February.8,2004 中盤の「あっ!」という展開が見事!
香港ばかりか、アジア各地、そして世界でもセンセーションを巻き起こした『インファナル・アフェア』。日本でも絶賛されたことは言うまでもない。こんな美味しい話を香港が放って置くはずがない。やはり続編が作られた。輸入DVDを手に入れたものの、やはり評判がやはりあまり芳しくないので、観ようという気がなかなか起こらなかった。そうこうするうちに、香港では三作目も公開されたとかで、こちらの方は評判がいい。よし、二作目をチェックしておこう。
評判が今ひとつなのは、『インファナル・アフェアU』(Infernal AffairsU 無間道U)に、一作目の中心人物だったアンディ・ラウとトニー・レオンが出ていないことも大きな原因だろう。二作目は時代を遡り、ふたりの若い日の話になる。アンディ・ラウの役は、エディソン・チャン、トニー・レオンの役はショーン・ユであることは、一作目どおり。おそらく二作目を作る予定なしでスタートした企画だろうから、前作で若い日のふたりを他の俳優にチョイ役で演らせたのはうまいこと正解だったといえる。。
ただ、この二作目の中心になるのは、一作目の主人公ふたりというよりは、それぞれの上司の話にある。ファースト・シーンはこうだ。アンソニー・ウォン演じる刑事がタバコを燻らせながら話をしている。それは自分が警察官に成り立てのころの話。街でチンピラの抗争事件があり、駆けつけてみると、いくつもの死体が転がっている。中に腹にパイプを刺されて苦しがっている男がいた。もう助からないと思ったアンソニー・ウォンは、その男の頭に六発の銃弾を打ち込もうとしたのだが一発も当たらなかった。その男を次に見かけたときには、いっぱしのヤクザになっていたという話。カメラが回ると、そこは警察の取調室のようなところ。テーブルの反対側にはエリック・ツァンがいて、テイク・アウトの料理をいっぱい広げて食べている。アンソニー・ウォンの話にニヤニヤと笑っている。一作目にも同じようなシーンがあったので、思わずこちらもニヤリとする場面だ。どうやら、アンソニー・ウォンが殺そうとした相手というのが、このエリック・ツァンなのではないかと想像されるシーンだ。
このあと、エリック・ツァンは情婦カリーナ・ラウと一緒にクルマで去って行き、次は黒社会のボスが何者かによって射殺されるシーンがある。そしてタイトル。
二作目の中心人物はアンソニー・ウォンとエリック・ツァンと書いたが、実はこの映画、ン・ジャンユー(別名フランシス・ン)を中心にして展開するといっていい。ン・ジャンユーは冒頭で殺された黒社会のボスの息子。跡目を相続することになる。その下にエリック・ツァンもいるといった構成。
ン・ジャンユーは、造反しようとしている四人組(ビッグ・フオー)の引き締め工作を行う一方で、父を殺した犯人を捜すぺく、調査させている。
物語が大きく動くのが中盤。それこそ目もくらむ展開になる。このへんがアンドリユー・ラウの確かな手腕。ン・ジャンユーは部下のエリック・ツァンに、コカインのタイ密輸ルートを任せると言い出す。さっそくタイに飛ぶエリック・ツァン。一作目でダメなチンピラを演ったチャップマン・トーも、この時代からダメ男。観光旅行気分でエリック・ツァンのお供だ。エリック・ツァンがタイへ行こうとしていると知った情婦のカリーナ・ラウは、引きとめようとするが失敗。再度タイの取引先に向かうエリック・ツァンに電話をする。「ボス(ン・ジャンユーの父)を殺したのは私なの」 とたんに緊張が走るエリック・ツァン。取引相手に合った途端に相手を殺す。自分が殺されに来たということを察したのだ。一方、香港では、造反したビック・フォーが殺されていく。ある者は射殺、ある者は火をかけられ、ある者は生き埋め、ある者はマッサージ嬢に窒息させられる。これらの五つの殺しのシーンがフラッシュ・バックのように挿入されるところは圧巻!!
これらのことが起こっている時間に、ン・ジャンユーは南米のコカイン業者と取引に向かう。その情報を垂れ込みによってキャッチしたアンソニー・ウォンの同僚フー・ジュンは、隊を引き連れて現場へ急行する。ところが逮捕してみると、ン・ジャンユーの合っていた相手は南米の密輸業者ではなく、私立探偵。私立探偵から渡されたのは一本のビデオテープ。それには、アンソニー・ウォンとカリーナ・ラウが密会している場面が写っており、カリーナ・ラウにボス(ン・ジャンユーの父)を殺すように言ったのはアンソニー・ウォンだったということがわかってしまっている。警察官が殺人を共謀したということがバレてしまったのだ。このためにアンソニー・ウォンは査問にかけられることになる。すべてはン・ジャンユーの仕掛けた罠だったのだ。
一方、誤認逮捕で釈放されたン・ジャンユーの粛清が始まる。自分の父を殺した部下を射殺し、垂れ込みをしていた部下を射殺し、アンソニー・ウォンの自動車に爆弾を仕掛け、カリーナ・ラウには暗殺者を向かわせる・・・・・。
香港に戻ったエリック・ツァンは、タイで大きく成長していた。ラスト・シーンはエリック・ツァンとン・ジャンユーの対決となる。ここがまた名シーンといえるところで、これ以降、エリック・ツァンとアンソニー・ウォンは深い運命共同体のような関係になることが匂ってくる。それがなぜ一作目のような憎しみ合うような関係になっていったのか、興味が尽きない。
確かにあの大傑作である一作目に比べると物足りなくはあるかも知れない。しかし、さすがにアンドリュー・ラウである。これはこれで面白い。アラン・マックの脚本も一作目ほどではないにしろ、うまく書けていると言っていいだろう。
さあ、三作目が楽しみになってきたぞう。