One Tube Super Reflex Radio 2020(Apr 30〜May 4. 2020)
はじめに
今年もOneTubeCompの季節がやってきた。昨年秋、公募の案内がFacebookの真空管無線機のサイトであり、早々に受信機部門のOneTubeと3Transistorの2部門にエントリーした。
ここではOneTube部門の製作について記すことにする(3Transistorは諸事情でその後棄権)。
さて今回のOneTubeだが、
昨年の6AW8Aスーパー・レフレックスラジオ
で満足行かなかった感度の向上を狙う。すなわち部品面の見直しと整合の改善による効果を期待。また、今冬に
スピーカーユニット交換
で出てきたFE103Σ/FOSTEXと以前から何かに使おうと思っていた贈答用日本酒の木箱(桐)の活用も併せ、ファミリーなラジオを考えた。
写真左は部品入れになっていた木箱。これ親父の米寿の祝いで長男一家から贈られたもの。そして右は38年前のバックロードホンキットYB-120(FOSTEX)から取り外した名機FE103Σ。コーンとエッジの接着が経年劣化で剥がれガサゴソ音。間に慎重に糊を塗り修復を試みている様子。
どんな回路に…
部品の改善に主眼を置いているので、基本的に大幅な回路変更は行っていない。敷いているなら、手持ち部品の関係で複同調のIFTは止め、単同調と非共振コイルのIFTを利用した。スピーカーはFE103を並列接続している。下図に全体の構成を書き出してみた。
アンテナコイルはフェライトコアに巻いたQ=400(最大)程度のモノで、同調側をタップダウンし低Zで取り出してDBMのRFへ入力、ANT側はリンクコイルの低Zとしている。一方局部発振は6AW8Aの3極部で行い、カソードタップハートレーとし、出力はリンクコイルで低Zで取り出しDBMのLoへ入力。DBMのIFは455KHzに変換され、T-38のリンクコイル(元々帯域幅可変用)へ接続しステップアップ、2次側は6AW8Aの5極部でHi-Zで受け増幅しプレート側はT-38のリンクコイルへ接続、2次側(共振)でステップアップされて負電圧検波されAF+DC信号を得る。これを再びグリッド側へ戻してAF増幅しスピーカーやヘッドフォンを鳴らす。IFは固定周波数のため最大利得に調整し易く、選択度が受信周波数により変わらない。軽い正帰還によるIF再生増幅も可能で、利得の拡大も期待できるが、今回も実装しない。
ちなみにDBMは前回同様、
過去の実験結果
から、低損失で大きなLoレベルを必要としないMiniCircuit社のADE-1を利用する。
色々構想が巡るが、今回はあっさりとした製作として、実験要素は余り含まないことにする。
フロントパネルのデザイン
何時も外見から入る悪い癖。ラジオ本体(シャシ等)を製作と連動しながらやるのが良いのだろうが、ファミリーで家族も使うラジオを考えるとやはり外見が一番となる。写真はその様子。中央に同調ダイヤルと大型目盛り板を置き、左右対称にFE103Σ、そしてANT-TRIMとAF-GAINにPL-LEDとPHONE-JACKも左右対称に配置。パネル面にはビス類は一切出さない。木箱に厚みがあるのでそれが出来る。スピーカー前面には保護ネットを挟む。シンプルで作り易そうでいいじゃん!と自己満足。
ちなみに桐箱蓋の「
心
をこめて
」の文字を塞ぐ目的で、スピーカーの穴を空けてから白で塗装してみたが、取り合えずそのまま白でやることになった。将来気が変わったり気分転換で色を付けるかもしれないが…。(Apr 30.2020)
パネルの加工
両サイドに直径95oの丸穴を空ける。板の厚みは5o程度。穴あけには木工用シポラツールを探したが見つからず(後で発見)金工用を使った。板が余り厚くないのと、金工用の工具のため縦目と横目がはっきりしている桐では切れが均等にならないと、ボール盤での使用は諦めて回しで実施。案の定切れ方が縦目と横目の状態で変わるので見た目が美しくない。それで写真の様にサンドペーパーをボビン(味付け海苔円筒ケース)に巻き付け、切り口を整えている様子。この他にボールドライブ(同調ノブ)、ANT-TRIM、AF-GAIN、LED-PL、PHONE用の丸穴が適宜空けられて行く。(Arp 30.2019)
ANTコイル製作とタップ&リンクコイル決め
写真左。同調コイル2次側の共振回路に適当な負荷(1MΩオシロスコープ)を与えて、50Ω信号源の時に最適なリンクコイル巻き数や結合位置を決めアンテナコイルを製作する。同時にDBM(50Ω)へ供給するタップ位置も決定する。結合の粗密で選択特性が変わるが、ここでは利得優先で選択度はIF回路に依存する判断。
写真右。シャシ上に部品を配置した様子。目盛盤を当てがってみたので2連VCを駆動するボールドライブとその取り付け状況が見えない。ボールドライブはシャシ前面へブラインドリベットで固定したアルミ板に取り付けている。VCとの芯出しができるように、取り付けビス穴等には若干の遊びを設ける。VCの端子(ステーター2、ローター1)部は、シャシに穴を空け中から配線処理が出来る仕掛け。 (May 3.2019)
シャシとパネルのドッキング
シャシ上の突起物の位置関係をフロントパネルに罫書き穴を空ける。シャシの固定はシャシ中央に4oタップを立て、フロントパネル全面より4o皿ビスで締め付ける。 写真左。シャシを取り付ける前の様子。写真右。シャシとパネルをドッキングした様子。 (May 3.2020)
シャシ配置と配線
写真左。シャシ上の部品配置状況。IFTはTRIOのT-38Aが2個。なぜか手持ちのTRIO箱の中はT-38Aが2個でT-38Bは無かった。AFTはTOEIの7/5kΩ:4/8Ω。左は7PinMTプラグで電源っ供給。
写真右。シャシ内の部品配置と配線状況。アンテナコイルはフェライトバーにリッツ線を巻いた。局発コイルはダストコア内臓でリンクコイルを追加して出力を取り出す。アンテナコイル左横の基板がDBM。シャシ内にVCの端子が降りているので配線がやり易い。 (May 3.2020)
電源投入と調整
深夜になりいよいよ通電。
写真左。電源(中村理化)からヒーター電源(AC6.3V)とB電源(280V)をつなぎ通電。
写真右。実験中突然電源が入らなくなった…何ということか!。このために電源の蓋を開けて修理するというハプニング。原因はヒューズホルダ内の接触不良。色んなことがあるものだ。 (May 4.2020)
視聴と測定
455KHzレフレックス…-100dBm(40%変調、AF出力S/N=10dB)
882KHz(JOPK)…-93dBm(40%変調、AF出力S/N=10dB)
写真左は同調ダイヤルと目盛盤をはじめとするノブ類のクローズアップ。写真右は背面に空けた2つの穴。左はアンテナ端子用。右はバスレフ穴。電源は外部から供給しているが背面内側へ設置して、バスレフ穴からACコードを引き出す予定。 (May 4.2020)
周辺検討整理
前回からも気になっていたAGC。AF検波出力をDC分も重畳された形で帰還していたが、どうしてもAFのf特に影響する。それにAF-GAINでDC-Bias電圧が変わるのも妙。それで、6AW8A/Pのプレートから小容量で取り出して別個に検波(整流)してDCを生成し、抵抗経由で帰還させてみた。AGCの動作レンジは拡大されるのだが、問題はAF-GAINを絞り切っても音が出る、6AW8A/P自身が大入力時に検波動作をしてしまう模様。絞り切っても音が出るのが嫌で、結局元の方式に戻し、かつAF-GAIN_VR出力はDCカット。更にDC重畳されている検波出力を、1MΩと0.1μFのRC時定数回路を経て、高抵抗(150kΩ)でグリッドへ混合している。複数のアンテナの違いによる受信状況の変化は、この方法が一番ベターに思われる。
この種のレフレックスラジオは、5極管アンプ自身に相応の総合利得があり、負荷側をHi-Zにして300V近い電圧を掛けると自己発振し易くなる。AF検波でRFの抑圧が不十分だと入力側に帰還されて発振ループとなる。IFTの極性を逆にするなどで凌ぎ、同調点をピークに持って行ければ良いが、球自身のCpgやストレー容量による帰還によるものは辛い。そこでプレートから入力側IFTのコールドへ微小容量による帰還を行い発振を回避する。今回は試していないが時間が出来たら試してみようと思う。
本日5月5日までに、説明文書と写真をfacebookへアップロードした。
サマリーページ
で出展者のアップロード内容を閲覧することができる。事務局のご尽力に感謝!。なおアップロード後の修正には既に対応していないので、こちらで
説明文書の最新版
を随時更新している。
写真左は真正面、写真右は真背面から撮ったもの。 (May 5.2020)
ここ数年、中波AMラジオを製作して毎回感じることがある。近年隣接周波数からの混信対策で放送局(送信設備)側で積極的にプリエンファシス(f得操作)をかけるようになった。そのため、IFT2個程度の中間周波増幅だと通過帯域が広く検波出力がどうしてもHi上がりになる。ストレーとラジオだともっと顕著だ。なのでデエンファシスをかけるf得補正をする必要があるのかも知れない…。ラジオの総合f得を調べ、検波出力で相応のデエンファシスを行ってみたい 。(May 6.2020)
その後
左は、遅れていた電源の内臓状況。並四級トランスをフロントパネルの背面に木ネジで固定。AC230Vをブリッジ整流してシャシ内の平滑回路へ導く。併せてAC6.3Vのヒーター電源と電源SWラインもシャシ内へ引き込む。
下は、玄関の靴箱の上にセットした単球スーパーレフレックスラジオ。これで毎朝JOPKのラジオ体操を鳴らしている。何とものどかで、怪しい自作ラジオに興味を持つお客さんも多い。
アンテナは玄関引戸のアルミサッシを利用。メタル電話線へアースをタッチさせるとバズノイズが激減した。単球なのに結構馬力がある。 (Jun 7.2020)