映画と音楽のページ
聞いた時期:20025年9月
★ しつこいトレイラー
ファンタでは長編が始まる前に数本トレイラーが上映され、本編上映開始とされている時刻より10分程度遅れて会場に入っても、本編はまだ始まっていません。
今回はいつもと違い、ファンタ中に上映される映画のトレイラーは無く、協賛の会社が間もなく出す映画、ネットフリックス、ゲームなどの宣伝のトレイラーだけが出ています。それを毎回長編の前にしつこく流すので、数回見ると飽きてしまい、わざと遅れて会場に入ろうかと思うぐらいでした。
まあ、私たちのようにコアな観客で、全部の映画を見る人の他に、個別の作品のティケットを買って、その日のその時間だけ見る観客もいるので、そこは私たちが理解を示さないといけないのでしょうが、毎日4~5本、全部で30本以上見る私たちはげんなり。
ところが日本のアニメ紹介のトレイラーがいい音楽を流したので突然注目。調べてみると米津玄師(げんしと書きますが、けんしと読ませるそうです)という作詞・作曲家が作っていて、曲のタイトルは Iris Out。この人、まだ34歳。とは言っても、すでに人生の半分ぐらいは音楽家として活動しているようです。
アニメ作品のタイトルはチェンソーマン レゼ篇と言うらしいです。日本を出てから、ん十年。国内にいた頃からテレビの無い生活をしていた私は、アニメのタイトルも、アニメ作家も、主題歌の作詞・作曲家も、歌手も全然知りませんでした。
★ メロディーにうまく乗る歌詞
なぜ私の耳を惹いたのかと言いますと、音楽のリズム、メロディーと、歌詞がよくマッチしていたためです。話し言葉として普通に話す言葉のメロディーが曲のメロディーにうまく乗って、とても自然に言葉が流れます。
似たような感じの音楽はつい最近、今年の夏頃にいくつか聞きました。そちらはアニメの主題歌とか、ポップスとして売り出したものではなく、普段は別な音楽をやっているらしき人が AI などを使って、社会風刺の曲を作ったものです。なので作詞・作曲家の名前も知りません。しかしスタイルは Iris Out と同じく、曲のメロディーと歌詞の調和が優れていました。ただ、こちらの歌詞は非常に政治色を帯びているので、CD として発売したり、テレビに出たりすることは無いと思います。
私は音楽を聴く時、歌詞の文章としての内容(意味)は全然頭に入らず、言語のメロディーと曲のメロディーやリズムがマッチしているかだけで聞いてしまいます。歌詞の内容がお伽話か、恋愛物か、政治風刺かなどは、たまに歌詞を読む機会があれば知ることになりますが、耳型のタイプの人間なもので、音だけに集中してしまう癖があります。Iris Out は男が文句たらたら言いながら、好きになってしまった女性のことを語るという内容でした。
後で調べてみると米津という人はすでにかなりの有名人で、いい賞をたくさんもらっているようです。その上世界的に有名になった、メダルを山ほど獲得したフィギュアスケートの選手の曲も担当したことがあるようでした。知らなかった!
★ 「新しいドイツの波」とは言っても古い話
この現象を見て気づいたのが、現在では昔話になってしまった「新しいドイツの波」。ドイツ語では「Neue Deutsche Welle / ノイエ・ドイッチェ・ヴェレ」と言い、日本語は直訳です。
ドイツで1976年から1980年頃大ヒットしたシンガー・ソングライターの動きで、当時そうとは知らずこの人たちの曲を聞き、それまでの、ドイツ語の言語のアクセントの位置やメロディーに逆らった作曲が主だった時代から脱し、革命的に新しい時代が来たと感じていました。
私が聞いたのは大勢のミュージッシャンの中のごく一部ですが、マックス・ゴルトとは直接会って、言葉を交わす幸運に恵まれました。この人は元々作家としての才能があって、たまたま音楽をやったような感じです。なので書く時に注意深く言葉を選ぶ癖があるのかもしれません。
もう1人注目したのはアンドレアス・ドーラウ。彼の曲のいくつかは私も口ずさむことがあります。この人は入念に言葉を選ぶというより、頭の中にメロディーごと流れて来たものをそのまま書いたというような印象の人です。
この人たちが作る曲は本当に曲のメロディー、リズムと、歌詞のアクセントの上がり下がりがマッチしていて、自然に一緒に歌うことができます。それまでのドイツのヒット曲は曲のメロディーに重きが置かれていて、そこに無理やりドイツ語を押し込む形が多く、親しみが持ちにくかったです。同じ時代の英語の曲にはあまりそういうのが無いのに、なぜドイツ語の曲はそうなってしまうんだろうと思っていました。そこにこういう人たちが登場し、私が渡独した頃はブームは去りつつあったのですが、曲が世間に大きく広がっていて、テレビを持っていない私にも聞く機会がありました。
日本の曲はジャンルに拠りますが、ダメ時代のドイツの曲よりは音と言葉が自然に流れるので、嫌いではありませんでしたが、上に書いた Iris Out や政治風刺の曲を聞いて、「おお、これだ!」と大感激しました。一過性にならず、このスタイルが長く続いてくれればと願っているところです。
ちなみにこのジャンルの曲は何と呼ばれているのだろうと思って検索してみたのですが、Jポップと呼ばれるそうで、あっちゃ~と思いました。優れた曲なのでもうちょっと気の利いた名前を付けたらいいのにと思いました。ですが、順調に若者の間で広がっているようなので、まあ、いいか。
PS: ドイツで起きた作曲術の変化はポップス、ロック系音楽界の革命的改善、改良だったと私は思うのですが、その視点でほめている記事は目にしたことがありません。
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