September.26,2002 『サイン』 なんじゃこりゃ!?

        ナガサキくんは、さすがに自分でも脚本を書いたりするからだろうか、『シックス・センス』に仕掛けられた構成を、映画が始まってすぐに気がついたそうだが、私は結構最後の方まで気がつかなかった。ただ、そんな手の込んだことをやることによって、仕掛けに気がつかない観客には話がモタモタしている印象になってしまったし、気がついた人は、「何をいつまで・・・」という気になったのではないだろうか。

        そんなシャマラン監督の次の作品『アンブレイカブル』は、ほとんどの人が構成が読めなかったのではないだろうか? だって最後にきて、「そりゃ、無いだろう?」という話。これじゃあ、ほとんど映画マニアの作ったインディーズ映画の結末みたいな真相。あきれ返ったのを通り越して、怒りすら生まれてきた。「こっ、こんなものを見るために2時間程度を過ごしたのか」といった感じだった。

        ところが世間では、シャマラン監督の評価は高いらしいというのが理解できない。それなら止せばいいと言われそうだが、またノコノコとシャマラン監督の新作『サイン』を見にいってしまったのは、他に見たいと思った映画が上映されていなかったからでもあるが、例によって、この手のSFもの、サスペンスものには目が無いからだろう。そして今回も失望してしまった。この映画のことは書かないでおこうと思ったのだが、数日が経つうちに、どうも頭のなかでモヤモヤとして腹の虫が治まらないので、思いきって書く。

以下、ネタをバラします。まだ『サイン』を見ていない人は注意!!

        グラハム(メル・ギブスン)は、死んだ妻との間に出来た子供モーガン、ボーと、そしてグラハムの弟メリル(ホアキン・フェニックス)と一緒に、田舎のトウモロコシ畑の近くの家に住んでいる。ある朝、起きてみるとトウモロコシ畑にはミステリー・サークルができている。これは何者のしわざだろうかという疑問が沸く。テレビでは、世界各地で同じような現象が起きていると報道しており、宇宙人のしわざではないかというウワサがたっている。そんなおり、グラハムは夜中、畑の中で何者かを目撃する。

        宇宙人のしわざかも知れないと見せたところで、こっちは、これはそうではないだろうと思う。宇宙人とみせかけて実は・・・というのが話だろうというのが、この手の映画の醍醐味だろう。まさか本当に宇宙人だったら笑っちゃうなと思っていると、これが本当に宇宙人なのである。本当に宇宙人だったと知らされた瞬間に、ちょっと引いてしまった。

        宇宙人の乗った宇宙船が、世界各地の上空に飛来する。世界中はパニックをきたしているらしい。しかし、地球側は何もしない。こんな不自然なことってあるかあ? この宇宙人が友好的なのか好戦的なのかもわからない。しかしなんらかの処置はするだろうに。

        どうもこの宇宙人は地球を襲いにやってきたらしいと判明する。各国の軍隊は何をやっているのだろう。映画を見ている限り、なーんにもしないのである。

        宇宙人がいよいよ襲ってくる。それがなぜか人類を食料にする目的というのがヘン。何でえ? 

        この宇宙人、何の武器も持っていない。ただ丸腰のまんま地上にやってくる。宇宙船を作る技術があるような宇宙人が、何も持たず、裸のまんまの姿で、人類を食料にしようとしてやってくる。観客は夢中で見ているようなのだが、私は苦笑を浮かべるしかなかった。

        そして、この宇宙人、弱っちいのである。前半で出てきたやつはすばやい動きだったようなのだが、最後にグラハムの一家を襲いにきたやつは動きがのろい。メリルが昔、野球をやっていてバットを壁にかけてあるという伏線は、その会話を聞いた瞬間に、「あっ、これはあとで使うな」とわかってしまった。それでいよいよバットの登場だ。このバットで、いとも簡単に宇宙人は撲殺されてしまう。おいおい。

        伏線といえば、水のことがある。獣医が、「どうも宇宙人は水が嫌いらしいから、湖の近くに避難する」とクルマで去っていく。一方、娘のボーが部屋中に飲みかけの水のグラスを置く。これで宇宙人の弱点がわからないという方がおかしい。

        さあて、遅まきながら宇宙人の弱点が水だとわかる。なんとだらしない宇宙人だこと! それなのに、水に濡れないようにと何か身にまとうという知恵もないのか!?この宇宙人は!! だいたい雨にでも降られたらイチコロだということもわからなかったのだろうか? 地球は水だらけの惑星である。空気中だって湿気というものがある。そこで動き回るというのがおかしい。トウモロコシ畑だって地面は少し濡れているところだってあるだろうに、それを裸足で歩いてんだよ!?

        この映画を持ち上げている評論家なんて、もう信じない。


September.13,2002 大きな目が美しいアンジェリカ・リーのホラー映画

        あんまり日本では公開されないが、香港の人ってホラー映画が大好きらしい。この夏に大ヒットした『見鬼』(The Eye)は、日本公開も決定したようだし、ベルリンさんもベルリン・ファンタで見たようで、そちらの感想も聞きたいところ。ふふふ、実は私も輸入DVDで一足早く見てしまった。



        2歳にして失明してしまったマンという若い女性が、この映画のヒロイン。20歳になったときに角膜の移植手術を受け、目が見えるようになる。しかし、初めて見る視界は、どうもおかしい。普通の人には見えないものまでが見えてしまう。浮かばれずに現世をさまよう幽霊、死んだばかりの魂(横に霊界への案内人がついている)、そして、これから死を目前にした人を予知してしまう能力まで備わってしまっていた。マンはこの角膜の元の持ち主を捜しにタイまで行くことになるが・・・。

        マンが病院で手術を受け、夜中に初めておばあさんの霊と遭遇するところからホラーになっていくが、これが結構怖い。テレビの画面で見ているだけでも、夜中にひとりで見ていたせいもあって、ドキドキしてしまった。退院してから、習字の塾で遭遇する幽霊、食堂で子供を抱いた幽霊など、映画館で見たらもっと怖かっただろうと思われる。最初はただひたすら怖いという感じなのだが、ようするにさまよっている幽霊だとわかってくるあたりから、それほど怖さは無くなってくる。

        監督が、タイであの『タイムリセット 運命からの逃走』を撮ったオキサイド・パンと、その双子の兄弟のダニー・パンの共同監督。『運命からの逃走』はNHKで放送されたのを見て興奮してしまって、このコーナーの2000年1月に書いた。その後、評判がよかったらしく映画館でも上映された。タイで映画を撮っている香港人という不思議なスタンスにある人で、クライマックスになるタイの描写はさすが。

        もっとも、私が心を惹かれたのは、やっぱりヒロインのアンジェリカ・リー(李心潔)。目の大きなきれいな女優さんだ。今回、この人を初めて見たのだが、すっかりファンになってしまった。ポスターの写真が、きれいな彼女を写していないのが残念。映画館で上映されたら是非見てもらいたい女優さんです。


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