October.29,2004 矢口節快調
矢口史靖監督の映画は『ひみつの花園』以来、必ず映画館で観るようにしている。まず失望することがないから大丈夫。『スウィングガールズ』は興行的にもヒットしたらしく、私の入った銀座の映画館は二週目というのに満員。ずーっと矢口ファンだった私はうれしい。
今回の『スウィングガールズ』も期待どおりの出来だった。前作が『ウォーターボーイズ』で、男子高校生がシンクロナイズドスイミングをやるという話だったのが、今度は女子高校生がビッグバンド・ジャズをやるという話。同じような題材が続いたので、これは二番煎じになってしまうのでないかと思ったのだが、それは杞憂だった。まったくの別のアプローチから作られている。
『ウォーターボーイズ』もヒットして、のちにテレビドラマになったが、こちらはアイデアだけ貰ったもので、矢口テイストはまったく無くなっていたと言っていい。ほとんど笑えないドラマだった。フジテレビは盛んに特番まで組んで、役者たちが水泳やシンクロの特訓を受けているところを流していたが、なんだかスポ根もののような捉え方なので、嫌になってしまった。
『スウィングガールズ』を観てホッとするのは、矢口史靖節が相変わらず快調なところ。ビッグバンドジャズをやろうとする女の子たちは決して最初は演りたくて演るのではない。夏の補習授業が嫌で、野球を応援に行ったブラスバンド部員にお弁当を届けに行くという名目で授業を抜け出す数人の女子高生。補習を受けているということからもわかるように、この連中、どちらかというと劣等性。電車に乗って届けるのだが車中で「こんなにたくさんあるんだから、ひとつくらい食べちゃったってわからないよ」とばかりパクつく始末。果ては降りるべき駅を乗り過ごし、次の駅から歩いて球場へ。途中、田んぼに落ちて弁当は水浸し。それでも平気で届けるのだから根性が座っている。その弁当を食べたブラスバンド部員は全員食中毒。応援が出来なくなったブラスバンド部員の代わりに、落ちこぼれ女子高生が少人数でできるビッグバンド編成のバンドをやらされることに・・・・・。ところが、なにせ落ちこぼれ集団だから、まともに楽器に取り組もうという気もない。笑いをふんだんに盛り込んで、飽きさせることなく物語を進めていく。
実は私は、中学時代は水泳部、高校時代はブラスバンド部という青春を過ごしてきたので、この矢口監督の二本の映画の繋がりは人事でない。「わかる、わかる」というところがたくさんある。ジャズの後打ちのリズムを体験でものにしていくところ。トランペットの一番高い音がなかなか出せないで、ある瞬間に偶然にその音が出せるようになるところ。そうなんだよねと実感する。最後の演奏会でトランペットの女の子がネズミのマスコットをしているのを観て涙が出てしまうのは、金管楽器の経験がある者だけのものかもしれない。
『ウォーターボーイズ』のときは、やや演技が臭い気がした竹中直人も、今回の実際は演奏できないのにジャズの知識だけはある先生役で、これがバツグンにいい。
「えっ、これで1時間45分?」というくらい短く感じた。肩の力を抜いて気軽に笑って楽しめる映画。こんな映画を作れる矢口史靖って、やっぱり只者じゃない。
October.3,2004 再びアンジェリカ・リーにぞっこん
すでにベルリンさんがベルリン・ファンタで観ている『救命』(Koma)ですが、私は輸入DVDで観たのが、ベルリンさんよりもあとになってしまいました。秋葉原のショップで入手して、しばらく放っておいたのですが、いざ観ようとしてプレイヤーに入れたらば再生が出来ない。よく見ると、地域コードが2になっている。確か、ショップではそんなことわりは言っていなかった気がするのだが・・・・・。普通だったら、返品に行くとか泣き寝入りしてしまうところだが、まーったく心配ない!! この春に入手した中国製の格安DVDプレイヤーを引っ張り出してきた。このDVDプレイヤーは地域コード関係なく何でも観られるという魔法のような機械なのだ。しかも映りも悪くない。ただ難点は、機械にウインドウの類が一切なく、時間表示やチャプター表示が見られないこと。しかし贅沢は言っていられないもんね。なにしろ数千円で買ったものだから。
詳しいことはベルリンさんが書いてくれているので、私は簡単な感想だけ。そりゃあ期待しましたよ。なんといっても、主演があの『the EYE【アイ】』(見鬼)のアンジェリカ・リー(李心潔)ですもん。私は2年前に観て、興奮して書いている。『救命』のジャケットでいうと右側の女優さん。目が大きくて、本当に綺麗な女優さんだ。今回もホラー・サスペンスものとあって、恐怖に怯えた表情などもあるが、冒頭の友人の結婚式に出席して楽しそうな表情を見せていたり、怒り狂うシーンがあったりと、どのシーンでも最高に綺麗だ。大きな感情を出すのも上手いが、心の微妙な揺れを顔にチラリと出すのも上手く、ひたすらうっとりと眺めてしまった。
もうひとりが、かの『カルマ』(異度空間)のカリーナ・ラム(林嘉欣)。こちらも私が胸キュンになってしまった女の子。このふたりを、やはり『カルマ』のロー・チーリョン監督が撮るんだもの、期待するなというのが酷。ただ、カリーナ・ラムの方は例によって、ややぶっきらぼうな演技。ややワンパターンになってきているのが気になるのだが・・・・・。
このふたりが実はひとりの男性(アンディ・ホイ)との三角関係にあることが観客に知らされるところから、話がどんどん重たくなっていってしまう。この男性がまた実にいい加減で嫌な男で、金持ちだが腎臓病を患っているアンジェリカ・リーと婚約しながら、貧乏の上、悲惨な家庭事情のどん底にあるカリーナ・ラムとは肉体関係を続けているという設定。いったい、こんな男を好きになる女性の気が知れないのだが(笑)。
カリーナ・ラムが、相手構わず襲って腎臓を摘出して奪ってしまう腎臓摘出魔で、どうやらその腎臓を闇ルートで売りさばいているらしいというのが、かなり異常。異様なムードの漂う映画ですが、観終わってみると、タイトルの『救命』という言葉の意味が突然にわかる仕掛けになっていて、後味は悪くないという不思議な作品に仕上がっています。アンジェリカ・リーを観ているだけで、私は幸せでしたが(笑)。