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|| 医院建築 設計のポイント ||

色々なドクターとの出会いがありました。
何度も打ち合わせを重ねて、様々な場面から得てきた知識、癒しの空間つくりのポイントをほんの少しですが、まとめてみました。

コンセプト

  ドクターの診療方針に基づくイメージをつくりだします。
医療活動において、機能性を充分に満たし、そのうえ、患者さんに対するサービス、患者さんが受け取る印象やイメージ(目に入るもの、耳に入る音、肌で感じるもの、匂いなど)を重視します。
それは、まちなみも考え、建物外観や看板、内装仕上材、音響効果、室名札、診察券や薬袋までを考慮し、全体的、総合的にコーディネイトしていきます。
 

計画の規模

  ドクターの診療方針は、計画する建物の規模に大きく関係してきます。診療科目により、おおよその採算目安とよばれる規模数値がありますが、診療内容、医師の人数、医療機器などでかなり差があります。

特に、各室の大きさは、一般的なマニュアル等では、安全側の大きさとなります。建物の面積が大きければ、それだけ診療内容も多くなりますが、建設費や維持費などの支出が増えてきます。ドクターとの打合せにより、可能な部分は、合理化、省スペース、コストダウンを図ります。これらを総合的に考えながら建物を計画していきます。
 

効率的な動線計画

  患者さん、カルテ、ドクター、スタッフと各々のつながりと移動を考えた動線の整理は、各室のレイアウト、医療機器のレイアウト、家具のレイアウトの重要なポイントとなります。
 
患者さん、ドクター、スタッフの動線はできるだけ分離し、ドクターの動きが最も合理的になるようなプランとし、患者さんは、受付・待合・診察・処置・検査・会計などの流れをスムースに行えるように計画し、患者さん同士がぶつからないように、移動距離をより短くします。また、スタッフが常に、患者さんの動きを把握できるように各室のレイアウトを考えます。例えば、受付から待合、玄関、トイレの入り口まで、患者さんの様子を視覚で追いかけられる配慮や、工夫は大切です。
 
音と照明にも
心を配ります
 
待合室や処置室でのBGMは、雰囲気づくりには効果的です。しかし、プライバシーは守らなければなりません。問診中の会話が外に聞こえたり、逆に、待合室にいる子供の泣き声などが診察室に聞こえてきたりでは考えものです。防音も充分に考えます。

照明については、診察中の患者さんに直接光があたらないような配慮や、眼科では、わざと明るさをおさえて、照明器具を選び、それに合わせて内装も、光があまり反射しない色合いの仕上材を使ったりと、いろいろ考えます。

 
医療機器の
設置への対応 
  最近では、大型の医療機器の導入が増えてきています。設計が始まるときには考慮すべき重要な要素の1つです。

レントゲン装置は、配置する方向、操作盤との位置関係、据え置きに必要なスペース、天井高、重量、X線防護のための鉛入りの壁や天井、内装下地、電気の容量、調光ができる照明器具など、設備や構造上の補強への対応が必要となります。

暗室では、自現機を使用するため、給排水の配管の位置、薬品を使うこと、フィルムの保管場所、換気などを考えます。

リハビリ用の機械などでも、電気の容量、コンセントの位置、重量、据え置くスペースを考えます。処置室には、特別重いベッド置いたり、オートクレーヴをどこに置くかなど、設計当初から必要な機器の検討をします。X線のデジタル化等、将来どのような形になっていくのかも考慮しながら、ドクターとメーカーとの打ち合わせを重ねて決めていきます。 
 
 受付は大きく
様変わりしています
  受付には、コピー機、レジスター、レセコン、パソコン、ファックス、電話など、所狭しと、OA機器が並んでいます。カルテ棚も電子カルテへと変わっています。
これからもOA化、情報のデジタル化は、ますます進んでいくと思われます。電気の容量、コンセントの位置、カルテの流れや、収納スペースなども合わせて、受付スペースは少しでも余裕をもって設計したいところです。
 
また、待合から受付カウンターを通して、カルテ棚などのごちゃごちゃが見えてしまうので、整理整頓しやすい収納の工夫が大切です。 
 
薬局の位置・安全管理
についても考えます
 

まず、薬局を院外とするか、院内に設けるかを早い時期にドクターに決めていただき、設計当初からの打ち合わせが必要です。調剤内容によっては、給排水の設備が必要になってきますし、薬棚の大きさや形状によってある程度のスペースが必要です。施錠も必要となる場合もあります。

ドクターからの処方箋の流れ、出来上がった薬の置き場所、会計など限られたスペースを有効に考えていき
ます。

分包機などを使うと粉が飛び散るので、換気扇や場合により集塵器が必要です。床に水や薬品がこぼれたりすることが考えられるので、床材は、それらに強く、かつ清掃しやすいものを選ぶことも大切です。

 

待合室に
求められているものは?

  患者さんが何らかの不安をもちながら待つ空間なので、緊張を少しでも和らげ、安心、信頼、親近、清潔などのイメージを抱かせる空間をつくります。

配置は、外部からのアプローチ、受付、トイレ、診察室との関係を考えます。そして、できるだけ自然光を取り入れる工夫をします。空気の循環(換気)も大切です。

タタミコーナーやマットを敷いてプレイコーナーをつくったり、待合ソファやスツールの座り心地や形状を考えたり、暖かい雰囲気つくりのため、床、壁、天井の仕上材を考え、明るく清潔なカラーコーディネートをします。BGMも雰囲気づくりには効果的です。
 
バリアフリー・トイレには
細かい気配りを
  玄関アプローチは、車椅子の利用を考え、スロープを設けた方が良いでしょう。必要な箇所には手すりや点字ブロックを設けます。基本的に、入口とフロアの段差は設けません。やむを得ない場合は、はっきりとわかるようにし、下足場所にベンチや手すりをもうけ、動作しやすように配慮します。玄関に入ったとき、乱雑なスリッパや靴を整理整頓ができる工夫も必要です。

トイレは待合室に隣接して配置しますが、患者とスタッフ用、男女用を別々に設けたいところですし、車椅子用も用意したいものです。衛生面を考え、トイレや手洗いを自動水栓としたり、ペーパータオルホルダーやエアータオルを設けます。使い勝手を考え、手すりを取り付けたり、緊急時のナースコール、赤ちゃんと一緒に入れたり、ちょっとした荷物を置く棚をつくったりもします。換気や防音にも気を使います。
 

エコロジーやシックハウス
への対策を

  近年、大気、河川、海洋汚染、熱帯雨林の破壊、オゾン層の破壊、地球温暖化などの諸問題が、『地球環境問題』とし250て、クローズアップされています。

オイルショック以降、産業分野を中心にエネルギーの利用効率化を進め、世界的にも最高水準を達成し、日本の建築は、高気密高断熱へと進化してきました。これによって省資源、省エネ化が進みましたが、世帯数や建築床面積の増加、電化製品の普及、大型化などにより、エネルギー消費は増加しています。

平成9年12月に採択された『京都議定書』では、2008年〜2012年までの平均排出量が、1990年比で、温室効果ガスの削減目標がマイナス6%と定められ、省エネルギー対策をより一層推進する必要があります。そして、生活上の利便性や快適性と、エネルギー使用の合理化を両立させなくてはなりません。断熱性の向上、設備機器の選定、配置、配管等にかかる設計の合理化を通じて、建築物においてエネルギーが効率的に利用されるように考えていきます。

また、私たちの生活の場である室内環境でも、近年、新築病やシックハウスという言葉がよく聞かれるようになりました。建材などに含まれるホルマリン、接着剤や印刷インクに含まれるVOC(揮発性有機化合物)などの化学物質による室内空気汚染が問題となります。高気密、高断熱へと進化してきた一方で、湿気や化学物質が室内にこもりやすい状態になったことも事実です。
その結果、室内の結露量が増えたり、化学物質による室内汚染で、人の健康に何らかの影響を及ぼしているように思われます。一般住宅では、『健康』が、住宅性能のひとつの基準に並べられるようになってきました。

室内の熱を逃がさない換気設備や、身体に害を与えると思われる建材の使用を避けることは不可欠ですが、それだけでは、人にとって健康な建物をつくるために、十分とはいえないと思います。
 設計や施工の過程で、ドクターと話し合い、アフターケアまで含めて考えていきます。人にとって健康であるということは、周りの環境にとっても良いものであると考えています。
 
スタッフルームや倉庫
のことも考えてください
  スタッフの仕事は、心身ともにストレスがかかるものです。そのため、最小限でも、休息のため、スタッフルームを確保しておきたいものです。専用の出入り口、トイレも用意したいところです。靴を脱いで、脚を伸ばせる畳敷きは好評です。

倉庫や収納スペースは、将来、カルテやレントゲンフィルムの保管、医学書籍などの収納場所が、必要となりますから、ある程度のスペースを確保しておいた方が良いでしょう。カルテ棚やフィルム棚が、処置室などに露出しているよりも倉庫などに収納できる方が、やはり整った印象を与えます。
 
建物のメンテナンスは
簡単なほうがいいです
  建物の内容上、病気の人が集まるところなので、衛生面や感染防止の面からも、床や水まわり部分の清掃は日常的にこまめに行わなければならないでしょう。

そうなると、建物のメンテナンス、掃除が簡単なことが必須です。待合室の壁も結構汚れます。素材、仕上材を配慮して考えます。
 
事をおこす前には
法規や規制の
チェックをします
  医院の建築にあたって、医療法や消防法関係の法規には従わなくてはなりません。
建築基準法でも一般の住宅よりも厳しいこともあるので、プラン段階から専門家に相談されることをおすすめします。
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