映画のページ
USA 2025 97 Min. 劇映画
出演者
Sophie Thatcher
(Iris - ジョシュの恋人)
Jack Quaid
(Josh - アイリスの恋人、キャットの友人)
Rupert Friend
(Sergey - ロシア・マフィア)
Megan Suri
(Kat - セルゲイの愛人)
Harvey Guillen
(Eli)
Lukas Gage
(Patrick - イーライの恋人)
Jaboukie Young-White
(Teddy - アンドロイド製造会社の社員)
Matt McCarthy
(Sid - アンドロイド製造会社の社員)
Marc Menchaca
(Hendrix - 保安官代理)
Ashley Lambert
(ジョシュの車のアナウンスメント)
見た時期:2025年2月
失望作が3本並んだ後に秀作登場。
監督は長編デビューですが、映画作りの最低限の技術は軽くクリア。ストーリーに力があり、俳優も上手に演じています。一見・・・で、実は・・・という物語の進み方もよくこなれています。脚本も自分で書いています。
★ 最初は6人だった・・・
6人の男女が集まってパーティー。皆が集まった郊外の豪邸の持ち主はセルゲイ。悪事で儲けたらしい大金持ち。彼が現在愛人にしているのがキャット。他に本妻もいます。キャットと以前から友人なのがジョシュ。ジョシュの現在の恋人がアイリス。アイリスがこの作品の主人公。その他にイーライという男性がパトリックという男性の恋人を連れて来ています。
近年のお約束(所謂西欧の白人だけを優先しない、ゲイ・レズビアンの関係も取り入れるなど)がいくつか盛り込まれていますが、自然な取り入れ方です。
★ エスカレート
最初は楽しく酒を飲んだり踊ったりしていましたが、エスカレートして、アイリスがセルゲイに暴行されかかり、自衛のために刺殺してしまいます。
気が付くとアイリスは椅子に手錠で手足固定されています。実はアイリスは人間ではなく、アンドロイド。携帯電話から様々な能力の度合いを入力できるようになっていました。ロシア・マフィアのセルゲイの金庫に莫大な金があり、それをキャットとジョシュが盗むためにアイリスを武器として使ったのです。
警察などに説明が必要になることを考え、表向きの事件を目撃させるためにイーライも招待されていました。彼のパートナーのパトリックも実はアンドロイド。
家から抜け出すのに成功したアイリスを追って、4人が森に。しかし自分の能力をパワーアップしたアイリスの勝ち。イーライはアイリスに殺されてしまいます。
セルゲイの車で遠くに逃げようとするアイリスを、ジョシュが阻止。パトリックの能力をリセットしてアイリスを追わせます。アイリスは逃亡中に警察官に出会います。リセットされたパトリックがその警官を殺害。金の半分を持って逃げようとしたキャットもパトリックに殺されてしまいます。結局最後に残ったのはジョシュ。彼はアイリスの知的能力をゼロにセットし直し、自殺を命じます。
その後アンドロイドの製造会社の従業員が2人現われ、アイリスを再起動。ジョシュはパトリックに従業員殺害し、アイリスを連れ戻すように命じます。そのため1人は片付けられてしまいます。ジョシュがパトリックとアイリスが仲間同士だと考えるようにリセットしていたため、現在のアイリスはパトリックを壊せません。その上パトリックが精神的に混乱し、自分で自分を破壊(自殺)。
生き残った方の従業員はアイリスが自分の行動を自分で制御できるようにします。その結果アイリスはジョシュを刺し、セルゲイの金をせしめて逃亡。
★ 勘違いへの誘い
いいように持ち主に使われていたロボットが自覚して、自分を助け、逃亡というのが全体の要約。ですが、アイリスが女性で、ジョシュのおもちゃにされている状況から自覚を持って自立する映画だと考えると迷路に入ってしまいます。
これを見て思い出したのがエクス・マキナ。あちらではストーリーはここまでエスカレートしませんが、その前哨戦のような話なので、エクス・マキナを見た後こちらを見ると、なるほどと思います。
エクス・マキナもそうですが、この作品が表現しているのも人間がロボットをこういう風に使っているんだ、つまり人間にはこういう願望があるんだという話。自由自在に使える奴隷を自分の物にしたいという願望が表現されています。
それでいて本物の人間の奴隷と違うのは、あくまでもアンドロイドはロボットである点。製造物です。なので人間の奴隷が酷い目に遭っている時に感じる同情心とは次元が違います。アイリスはいわば動くダッチワイフ。仮に人間が良からぬ欲望を持ったとしても相手が誘拐されて囚われている年端も行かない人間の少女である場合と、工場が製造した物品である場合では、モラルの点で大きな違いが生じます。
突き詰めると宗教問題になりかねませんが、人間には良い面と悪い面があり、悪い面とどういう風に付き合って行くかを理解し、対策が無いと住みにくい社会になります。戦後どんどんでたらめになって行った西側社会はそろそろこのあたりを考え直す時期に来ています。
★ 時代に取り残されたロボット3原則 - アシモフは75年で時代遅れになったか
アイザック・アシモフという1920年にソ連で生まれ、米国に移住した、学者兼作家がロボットをテーマにしたSF小説をいくつか書いています。その中にロボット3原則というのが出て来ます。
第1条 人間に対する殺人、傷害禁止。危険が予測出来たら見逃しもダメ。
第2条 人間の命令に従う。その命令に従うと、人間に危害が及ぶ場合は例外となる。
第3条 1条と2条に抵触しない場合は自殺禁止。
この原則を知って映画を見ている人は「アイリスがセルゲイを殺すのは命令違反だ」と思います。第2条通りジョシュがアイリスにセルゲイを殺せと命じているわけですが、「ジョシュの命令に従うと、人間のセルゲイが死ぬ」わけなので、やってはダメなはずでした。後半、パトリックが混乱した結果自分で自分を破壊しますが、これは3条違反。
この監督は確信犯だ。
★ ダンスのシーンは楽しい
まだ殺人が起きる前、6人はパーティーをやってダンスをします。このシーンは感じが良く、俳優のダンスもなかなかいいです。
凄惨な殺人事件の物語ですが、明るいシーンが多く、見終わって嫌な気持ちになることはありません。
★ クウェイド家の余談
ジョシュを演じているのはデニス・クウェイドの息子。デニスは10年ほど当時大スターだったメグ・ライアンと結婚していて、ジャック・クウェイドはその時に生まれた息子。
メグ・ライアンはデニス・クウェイドと安定した結婚生活。クウェイドはその間に麻薬中毒からも立ち直り、幸せな家庭を・・・という時に魔が差したのでしょうか、ライアンは同業者のラッセル・クロウと不倫。クウェイドにも問題が無かったわけではなく、離婚。その頃のジャック・クウェイドはまだ小学生。
不倫が祟ったのか、ライアンは徐々に人気が下降。出演作品も減って行きます。ところが最近、ライアンの出世作となった恋人たちの予感の有名なシーンのパロディーが大人気。当時の共演者ビリー・クリスタルも協力しています。
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