August.7,2005 西郷さん眉毛のエリック・ツァン

        商売人バリー・ウォンが『インファナル・アフェア』(無間道)の1作目が公開された半年後に発表したのが、『ブラック・シティ黒白森林』(Colour of the Truth)。アンソニー・ウォンを『インファナル・アフェア』の刑事役そのままのイメージで使って1本撮りあげてしまったその強引さには舌を巻いたものだ。この映画については2003年12月に書いた。そうしたら今年になってバリー・ウォンは、さらに『黒白戦場』(Colour of the Loyalty)なる、続編のようなものを出してきた。ビリー・チャンとの共同監督作品。



        このジャケットを見た瞬間、エリック・ツァンの西郷隆盛のようなぶっとい眉毛のメイクに笑い出してしまった。どうしちっゃたの? エリック・ツァンといえば、どちらかといえば貧弱な眉毛の持ち主。それがこれですからねえ。そうなんだなあ、つまりバリー・ウォンは『黒白森林』でアンソニー・ウォンを『インファナル・アフェア』から抜け出してきたような刑事役で使い、今度はエリック・ツァンを『インファナル・アフェア』から抜け出してきた黒社会のボスとして使ったらしい。それにしてもあの眉毛!(笑)



        タイトルのあとに映るのは、またもや警察の取調室。やっぱり『インファナル・アフェア』じゃん(笑)。当然持ち帰り弁当を食べている・・・・・のだが、今回は食べているのは刑事の方(ラム・シュー)。葉巻を遠慮なく燻らせているのが黒社会のボスであるエリック・ツァンの方だ。ここでラム・シューは、誰かが殺し屋を雇って、エリック・ツァンの命を狙っているという情報を得たという話をする。エリック・ツァンは、それなら警察が護衛してくれないかと切り出す。この展開は『ブラック・シティ黒白森林』の方だと、やはり黒社会のボス(パトリック・ツェー)が命を狙われて、刑事たちが身辺警護するというのと同じになるのだが、大きく違ってしまうのは、『黒白戦場』では警察側がこれを拒否すること。

        エリック・ツァンは用心のいいボス。こんな日も来るかと思い、こっそりと自分の警護専門に当たらせるべく表向きは雑貨屋を営んでいるリュー・カイチーを子飼いにしていて、彼の元を訪ねる。リュー・カイチーはショーン・ユーら腕利きの若者をこの日ために育てていたのだ。むむむむむ。『インファナル・アフェア』では若き日の潜入捜査官役をやっていたショーン・ユーをこういう役柄に持ってくるとは、バリー・ウォンっていう人はなんて計算高いんだろう。

        エリック・ツァンは1億2千万ドルもの資産を持っていて、どうやらそれを狙われているらしい。エリック・ツァンは引退を表明。跡目は息子に引き渡すと宣言し、それと同時に奥さんと離婚して、お手伝いさんのスーキー・クワン(トヨタホームのCMに出ている筒井真理子に似ていると思うのは私だけだろうか?)とヨーロッパに移住しよう画策する。自分を殺そうとしているのは配下のロイ・チェンたちに違いないと思い、彼らの出方を待つ・・・・・って、これ『インファナル・アフェアU 無間序曲』となんとなく似てません? 『インフアナル・アフェアU 無間序曲』ではロイ・チェンは潜入捜査官だということがバレてあっさりと殺されてしまうが、今回はカンフーの達人という設定。少しはいいところがある役をもらえた。

        まあ、バリー・ウォンですから、サービスてんこ盛り。ラストもなんとなく想像してた通りの展開ですなあ。作品としての深みはあまりないが、まあ観ていて損はないといったところですか。     


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