March.30,2001 また『ワンピース』からのアイデアが楽しい

        3ヶ月ごとのテレビ番組改変時期というのは、うかうかしていられない。2時間〜3時間枠で放送されるオムニバス・ドラマには、「おおっ!」という短編が紛れこんでいて、見逃せないのだ。特にフジテレビ系列。今年の正月だって『世にも奇妙な物語 SMAPの特別篇』というのがあって、SMAPの5人をそれぞれ主人公にした5本の短編を放送したのだが、中でも木村拓哉篇は『PARTY7』で大ブレイクした(まだ見てないんだよなあ。映画館いつ行っても満員)石井克人が脚本・演出した『BLACK ROOM』という珍品。ほとんど小劇場あたりで演る不条理劇。これを見せられたSMAPファン、キムタク・ファンはびっくりしただろうなあ。

        この春も、またまたフジテレビ、やってくれました。『学校の怪談 春の物の怪スペシャル』。今回は4本の短編で、ちょっと期待していたトリの黒沢清監督の『花子さん』が案外つまらなかった。不気味なムードが漂う気味の悪い作品ながら、よく分からない上、あまり怖くない。

        しかしです。今回は『ウォーターボーイズ』公開をひかえた矢口史靖監督の作品がトップを飾った。タイトルこそ『怪猫伝説』と、すごいタイトルがついているが見始めてハッとなった。これは、矢口史靖がビデオでやっている『ワンピース』の中の一編『猫田さん』のリメークなのだ。『ワンピース』は、このコーナーで以前にも書いたように、矢口史靖と鈴木卓爾がやっている[1シーン、1カット、1話完結]の短編ビデオ映画だ。最近までこのビデオは手に入りにくかったのだが、昨年末にDVDが出た。春コレクションと秋コレクションの2枚に分れているが、『猫田さん』は秋コレクションの最後に入っている。

        ちなみに去年も『学校の怪談 春の呪いスペシャル』を放映していて、やはり矢口監督は『ワンピース』の『暗室』と『LET`Sハルマゲ』を発展させた形で使っている。このことは去年の4月5日のこのコーナーで書いた。

        貧乏学生がアパートの一室で風邪をひいてコタツで寝ている。そこへ、女性がひとり飛び込んでくる。テレビ版では深津絵里。『ワンピース』では猫田直だった。「やっぱり手が使えると便利だわ」と言って、部屋を走りまわっている。この女性、貧乏学生の友達なのだが、主人公の前に座るとこう話しだす。「私、今は斉藤さんの格好をしてますけど、猫のミケです」(『ワンピース』版では「猫田ニャンです」)。「今、そこで斉藤さんとぶつかった瞬間に、私が斉藤さんの人格に入っちゃったんです」

        この猫は主人公の飼っている猫なのだが、こうして斉藤さんの格好をした猫は、キャット・フードが不味いとか、トイレの位置が気に入らないとか、あるいは主人公(猫は彼のことを親方と呼ぶ)への感謝の念を伝え、さらには、「親方、斉藤さんのこと好きなんでしょ。そんな煮え切らない態度してちゃダメよ」と言って『ワンピース』版では出て行ってしまう。するとすれ違いで人間に戻った斉藤さんが入ってきて、ふたりの関係が一歩前進したかのような展開でカット。

        この話、私、割と好きなんです。なんとなく、煮え切らない男の態度に業を煮やして、斉藤さんが一芝居打ったという解釈も成り立つ。

        さてテレビ版だと、このあとふたりが歩いていると、ケガをしてる三毛猫を預っているという手書きのポスターが電信柱に貼ってあるのを目にする。行ってみると確かに自分の飼っている猫。獣医のタマゴでもある主人公が手当てしてあげると、猫と斉藤さんの人格が元に戻る。そして橋の上での上手いラスト・シーン。いいねえ、いいねえ。『ワンピース』版もよかったけれど、こちらもまたいい。

        矢口監督は今回のオープニングとクロージングを飾る部分として、竹中直人と芝咲コウを使って、もう1本撮っているのだが、こちらも矢口監督らしい遊びに満ちていて楽しい。


March.21,2001 惚れたぜ、ラッセル・クロウ

        ラッセル・クロウって、あんまり記憶に残っていなくて、『クイック&デッド』とか『L.A.コンフィデンシャル』に出ていたよといわれて、「ああ、そういえば確かに出ていたなあ」と思い出すのがやっと。それが去年の『グラディエーター』で一気に記憶に残る男になった。カッコイイではないか! アカデミー賞の主演男優賞候補だぜ、あれで。

        その余韻が冷め遣らぬままに『プルーフ・オブ・ライフ』の登場だ。今回はプロの人質解放交渉人。交渉相手が南米のゲリラで、金目当ての誘拐というからタチが悪い。誘拐されたのはアメリカのダム建設技師(デイビッド・モース)。人里離れた山奥に監禁されている。さて、ここでプロのお手前拝見ときたところで、ダム建設会社がラッセル・クロウの所属する保険会社との契約を打ち切っていたことが発覚。ラッセル・クロウは手を引く形になってしまう。ところが、替わりの交渉人が胡散臭いと見たか、はたまた誘拐された技師の妻がとびっきりの美人のメグ・ライアンだったせいか、会社の契約無視で自ら交渉人を買ってでる。なんか無理あるけれど、カッコイイ!

        人質交渉は、無線連絡を通じて行われるが、このへんは少々かったるい。ラッセル・クロウ側の動きがあまりなく、身代金の額の交渉に終始するからで、アクション映画好きとしては、むしろ人質になってしまったデイビッド・モースがなんとか脱出しようとするサスペンスに目がいってしまう。

        なにしろ保険が下りないのだから、個人の資産内で交渉するしかない。200万ドルの要求を60万ドルまで下げたところで、相手からの連絡が途絶える。さあこれからが、この映画の見せ場。こうなったら強行手段しかないと見て取ったラッセル・クロウが仲間数人と敵地に奇襲をかけて、人質を強行奪回に出る。この奇襲作戦の様子が実にリアル。水野さん、後藤くん、エアガンでの戦争ゲームのお手本みたいな作戦ですぞ!

        この救出作戦の詳細なカット割りは、ちょっと今までの映画になかったくらい見事。状態がよく分かるもの。そうそう、やっぱりラッセル・クロウは肉体を使って闘う男でなくちゃ。『グラディエイター』でも、闘技場に投げ出された彼は、同じ立場の仲間と戦闘のためのフォーメンションを指揮する冷静な役割を演じるが、ここでも、彼の戦闘指揮官のリーダー・シップぶりは見事。実に頼りになる男なのだよ、ラッセル・クロウが演ると。

        例えば、アーノルド・シュワルツネッガーとかシルベスター・スタローンが演ると、頭は二の次。とにかく、見ていると無茶としか思えない作戦で出て行って、相手を皆殺し―――って具合でしょ。ラッセル・クロウだと頭のいい指揮官でもあり、しかも闘うとなると強いってイメージになる。これですよ、これ。これからのアクション映画はこれでなくちゃ。計算された作戦に裏打ちされた闘い。これぞリアル、これぞ頼れる男ってもんでしょ!

        メグ・ライアンに惚れて無償で交渉人を引きうけたようなところもあるけれど、所詮彼女は人の妻。解放された技師と去って行くメグ・ライアンをそっと見送るラッセル・クロウの後姿の哀愁漂う姿がまたカッコイイ! 

        それにしても、デイビッド・モース、8ヶ月も山奥で人質に取られて、碌な食べ物も与えられなかったという設定なのに、最後まで丸々としていたのは・・・ハハハ。


March.14,2001 この映画には、やっぱり無理がある

        中国には北京と南京があり、そして日本には東京(トンキン)がある。でも何故か西京は何処にも無い―――何のこっちゃ。香港映画が東京を舞台に映画を撮った。それが、『東京攻略』

        一昨年の東京ファンタステッイク映画祭で、イーキン・チェンが『風雲 ストームライダーズ』の舞台挨拶に立った際、「今、東京で映画を撮っているんです」と言っていたのがこれ。

        何だかその話を聞いたときから嫌な予感。トニー・レオン、イーキン・チェン、ケリー・チャンという売れっ子を使って東京での長期ロケ―――どう考えたって、そういう企画が先行して、後から脚本を無理矢理に書いたとしか思えないでしょ、こういうの。

        映画はいきなり、新宿の街を歩くレインコート姿のトニー・レオンをカメラが追うシーンから始まる。トニー・レオンの後をつける数人の男。やがて歌舞伎町の裏通り。突然襲いかかる男達。鮮やかな身のこなしで、相手を倒していく。最後に残った相手は、どうやら相撲取りくずれらしい。四股を踏んで、怒涛の突き! う〜ん、勘違いしているとしか思えないけど、いいか。サービス、サービス。形勢不利とみたトニー・レオン、レインコートをはだけると、裏に秘密兵器がズラリ。特殊スタンガンと強力接着剤であっさり相撲取りくずれを片付けると、涼しい顔で去って行く。このへんの呼吸、なかなか日本映画にない演出で、さすが香港アクションの蓄積を感じさせられる。

        一転、舞台はラスベガス。ウエディングドレス姿のケリー・チャン、教会で日本人の婚約者の到着を待っている。しかし、相手はついに現れない。一旦香港に戻って、東京に婚約者を捜しに行く準備を始める。そこに、新居の内装デザインをしたのに婚約者に金を払ってもらっていないというイーキン・チェンが現れ、一緒に東京行くことになる。―――ねっ、もうこのへんから無理がある。まあ、いろいろ細かいことは、あげつらう方が野暮だから、そのまま見つづける。

        婚約者の住んでいるマンションに行くと、そこは裳抜けのから。そして、ふたりに襲いかかる男達。そこへ、トニー・レオンが現れてふたりを救う。トニー・レオンは実は私立探偵。そこでふたりと一緒に、失踪した婚約者を捜すことになるが・・・。

        トニー・レオンの役柄が、幼くして日本にやってきた中国人と日本人のハーフという設定にしては、日本語がお粗末過ぎるのが興醒め。まあ、それでもいいか。それを言い出すと、アダルト・ビデオのスカウトマンがチンピラみたいだったり、街でティッシュ・ペーパーを配っている人が全てヤクザの息がかかった人だったり、東京国際フォーラムの中にスポーツジムのようなクラブがあったりと、もうヘンなことだらけ。有楽町でスケートボードでの追っかけがあると、いつのまにか新宿西口に続いているし、そこからトラックに飛び乗っての格闘シーンになると、一瞬にしてあたりはお台場。このへんもお決まりだけどね。

        そんなことはいいとして、致命的なのはやっぱり無理な脚本。日本を舞台に香港の俳優三人を使ってアクション映画を撮ろうという企画が無茶。なんとか辻褄を合わせようとして、話がどんどん複雑になっていってしまう。三人がそれぞれ違った顔を持っていて、果ては警察やらCIAやらが絡んでくるといった展開で、こっちも頭がこんがらがってくる。

        途中でもうストーリーを追うのは、ほとんど放棄。つるべ打ちのように続くアクションを楽しむのに専念しました。まあそれが、娯楽映画を見る正しい見方かもしれないのだけど、見終わって、なんだか疲れちゃった。


March.6,2001 ひとりになりたくて映画館に行ったというのに

        映画館に行くということは、私にとって、わずらわしい日常や人間関係から解放されたいという意味も多くある。それで週末になると映画館の暗がりにひとりで座っていることが多い。不健全かなあ。もっと他にいいことがありそうなものだとは思うのだが・・・。

        『キャスト・アウェイ』を上映している映画館。日曜午後3時すぎの入りは8割程度。私はひとりシートに座ると予告編を見始めた。前の席には若い男がひとり、コックリコックリとしている。「ははあ、眠いんだなあ」。でも、こういう事ってあるよね。せっかく映画館にお金を払って入ったのに、なぜか眠くなってしまうの。この人、予告編が終わって本編が始まった途端に身体を大きく左に傾けてしまって爆睡。

        トム・ハンクスが飛行機事故で無人島に漂流するまでが結構長い。いよいよトム・ハンクスが飛行機に乗るシーンの時に、空いていた私の隣の席に売店で買ってきたビールを片手の若い男が座る。さあ、いよいよ飛行機に故障が発生。墜落が始まる。この墜落シーンがなかなかの見物。ヒッチコックの『海外特派員』を思い出して、どうやって墜落シーンを撮るか興味深々。さすが現代の技術ですなあ。海面がグングン近づいてくる。着水と同時にコックピットに海水がドッと入ってくる。ゴムボートを掴んだトム・ハンクスが空気の入ったゴムボートに引っ張られるように浮上を開始。途中機体に引っかかって海底に引き摺りこまれそうになるサスペンス。海面に浮上。海面でまだ動いているジェット・エンジンに引きこまれそうになるサスペンス。このあたりのつるべ打ちのような展開、ロバート・ゼメキスお得意の、わざとらしくないCGの使い方。相変わらずいい仕事をしている。

        無人島への漂着。さあ、いよいよ無人島生活の始まりだ。ここで隣のビール片手男が私に話しかけてきた。「前置きが長すぎますよね」。それは私もそう思う。思わず返事しかけてしまった。しかし、ここで返事を返そうものなら上映中ずーっとこの男のお喋りに付合わなければならなくなる。第一、上映中の会話は他の人の迷惑だ。無視することにした。

        トム・ハンクスが島を歩き回り、この島が無人島であることに気がつく。隣のビール男が席を立つ。ホッとした。ちょっとどうしようかと困っていたのだ。男はほどなく席に戻ってきた。ビールのお代りを持って。また私に話しかけてくる。「映画って、監督が作るものですよね。私そう思うんですよ」(おいおい、そんな話、ここで始めるなよ)。「トム・ハンクスっていったら名優でしょ? アカデミー賞だって取っている。それをこういう使い方しかできないなんて、これは監督がヘタクソなんですよ」(わかった、わかった。だから少し黙っていてくれよ)。

        ココナッツを発見する。食料だ。ココナッツの殻を割るのに悪戦苦闘。道具の発明。火を熾すのに成功。魚を捕る技術の習得。漂流もののドラマの定番とも思える描写を丁寧に描いていく。ビール男が時々話しかけてくるのだが、無視を通していると立ちあがってまたロビーに出ていった。どうやらまたビールを買いに行ったらしい。参ったなあと思っていると、男はまたビールのお代りを手に戻ってくると、今度は別の席に。ホッ、よかった。今度は、その隣の人に何事か話しかけている。可哀想。映画は静かに見ましょうね。

        私の前に座っていた爆睡男は、1時間ほどしたところで突然目を覚ました。キョロキョロとあたりを見まわしている。しばらく考え事をしている風だったが、やがて出ていってしまった。長崎くんはつまらない映画だと眠りに行くそうだけど、そうだよなあ、1800円程度で都会で眠れるスペースって、映画館はうってつけかも。

        もうひとつ気になることがあった。前方で、ほとんど10分おきくらいに携帯電話の液晶画面を見つめている女性が何人かいる。もう、忘れろよ、携帯電話なんて。今、気分は無人島だろうが! そこへ着メロ音。女性がひとり携帯電話を片手にロビーに出ていった。あーあ、しらけるなあ。

        無人島からの脱出。そのあとにまた、いろいろと話は続くのだが、ネタばらしになるので書かない。『ホワット・ライズ・ビニース』でちょっとガッカリさせられた私だが、『フォレスト・ガンプ/一期一会』以来のロバート・ゼメキス、トム・ハンクスコンビ、このふたりが組むとやはり想像以上のものになるんですね。

        劇場を出ようとロビーを歩いていると、前のアベックの会話。男が女に話しかけている。「でもさあ、何で4年間も島を出ようとしなかったんだ?」 おいおい、ちゃんと映画を見ていたのかよ。帆になるものが手に入らなかったから脱出できなかったんじゃないか! あーあ。


March.1,2001 かったるい映画だよなあ

        長崎くんは確か、『シックス・センス』に仕掛けられた謎が、見ている途中でわかってしまったというようなことを言っていたと思うのだが、私は最後になるまでわからなかった口で、さすが長崎くんだなあと思った憶えがある。そんなこともあってM.ナイト・シャマランの新作『アンブレイカブル』は少々気合を入れて見に行った。

        ところが、当日ちょっと疲れが溜まっていたこともあって、予告編が終わって本編が始まった途端に、スーッと眠りに入ってしまった。何しろいきなりブルース・ウィリスが電車に乗っているシーンから始まるのだもの。電車のガタゴトいう音が気持ちよくて、気がついたら眠りの中。しばらくして気を取り直して見始めたのだが、『シックス・センス』同様に、なにやらかったるいシーンが多く、また眠くなってしまった。それでもなんとしても今回はだまされないぞと必死に睡魔と闘う。

        「絶対に死なない男の話かあ。不老不死テーマか? そうしでもないようだなあ」と思っていると、どうやらブルース・ウィリスは生まれながらにしてヒーローとして運命づけられた人生を与えられた男という話らしい。何これ? こ、こんなアイデアって、こんなにマジに撮るテーマかあ? アーノルド・シュワルツネッガーあたりを使って、もっとド派手にアクション活劇として撮れば、こんなバカバカしいアイデアでも面白くなるのになあ。

        ここまでネタを明かしてしまっても問題ないと思うから以上のことは書いてしまった。さて、ラストはどうなるのだろう。私は見ながらいろいろと想像力を働かしていた。だって、かったるいんだものこの映画。そしてラストシーン。いやあ、驚きましたね。こうくるとは思わなかった。でもね、こんなオチ(あえてオチと言わせてもらいますが)一般に通用すると思ったのだろうか? オタクでもなければ納得しないよ、こんなの。

        私の思ってたのは、ブルース・ウィリスがヒーローではなくて、実は大悪党だったという大ドンデン返し。駄目? これもまたオタクっぽいオチかなあ。

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