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USA/UAE(アラブ首長国連邦) 2011 133 Min. 劇映画
出演者
Tom Cruise
(Ethan Hunt - IMF のメンバー)
Paula Patton
(Jane Carter - IMF のメンバー)
Simon Pegg
(Benji Dunn - IMF のメンバー)
Jeremy Renner
(William Brandt - IMF の分析官)
Michael Nyqvist
(Kurt Hendricks - コバルトと呼ばれる謎の男)
Samuli Edelmann
(Wistrom - コバルトの一の子分)
Vladimir Mashkov
(Anatoly Sidorov - ロシアの諜報機関のメンバー)
Ivan Shvedoff
(Leonid Lisenker)
Anil Kapoor
(Brij Nath - インドの有力者)
Lea Seydoux
(Sabine Moreau - ハンガリーでトレヴァーを殺したヒットウーマン)
Josh Holloway
(Trevor Hanaway - ハンガリーで任務遂行中の IMF のメンバー)
Miraj Grbic
(Bogdan - 情報屋)
Ilia Volok
(ボグダンの従兄弟)
Pavel Kriz
(Marek Stefanski)
Michelle Monaghan
(Julia Meade - イーサンの妻)
Ali Olomi
(Sheikh)
Ving Rhames
(Luther Stickell - IMF のメンバー)
Tom Wilkinson
(IMF 長官)
見た時期:2012年5月
井上さんが1月に話題にしています。撮影上の見所がいくつかあるので、大スクリーンの映画館で見るのが正解。私は残念ながら DVD でしたが、ストーリーも退屈しないので、見て損をしたと悔しがることはありません。
前の記事でもご紹介しましたが、割引サービスで一挙に4本 DVD を借りた中、ベストの1つです。最高点をつけたのはリチャード・ギア主演のスパイ・スリラー顔のないスパイ。アクションも少しありましたし、プロットの穴を忘れるほどの展開で、主演のキャスティングも良く、全体の中で最高点をつけました。
それに続く2位がミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコルです。トム・クルーズ・ファンでない私が珍しく高い点をつけました。今回借りた中では1位にかなり迫っています。ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコルは娯楽アクション。要求に良く応えています。クルーズ自身は年齢もあるので、アクションやりっぱなしではありませんが、作品全体に所々、アクション映画だと名乗れる程度にアクション・シーンが入っています。部分的にはクルーズの見せ場もあります。
彼が関わっているドイツやフランスで問題になっている団体の事もあるし、その他諸々聞こえて来るゴシップの、結果クルーズはあまり好きな俳優ではありません。なのでクルーズ・ボーナスはありません。シリーズ物のアクション映画としての視点だけで見ました。これがロン・パールマンなどですと、出るというだけで高下駄を履かせてあげよう、いい評価をしようという気になりますが、クルーズの評価は素足で始まります。
当初は失笑も買っていたミッション:インポッシブルシリーズ、4作目に至ってかなり進化しています。クルーズが制作に大きく関わっており、クルーズがクルーズのために作った映画と言って構わないでしょう。なのでクルーズが良く見えるような作品にしようとの努力が見えます。それがこれまで失笑を買った理由の1つでもありました。ナルシズムが行き過ぎると笑われます。
しかし何度か結婚、離婚を経、最近では実子まで生まれ、考え方に余裕でもできたのでしょうか。いずれにしろユーモアのセンスが磨かれて来ました。私はクルーズにはコメディーの才能が隠れていると思っていたのですが、長い間隠されたままになっていました。
2002年にクルーズ主演のマイノリティ・リポートを見ましたが、この作品の中にはクルーズとペーター・ストルマーレが絡むコメディー・シーンがあります。当時人殺しの役が多かったストルマーレが闇の仕事をする怖いおっさん(もぐりの外科医)を演じていて、クルーズは目玉を刳り抜かれる役でした。そのいきさつは当時の記事を見ていただくとして、このシーンは全体の雰囲気と違い、完全にコメディーになっています。
当時ストルマーレを中心に記事を書きましたが、共演のクルーズもそのシーンにぴったりはまって、一緒になってコメディーを構成しています。あの時は血も凍るような恐ろしいストルマーレがコメディーを演じる落差に驚いてストルマーレ中心に書いたのですが、クルーズにもコメディーの才能があったようです。ストルマーレは何度かあれっと思うような作品を見ていたので、コメディーもやる気になればできるんだと当時認識したのですが、クルーズについては自分中心のナルシズム作品ばかり続いていたので、きつい評価をしています。
しかし新しい作品を見て、違うシーンを見たら評価は変更しなければなりません。今回ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコルを見て、「クルーズもその気になればコメディーができるんだ」と認識しました。もしかしたらこの10年が彼を変えたのかも知れません。自分のナルシズムも含めて笑い飛ばせるような境地に達したのかも知れません。余裕ができたのかも知れません。そして改めて2002年を思い返してみると、ストルマーレと2人、ボケと突込みができたのだと解釈することも可能です。
シリアス系の俳優のコメディー路線は成功しても1度だけだと偶然かも知れません。たまたま上手く行ったのかも。しかしミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコルを見て、彼はコメディーの腕を磨いたのだ、磨いたら一応様になったのだという結論に達しました。というのはこの作品、コメディーは1箇所ではないのです。全体に緩いランニング・ギャグがちりばめてあり、クルーズのとぼけた表情が生きています。それもプロのコメディアン、サイモン・ペグを目の前にして演じて見せています。
★ あらすじ
いつものように仕事依頼があり、仲間を数人集めて仕事をするのがイーサン・ハント。冒頭同僚のトレヴァーがハンガリーで殺し屋に殺され、首尾良く盗み出した書類も取られてしまいます。
次々場所が変わるのが見せ場のミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル。次のシーンはモスクワ。刑務所に入っていたイーサン・ハントの救出隊が刑務所の IT システムを狂わせて、イーサンを脱獄させます。そこまでは予定の行動のようですが、イーサンはその時別な房にいた情報屋も連れて出ます。
今回のティームはイーサンを脱出させたベンジ、ブダペストで殺されたトレヴァーの恋人のジェーン。クレムリンに侵入して、謎が残るブダペスト事件の情報を盗み出そうとしますが、IMF は妨害に遭い、爆破テロが起き、イーサンも吹き飛ばされてしまいます。
気づいたら手錠をかけられて入院中。FSB ではないかと思われるロシアの機関のアナトリー・シディロフに話しかけられ、テロリスト扱い。病院から何とか逃げ出し、IMF に連絡。長官じきじきのお出まし。そこでお説教されてしまいます。イーサンが捕まったこともあって、ロシアは爆破テロをしたのがアメリカの諜報機関だと考えており、長官から「もう君の面倒は見られん」と言われてしまいます。「例によって君もしくは君のメンバーが捕らえられ、或いは殺されても当局は一切関知しない」と大平透の声が聞こえて来そうです。アメリカ政府の正式見解としてイーサンたちはアメリカからも追われるテロリスト扱いに切り替えられます。援助も保護も報酬も無し。
とは言うものの、長年の経験からイーサンがテロリストとは考えていない長官はイーサンに非公式に調査を続けさせようと考えます。ちょうどそんな話をしている時シディロフの男たちに襲われ、長官は死亡。同じ車に乗っていた分析官と命からがら逃げ出し、まだ残っている仲間の所へ。
イーサンたちがブダペストの頃から追っていた男はコバルトと呼ばれていて、本名はカート・ヘンドリクス。スウェーデン出身の教授で、人類の進化を促すために取り敢えずは口減らし、その手段として核兵器を使おうというマッド・サイエンティスト。自分では核兵器を持っていないので、クレムリンのを勝手に使おうともくろんでいます。狙いは核ミサイル発射装置。盗んだことを誤魔化すためにテロ騒ぎを起こし、目立たなくしようという作戦でした。
ブダペストで取引されるはずだった書類はそのスイッチに関するもの。書類を盗んだトレヴァーを殺して書類を手にしたヒットウーマンはそれをヘンドリックスに売りつけるための商談を予定。場所はドゥバイ。支払いはダイヤモンド。その情報をつかんだイーサンたちはホテルに先に入り、典型的なスパイ大作戦を展開。2つの階に同じルームナンバーの部屋を用意し、ヒットウーマンに会うのはイーサン、ヘンドリックスに会うのはジェーン。ヘンドリックスは内容を変えた書類を手にし、ヘンドリックスが用意した支払い用のダイヤモンドをベンジが別な階のヒットウーマンに渡すということを企みます。ところがここで手違いが起き、混乱。
まず、建物のセキュリティー管理が良く、ベンジが予定した IT のトリックが通用しません。その上砂嵐が来てさらに狂ってしまいます。ちなみに砂嵐を経験したことのある人の話だと、確かに視界は遮られますが、ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコルのような事にはならないそうです。ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコルはまるでハムナプトラの大嵐のようでした。
この後は追いかけっこ、殺し合い、汚名を晴らすという速い展開で、最後にアメリカでイーサンがいつもの仲間と楽しく話し合ったり、妻の顔をちらりと見たりするシーンで終わります。5つ目も作るでしょう。
★ スパイの家族
その時たまたまあった DVD を借りただけなのですが、偶然にも4本中3本がスパイがテーマな上、私生活も絡むストーリー。ミッション:インポッシブルで私生活が絡んだのはむしろミッション:インポッシブル 3 の方で、ミッション:インポッシブル 4 はその結果のようになっていますが、リチャード・ギアの作品と、ジョージ・クルーニーの作品はモロにスパイの私生活に関わります。
恋人を作り、正式に結婚する/しようとするパターンから、恋人のまま、娼婦を選ぶ、その場限りの短い関係の後去るなど、映画に出て来るスパイの私生活は様々です。引退している人もいれば、本人は引退したいのにさせてもらえない人もいます。ここ10年ほどスパイや傭兵をテーマとした映画が増え、数が多いと特徴を出さなければならないのか、私生活を描いたストーリーも増えています。
ふと思うのは映画を作る時に選ばれるテーマはマーケティング・リサーチをして観客のニーズに合わせているのか、作る側から観客に見せたいものだけを作っているのかどちらだろうという点。よその国にスパイに入って、ふと弱気が出て「僕も家族が欲しいんだ」などと言われても、機密を盗まれる側の政府にしてみれば、「何を甘えているんだ、君は」と白けてしまいます。最近なぜこういう弱ったスパイの私生活テーマが増えたのか訝っているところです。
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