春を経て夏に変わる時期で、ドイツは天候異変で4月に猛暑が来ることもあります。なので日光浴ができる時間が増え喜ぶ人もいます。何しろドイツ人は2月の寒さの中でもカフェの外に座ってアイスクリームを食べ、「夏よ来い、早く来い」と願う国民なのです。
しかし10月末となるととっくに冬の雰囲気に入っています。9月末に夏に未練を残しながら冬時間に変更というのが季節感からすると合っているように思えるのです。
★ 英国との確執
確執と言うと言葉がきついですが、欧州ではドーバー海峡の向こう側は外国だという気持ちを持っている人が多いです。ユーロ圏には今も入っていませんし、英国にはグリニッジ標準時というのがあって、世界の時間は我が物とばかりに君臨しています。何しろ世界の経度の基準がロンドンにあるのですから、その自信たるや・・・。
計測法が緻密になってからは UTC (協定世界時)に変わりましたが、英国人のこだわりは強く、名前だけは未だにグリニッジ標準時となっています。
ドイツは以前から中部ヨーロッパ標準時と言っています。ドイツ人は自分たちは中部ヨーロッパの中心にいるという気持ちがあり、夏時間は中部ヨーロッパ夏時間と言います。
この他に西ヨーロッパ時間というのもあります。これを見ていると国々が鍔迫り合いをしている様子が垣間見えます。
GMT(グリニッジ標準時)は当然ながら英国の自己中心型。英国はこれしかないという自負があります。
英国がしぶしぶ受け入れたのがまず UTC。精密な計測で GMT と比べると僅かな差が見られ科学的根拠に従い移行。名前はともかく実質的に英国が従っているのはこの時間。
もう1つ英国が受け入れているのは西ヨーロッパ時間。これに参加しているのは地理的に西の方にあるヨーロッパの地域と言えるアイスランド、ポルトガル、カナリア諸島に加えて、英国とアイルランド。不思議なのは同じような場所にあるスペインとフランスが加わっていないこと。
対抗馬として中部ヨーロッパ標準時があります。ここには中部ヨーロッパと思しき殆どの国が入っています。政治的にはかつて東側と言われた国も含まれています。地理的には中部と言えます。
フランスとスペインがここに入っているのはもっぱら商業的な都合のようです。東側の縦の線は過去にはリトアニアをも含んでいたそうです。
この他にヨーロッパ寄りの旧ソ連地域だった国々にも独自の時間があります。
★ 英国のラジオを聞く時の混乱
壁があった頃、ベルリンには英国国営放送が入っていて、ドイツ語の放送をしていました。東ドイツの人に、「西側良い所1度はおいで」と声をかけたようです。その他に英語のワールド・サービスも FM で聞くことができました。何しろ西ベルリンに支局があって特派員も座っていたので、当然西ベルリンの人も聞くことができました。
ドイツ語放送の時はアナウンサーはベルリンの時間に合わせて言っていましたが、壁が崩壊し存在意義を失ったため、ベルリン発のドイツ語放送は東ヨーロッパに移ってそちらの国の言葉で放送されるようになりました。
その後ベルリンには FM のワールド・サービスが残ったので私はよくその放送を聞いていました。何しろアフリカやインドなど、ドイツのラジオのニュースでは殆ど触れないテーマに詳しく触れるので、おもしろかったです。科学関係の放送も独創的な視点で最新の研究発表などを放送してくれるので、下手なコメディーよりずっとおもしろかったです。そんな時に戸惑うのは時間。何しろロンドン発なので、あちらの時間に合わせてあるのです。
ベルリンで聞く時戸惑うこと、戸惑うこと。何しろこちら側は勝手に夏場1時間ずらします。そして英国のグリニッジ標準時は動かない。加えて英国にも独自の夏時間があるので、ベルリンとの差が2時間になったり、1時間になったりします。
その後ワールド・サービスも FM でやらなくなったので問題は自然消滅しましたが、たかが時間にここまで各国がこだわるのにはちょっと驚きました。
★ 夏時間に慣れた日本人
何年かこちらに暮らして夏時間に慣れた後に日本に帰ると、当然ながら逆向きにびっくりします。3ヶ月ほど夏場に日本にいた時、まず悲しかったのは午後7時になるともう真っ暗なこと。ドイツに着いて暫く驚いたことの逆向きです。ま、これは当然。
しかし自分の国なので間もなく日本時間に慣れます。夏休みの間日本にいて、ベルリンに戻るともう一発お見舞いされます。どの月に戻るかによりますが、夏時間が終了してから到着すると、今度は午後4時頃から暗くなり始め、悲しくなります。ベルリンは比較的北の方にあるので、ミュンヘンなどより日の入りが早いのです。
1度真夏にアラスカにいたことがあるのですが、その時は太陽が沈むぞ、沈むぞと言いながら沈まないやるやる詐欺でした。あとちょっとのところで薄明るいまま。その後、陽はまた昇る・・・。
恐らくはこれが冬になると登る登る詐欺になるのでしょう。出るぞ、出るぞと言いながら出ないので一日中真っ暗・・・なのではないかと思います。インソムニアやビッグホワイトを見た時、日の出と日の入りをもっと見せてもらいたかったなあと思いました。
とまあ、毎日、毎年こんな感じで暮らしているので当たり前になってしまった事ですが、今年は夏時間にしようかなどという変な話が日本に登場したので、1度まとめてみました。日本がどうしてもやると言うのなら、逆に冬時間をずらし、普段より1時間か2時間早く帰宅できるようにしてはどうかと思います。暗くなる前に買い物に行ったり、早めに家族の顔が見られるので、外出したりできます。しかし冬もまた暖房費用と考えると、会社など大きな場所でまとめて暖房した方が安上がりなのではという気がしないでもありません。やはり日本にはこういう制度は必要無いのかも知れません。
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