オオカミは嘘をつく(Big Bad Wolves) 2015年7月16日 新文芸坐 ベルリンさんも、2013年のファンタで観ているようです。 ベルリンさんによれば、これはコメディという触れ込みだったようだが、私もベルリンさんと同意見で、ひとつも笑えない。これはかなり観るのに覚悟かいる映画だったことに途中から気が付いた。 クエンティン・タランティーノが絶賛したらしい。それで思い出したのは、タランティーノの第一作『レザボア・ドッグス』を観に行ったときのこと。途中にかなり痛さを感じるシーンがあって、私でさえ目を背けそうになったが、前の方で観ていた老夫婦が立ち上がって出て行ってしまうのを目撃した。そんなわけだから、この映画をタランティーノが褒めるのも解る気がする。 タイトルシーンはかわいい少女が森の中で遊んでいるところ。しかし不安げなBGMが、これは何か起こるなという予感を感じさせる。タイトルバックが終ると、どこかの廃ビルのようなところ。善良そうな男を数人の男たちが連れ込んでリンチが始まる。マフィアかなんかが、口を割らせようとしているのかと思ったら、男たちは全員刑事たち。連続少女殺人事件の容疑者が口を割らないので、大勢で殴る蹴るの暴行を働いているのだ。 それでも口を割らない容疑者。仕方なくまた泳がせることにするのだが、なかにどうしてもこいつが犯人だと信じて疑わない刑事がいて、再び捕まえて拳銃で脅して自白を取ろうとする。ところがこの男をマークしているのは別にもうひとりいた。娘を殺された父親。この父親もこの容疑者が犯人だと信じ込んでいる。そしてふたりして容疑者を地下室に監禁して拷問が始まる。 この拷問シーン、かなりキツい。アメリカ映画ではまず考えられないほどのレベルだし、日本映画でもこんなに痛さを感じる拷問シーンはちょっと思いつかない。そう言う意味からすれば、これは残酷ホラー。 コメディと言えるシーンといえば、拷問の間に実に楽しそうな音楽がかかり、ケーキ作りが始まってしまうところか。この嬉々としてケーキを作るシーンのあとでまた拷問シーンに突入してしまうんだから、観る側の心はかなり揺さぶられる。 容疑者の男は、どっから見ても、そんな残忍な犯人には見えず、なんだか一方にいたぶられているだけのようにしか見えない。もしこの男が犯人でないとしたらどうするんだという気がしてくる。話はこのあと、被害者の父親の父親。つまり被害者のおじいさんが出てきて、とんでもないことになっていくのだが、思わせぶりなシーンが、あとから効いて来たりして、その辺はうまく作っているなと思う。 R18+なのは、この拷問シーンのためなんだろうけれど、エグすぎてもう二度と観たくないと思う人は多いだろう。この手の話、韓国映画だと娘を殺された父親が感情を丸出しにしてくるところだが、このイスラエル映画、感情をあまり出さずに淡々と拷問を加えていく。国民性というのもあるのだろうが、どっとが怖いかというと・・・。 7月17日記 静かなお喋り 7月16日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |