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ミッション:インポッシブル3 / Mission: Impossible III

J.J. Abrams

2006 USA 126 Min. 劇映画

出演者

Laurence Fishburne
(Brassel - IMFの責任者)

Billy Crudup
(John Musgrave - ブラッセルの部下)

Tom Cruise
(Ethan Hunt - IMFのメンバー)

Ving Rhames
(Luther Stickell - IMFのメンバー、コンピューター専門)

Maggie Q
(Zhen - IMFのメンバー)

Jonathan Rhys Meyers
(Declan - IMFのメンバー、移動専門)

Keri Russell
(Lindsey Ferris - IMFのメンバー、デイヴィアンの人質)

Simon Pegg
(Benji Dunn - IMFのメンバー、内勤の技術屋)

Philip Seymour Hoffman
(Owen Davian - 武器商人)

Michelle Monaghan
(Julia - 医者、イーサンの婚約者)

見た時期:2006年5月

だから自分で見ないと分からない

亀有さんもご覧になったそうで、彼は3作の中で1番おもしろいと大合格点がつきました。怒涛の展開という誉め言葉が出るように、アクションを目当てに行くと、見ごたえがあるかと思います。私も予告編で見たシーンが予告より良かったと思った口です。アクション映画見に行ったのだからアクション見て満足しろとどこからかお叱りの言葉が出そう。

元のテレビシリーズの題はスパイ大作戦。当時のスパイのイメージはスパイ・バウンドのように国家が関わるというものでしたが、国を代表して人を送ることができない場合に「おはよう、ブリッグス君」などと政府筋から声がかかり、愛国心というより他の理由で動くティームが編成されます。皆それぞれ自分の分野で仕事をしている人たちで、用がある時だけ集められる人材です。

ロギスティックも自分たちで考え、作戦を練り、実行。政府筋から与えられる資料はターゲットの人物像、場所、警備の度合い程度。つかまっても助けは来ないという前提です。60分番組というきつい時間の枠の中では報酬がどういう風に支払われているのかなどは紹介する暇が無い様子。彼らの私生活謎のまま。ただひたすら任務実行という作品でした。全体のトーンは当時の他のテレビ・シリーズに比べて安っぽく、元々は大ヒット作品とは言えませんでした。しかしいつの間にかそのワン・パターンが好かれるようになり、ファン層が広がっていったようです。

当時はまだ東西冷戦の最中。それで東側、北側を悪者にしておけばそれで済み、東欧の国を貧乏臭く描写しておけば、当時圧倒的な経済的な強さを持っていた西側の某国の視聴者を満足させることができる時代でした。ですから、キッシンジャー氏の力で東西関係がデタントになり、出演者も任務を終えたと感じたのか、徐々にリタイヤして行き、いつのまにか番組も終了しました。

トム・クルーズが Mission: Impossible をやり始めたのは1996年。もう10年も前の話です。テレビ番組からはテーマ音楽と枠だけ頂戴して、他は勝手に変えてしまいました。最初の2作にはまだ発案者のブルース・ゲラーの名前が挙がっていましたが、3作目からは消えています。音楽だけはまだ残っていました。あれが無いとスパイ大作戦からは完全に脱線です。

結局私は3本全部見たのですが、スターのレベルは落ちています。初作はブライアン・デ・パルマが監督をし、ジョン・ヴォイトがあの懐かしい2人目のチーフ、フェルプス君に扮して出て来ます。その他に エマニュエル・ベアー、ジャン・レノー、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、クリスティン・スコット・トーマスなどとフランスを中心に欧州のスターが顔を揃えています。メンバーの中ではヴィング・レームスがその後も続投しています。

2作目からはキャストは地味になり、有名どころではタンディー・ニュートン、リチャード・ロックスバーグ、変わったところではクルーズにそっくりの従弟ウィリアムマポサーも顔を出しています。

3作目もそこそこ有名人を出していますが、スターの名前で人寄せをするほどではありません。有名中堅どころではフィッシュバーンとホフマン。ホフマンは今年オスカーゴールデン・グローブでもてはやされたので、後から有名になりましたが、キャスティングが決まった頃には多分まだオスカー俳優という認識は無かったのではないかと思います。その他に私が注目したのはジョナサンリース・マイヤーズですが、彼を追いかけている人は少ないと思います。女性の方はミシェル・モナハンが私も見た作品に何本か登場しているので、有名と言えないこともないですが、他はまだ本数も少ない比較的無名な人たちです。フィッシュバーンは事務所であれこれ文句を言っているだけで、アクションはやりません。ホフマンも彼を知っている人なら、もう少しインパクトのある役もできるはずだとおっしゃるでしょう。

お察しの通り、これは俳優で持たせている作品ではありません。

「ではストーリーで持たせるのか」と聞かないで下さい。タイトルがインポシブル・ミッションとなっているのは、内容の薄いストーリーを2時間持たせるという不可能な指令を実行しなければならなかったからです。「これほどの人材、物資を投入してあれだけ?」というのが終わった直後の感想でした。結局謎は解けないのです。

それでは人は何を見に映画館に足を運ぶのか。

トム・クルーズのファンには満足いただけるのではないかと思います。彼が登場するシーンが多いです。

外国旅行を映画館で済ませようという方にはボーンアイデンティティーなどのシリーズ、スパイ・バウンドの方がお薦めです。南米の山岳地帯をお好みの方にはプルーフ・オブ・ライフもいいです。Mission: Impossible III でも外国で撮影はしていますが、建物が写るばかりで町の様子が分からなかったりします。トム・クルーズは何ヶ月もベルリンに家を借りて住んでいたはずなのに、なぜか「これがドイツ」というシーンは見当たりません。中国のシーンだけ町の様子が良く出ています。

人間のやるアクション・シーンはフィッシュバーンが出ていたマトリックスの1の方が醍醐味があります。Mission: Impossible III では爆発など物が壊れる方のアクションには力を入れてあります。予告編によく登場するクルーズが車と共に吹っ飛ばされるシーンは、本編を見るともっと時間も長く迫力もあります。

しかしそういうシーンは他の作品にも見られ、それが個性を出しているとは言えません。Mission: Impossible III の個性はと言うと、結局ジュリアとイーサンの関係でしょう。スパイが私生活を作ってはだめだと同僚や上司に言われるのに、イーサンは楽観主義で身分を偽ってジュリアという医師と恋愛関係に入ってしまいます。これが物語りの半分以上の比重を持っていて、本来の指令実行作戦が隅に追いやられた感すらあります。

「いいのかい、そんな事して」という風に始まり、「だから言っただろ」という風に展開し、2時間の出来事が嘘のようにあっけらかんと終わります。まるで終わりのシーンを初日に撮影したかのようです。

交通局だかの(退屈そうな)仕事をしている男という触れ込みでジュリアとルンルンのイーサンが、間もなく結婚などと言ってジュリアの家族が集まる婚約パーティーに出ている真っ最中に、上司から連絡が入ります。

こういう商売だからいつどこへ行けと言われるかは分かりません。彼は引退の意向を示していて、これが最後の仕事になるような雰囲気。今後は外勤の任務にはつかず、新人を育てる役目に専念するつもりでした。しかし説得されて嫌々仕事を引き受けます。

ベルリンで仲間のリンゼイ救出作戦。せっかく助け出したものの、彼女は体内に発信機を埋め込まれていて、ミサイルがストーカーのようについて来ます。ようやく相手を倒したものの、リンゼイは体内爆弾が破裂して死んでしまいます。自分が育てたメンバーだったので、イーサンはしょげてしまいます。

彼女を死に追いやった張本人は武器密売男デイヴィアン。イーサンは上の命令を待たずに勝手に彼を確保する作戦を立て、それにも成功します。ここでスパイ大作戦お得意の仮面ごっこ。テレビ・シリーズでは俳優が入れ替わって演じ、最後にゴム製の仮面を脱いで見せるという子供だましで通していましたが、Mission: Impossible III では本格的になっていて、うっかりするとそのまま信じてしまいそうに手が込んでいます。コンピューターで顔の起伏を計算して、ぴったりに削るのです。声は化ける相手に文章を朗読させてその音声を人工的に再製します。最近のハイテクですとこのぐらいは可能かも知れないと思ってしまいそうなシーンで「嘘でもおもしろおかしく語ってあれば・・・」のいい例です。

デイヴィアンはイーサンたちに拉致され、建物のどこかに幽閉されます。彼は武器の密売の鍵になる人で、《ウサギの前足》と呼ばれる秘密を持っています。デイヴィアンは尋問をしようとしても勝手な話を始め、「お前の恋人を目の前で殺してやる」などとイーサンに脅しをかけます。普段なら全然気にしないイーサンですが、ちょうど婚約したばかりで、結婚式も目前。それでデイヴィアンの言葉がグサリと刺さります。この婚約者を演じる人はケイティー・ホームズではないのですが、どことなくイメージが似ていると思ったのは私だけ?

イーサンはリンゼイの死後彼女が出した絵葉書を受け取ります。切手の裏に何かが隠してあるのですが、誰にもその内容が分かりません。リンゼイはどうやらこのために命を落とした様子。一方デイヴィアンは大がかりな襲撃で取り戻されてしまいます。

リンゼイ救出作戦ではリンゼイを失っただけでなく、PCのハードディスクも破損してしまい、ようやく分かったのは、デイヴィアンがバチカンに現われること。この情報を元にバチカンで勝手な行動を取り拉致に成功しますが、今はそのデイヴィアンも奪い返され、イーサンはIMFに収監されてしまいます。IMFというのは国際通貨基金のことではなく、インポシブル・ミッション・フォースということになっています。組織はCIAかと思えるほど大きく、テレビ・シリーズの頃の比ではありません。

自分の組織で拘束されたイーサンに直接の上司に当たるマスグレイヴが情報と逃げ出すための武器を持って来ます。それでまんまと逃げおおせたイーサンはマスグレイヴが言った町上海に潜入。そこにデイヴィアンも隠れているのです。

IMFの技術屋の助けを借りながら上海を移動し、デイヴィアンの居所を突き止めますが、ジュリアはつかまっており、そのためイーサンもつかまってしまいます。デイヴィアンは《ウサギの前足》の場所をしつこく聞きますが、イーサンにはそれが何か分かっていません。デイヴィアンは冷酷に10までカウントし、イーサンから答が得られなかったので、ジュリアは殺されてしまいます。ところがその後現われたのが上司のマスグレイヴ。ジュリアだと思われていた女性は実は別人で、お面を被っていたのです。ジュリアは無事だという情報を貰い、マスグレイヴがなぜデイヴィアンを見逃すのかという話になります。彼を倒しても次の悪が出て来る、それなら現在の悪と適当に調子を合わせておいた方がいいという理屈です。

本当のジュリアを発見、デイヴィアンの部下を倒し、デイヴィアンに囚われていたジュリアを解放し、武器を渡します。しかしイーサン自身はリンゼイと同じカプセルを頭の中に打ち込まれてしまい、感電という形で破壊するしかありません。ジュリアが医者だったというのが幸いして(ああ、なるほど、そういう伏線だったのか)助かりますが、ジュリアには出来事がさっぱり理解できません。

ところがフィナーレになるとジュリアも含めたメンバー全員が和やかにIMFの建物を闊歩。ということはジュリアはシリーズの次作に出て来るのでしょうか。いずれにしろ話が安易に展開し、重みというものが感じられません。そのためかPRには力を入れていて、公開寸前まで緘口令が敷かれ、ジャーナリストもぎりぎりまで内容を教えてもらっていなかった様子。その上PRギャグで妙な箱が発見され、警察に通報されてしまう始末。今後トム・クルーズ法という新しい法律ができる様子です。

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