皇帝の正しくないチェス

2002 全国大会 10R


はじめに

 10Rのお相手は、ベテランのHさん。選手権の予選には全国を行脚するというお方。

 ということで、これまであちこちで対決しておりまして、対戦成績は私の2勝2分!この相性の良さを活かして、負けたくないところです。

 私の妙な定跡にHさんが幻惑されての結果だとは思うのですが・・・。

棋譜解説

[Event "Zenkoku Taikai"]
[Site "PIO"]
[Date "2001.05.03"]
[Round "10"]
[White "anon-emperor"]
[Black "E.H"]
[Result "1/2-1/2"]

   
1 e4 c5
2 Nc3 Nc6
3 f4 e6
4 Nf3 d5(図−1)
図−1
【図−1】

 Hさん、白の1.e4に対しては、シシリアン・ナイドルフの使い手なのですが、私の初手 1.e4を見たHさんは何故か長考(2〜3分)。
 以前にも私にグランプリ・アタックで負かされたことは覚えていることでしょう。「どうすんかなー」と思っていたら、1. ... c5 でシシリアン。3.f4でグランプリ・アタックに突入です。

 ところが!さすがはHさん!!グランプリ対策を密かに練っていたようです。初手の長考(2〜3分)は手順の確認か!?
 4. ... d5は Delayed French set-up と呼ばれる、有効なグランプリ対策の一つです。私もとりあえずは知っているラインですが・・・。

             
5 Bb5 d4?!
6 Bxc6+ bxc6
7 Ne2 d3
8 Nc3 b6
9 b3 Qa5(図−2)
図−2
【図−2】

 5.Bb5は白の正しい応手ですが、黒は果敢に5. ... d4?!とポーンを突いてきました。
 通常は、5. ... Nf6として、白が6.Qe2あるいは6.e5とするようです。

 5. ... d4?!に対する応手としても、6.Bxc6+ bxc6 7.Ne2 は正しいのですが、7. ... d3は指しすぎの感。普通は7. ... Nf6 8.d3と進みます。

 8.Nc3は弱気でした。単純に8.cxd3とポーンを取っておけば良かったと思います。黒のcファイルのダブルポーンが明らかな弱点となって残ります。

 9. ... Qa5 はあまり良くありません。9. ... dxc2 10.Qxc2 Bd3 が面白い狙いで、序盤の形は黒有利となるところでした。

            
10 Ne5 dxc2
11 Qxc2 Qc7
12 d3 Bd6
13 Bb2 f6
14 Nf3 Bxf4
15 Na4 Bd6
16 0-0-0 Ne7
17 Nxc5 Bxc5
18 Qxc5 Qb6
19 Qc3 Qe3
20 Kb1 Rd8
21 Rhe1 Qb6
22Ka1 Rg6(図−3)
図−3
【図−3】

 10.Ne5 dxc2 11.Qxc2で、邪魔なd3のポーンを無くしました。12.d3とポーンを突いて、e4のポーンを守ります。

 12. ... Bd6でf4のポーンを狙われますが、そこは無視して白はcファイルのポーンを狙います。

 19. ... Qe3はちょっと意味がないように思えます。白の陣地にはクイーンが居座るような隙は無く、21.Rhe1と、手順にクイーンを追い払われてしまいました。

 黒には白マスビショップしかありませんから、22.Ka1 と黒マスに逃げ込みます。

   
23 d4 0-0
24 Ng5 Hxg6
25 Be3 Qb5
26 g3 Rfc8
27 Nd2 Qb4
28 Qc1 e5
29 Nc4? Bxc4
30 Bd2? Qb7?
31 Qxc4+ Qf7
32 Qc5 exd4
33 Qxd4(図−4)
図−4
【図−4】

 バックワード・ポーンであるd3が標的になっていますから、23.d4でこれを避けます。

 29.Nc4?は良くない手でした。29. ... Bxc4の後、30.bxc4ではキングが一気に危険になります。
 30.Bd2?はさらに危険で、30. ... Qb5 31.bxc4 Qa6 32.dxe5 Nxe5 33.Bf4となれば、黒有利の局面になります。

   
33 ... Ne5
34 Rf1 Qe6
35 Bf4 Qe7
36 Bxe5 fxe5
37 Qc4+ Kh8
38 Rf7 Qa3
39 Rdd7(図−5)
図−5
【図−5】

 34.Rf1として、ルークをオープンファイルに持っていきます。

 35.Bf4でルークに対してピンします。狙いはfファイルからルークを侵入することです。

 39.Rdd7でルークが2つとも敵陣に侵入!白優勢だぜ!と思うのですが・・・。

   
39 ... Rd8?
40 Kb1 Qa5
41 Qf1 Qb4
42 Qe2 Rxd7
43 Rxd7(最終図)
最終図
【最終図】

 図−5の時点で、一見すると白が優勢に見えるのですが、39. ... Rxb3とする手がありました。
 40.Qxb3 Qc1+ 41.Qb1 Qc3+ 42.Qb2 Qe1+ 43.Qb1 Qc3+と、連続チェックでドローでした。

 39. ... Rd8?で白が優勢なのですが、40.Kb1が弱気でした。何かの拍子にQc1#を食らうのが怖かったので(涙)。
 正着は40.Rxg7で、40. ... Rxd7 41.Rxd7で白の優勢が決定的となるところでした。

 しかしながら40手も過ぎて、お互いとも残り時間は5分前後となり、43.Rxd7と指したところで、ドローを提案しました。
 お互いにクイーンを残したままで、時間も無いしということです。