BLCU188XRS SSPA Making Note(Jun 24. 2024〜)

LD-MOS/BLCU188XRSが転がり込む(Feb. 2024)
今年の2月頃、友人のところへ所用で立ち寄った折に、LDMOSの取り外し品だと告げられ、AMPLEON社BLCU188XRS(写真)を幾つか頂戴して来た。併せて、DC48Vの2kW電源をはじめとするガラクタも一緒だった。
このデバイスは既に10年以上前のモノと思われるが、後継品と交換のために廃棄への道を辿ったらしい。それがアマチュアへ流れるルートは20世紀は普通だったが、近年は情報セキュリティとかコンプライアンスとか言って厳しくなった。受け取った瞬間、かなり動揺し頭の中のスイッチが入りそうになった。しかし家業に追われ、甘夏が終る初夏までは身動きが取れないだろうと、入りかかったスイッチは即断してしまった。それから5ヶ月程たった7月、カミサンが百花蜜の小瓶詰めを大盤振る舞いするため再び友人を訪ねると、軒先にガラクタが転がっていて産廃業者が引き取る前なら持ち帰りOKと告げられ動揺。ああせて前回と動揺のデバイスを手渡しで頂戴する。目ぼしいガラクタとLDMOSを手にすると、いよいよ完全にスイッチが入ることになった。
頂戴しこのたBLCU188XRSのスゴイところは、銅板へ直にハンダでボンディングされていること。何と言ってもソース電極が完璧に近い形でRF的に接地され、ソースがRF電位を持つことがほぼ無視できるのでf特は抜群。熱的にも小面積をシリコングリスを介在させてヒートシンクへビス止めするより、ボンディングされた一定量の銅ブロックをヒートシンクへビス止めした方が放熱の速度が圧倒的に早い。新しい感覚でモノ作りが出来そうな気がして来た。
写真は銅板へボンディングされたBLCU188XRS。ボンディングを外す時は、電熱器に載せて全体を温める方法で行う。ボンディングしない場合は左右のタップへビス締めする造りの模だ。溶けたハンダの中に落としても大丈夫ってことか…。

中華製基板到着と突き合わせ(Jul 27. 2024)
当初は自前で両面基板を考えていた。これも頂戴していたミーリングマシンへPCで作成した基板パターン画像を送り込めば容易だろうと思っていた。ところが、PCのOSにWindowsMEが必要と分かり、こちらの作業は停滞状態にあった。7月下旬、たまたまAliExpressで紫色の怪しいPA基板が随所で散見されることに気がついた。資料やデータを求めても、殆どが売るだけのショップで個別の対応などしてくれない。その代わり比較的画質の良い写真やバンドごとのf特や利得の表記があったのでにらめっこ。ネットサーフィンした感じでは同じ基板を数社が取り扱っていて、値段もバラバラだった。
ダメもとで、意を決して注文をすると予定より大分早く到着。何か説明書でもあるだろうと思っていたら、そうした資料は全くない。入力と出力基板のみ。梱包用ラップがグルグル巻きになっていた。中華商法ってのは売るだけで、使う側へ寄り添う気持ちが見えず困惑する。
写真は取り出した基板を、BLCU188RXSの前後に並べてみたもの。こんなモノでkW出力出来るのかと、にわかには信じがたい気持ちにもなる。
基板の部品面には「http//bg7sgm.taobao.com」と印刷があるので、コンタクトを取ろうと接続を試みたが繋がらない。BG7SGMとメール交換や情報交換を試みている。

ヒートシンクに基板を置いてみた(Jul 8. 2024)
連日の真夏日と熱帯夜が続く8月。そろそろ形にしておかないとやや焦り出す。結局放熱処理が出来なきゃ電源も入れられないと基本に立ち返る。山梨県の御仁が、使えそうなヒートシンクをオークションに出展していたので、早々にゲット。この日到着し、早速基板を乗せてイメージづくりを行う。あと2〜3cm幅が長いとベストだったが、まぁオークションの出物だから仕方ないし、熱的に大した改善がある訳じゃない作業を進めることにした。
写真はその様子。基板(≒90ox148mm)の長手方向の長手方向を満たす150o程度は欲しかったが、贅沢なことは言ってられない。でもまぁそれなりに収まってくれそうだ。

ヒートシンク側面研磨(Jul 15. 2024)
問題はヒートシンクを切断した痕の凸凹。最初は金ノコで再切断を試みたが途中から苦しくなりジグソーに鞍替えした。ところが思う様に真っすぐ(垂直)に切断できず断念。結局研磨を掛けることにした。120o角の冷却ファンが取付出来る程度に平らにすることが目的。しかしそんな容易に研磨できる道具が無い。ホームセンターで金属パイプを切断するカッター用の「切断砥石」を買って来て、その上ヒートシンクの塊を削った。この作業もかなりの根気が居るので、諦めずにコツコツとやる。手を抜くと研磨面が丸みを帯びるので、それなりの力と平行感覚が必要だ。真夏日の作業は汗だくになり辛い。
写真は高速切断機専用の鉄鋼用砥石(藤原産業…と材粒硬度A36S、外径305mm、孔径25.4o)とヒートシンク。オンマウスは研磨面に当ててみた冷却ファン。ファンがヒートシンクに密着出来る程度まで研磨している。完璧に平らにはならないので、実装時は補助金具をヒートシンクに固定するか、アルミシール等を使いファンを固定する予定。

1.5kW_LPF届く(Jul 17. 2024)
平行して出力LPFのイメージを膨らませた。これもSSPA基板と同様にAliExpress複数ショップに出展されている。価格もバラバラだが、製造元はSSPAと同じと思われる。SSPAと同様に紫色の部品面はかなり印象に残る。この基板の部品面にも「http//bg7sgm.taobao.com」の印刷があるが、アクセスしても他のディーラーらしきサイトへつながってしまう。
写真は手にしたLFP基板。バンド切替はオンマウスで見えるコネクタへDC12Vを供給し、目的バンドの端子を接地する。10/14、18/21、24/28それぞれ同じバンド扱いになっている。エキサイタのバンド情報から接点を渡せば容易に連動が可能だ。私的にはicomエキサイタが主なので、CI-Vをデコードするよりは、BAND電圧をデコードする方法が簡単でベターと考えている。

ヒートシンクへタッピング…基板実装(Jul 25. 2024)
いよいよヒートシンクへデバイス(BLCU188XRS+銅プレート)を取り付ける。取り敢えず片面に1枚を取り付けるが、反対面への取り付けも考慮し、ヒートシンクへ穴開けとタッピングを行う。反対面は線対称ではなく点対称になる向きで穴開けとタッピングを実施。銅プレートに元々ある3mm皿ビス6本の位置に併せ、ヒートシンクに穴開けとタッピング。銅プレート幅と入力基板取付ネジの位置が1mm程度重なるため、銅プレート側に4oの丸ヤスリを入れて取付ネジが垂直にヒートシンクへ達する様に処理。他出力基板の固定ネジ用の穴開けとタッピングを銅プレートへ施す。
写真はBLCU188XRSがボンディングされた銅プレートをヒートシンクへ固定した様子。銅プレートにはサンハヤトのシリコングリスを塗り、6本の皿ビスで締め上げた様子。タップは締め付けに十分な力を加えられる様に、可能な限り深く切っている。オンマウスはそれに入力基板と出力基板を添えて固定したもの。反対面にも同様に基板を添えてみた。そこには120mm角ファン(DC48V)が見える。何となく雰囲気が出て来た。

実験機レイアウトイメージ…COSEL FETA2500B-48電源(Aug 2. 2024)
COCELのFETA2500B-48が転がり込んできた。これを試作するSSPAの電源に利用するために、PAとLPFと一緒に並べ頭の中の製作イメージを描いてみた。この電源は厚さ1Uだが、2.5kW(数字から判断)の出力があり驚く。左右に配置し、2台のPAユニットへそれぞれドレイン電源としてDC48Vを供給する。この程度の容量があればFT8の1kW運用に安心して使えそうだ。
通電してみるとファンの音がかん高く気になりそう。出力でファン制御をしている様だが、ここでは騒音のことは気にしないことにする。しかしこのサイズでこの出力が得られるなんて、昔では考えられなかったことだ。ふと、先月故障して修理したIC-PW1のことを思い出す…今ならあんなに重く大きくはならないだろうにと。次壊れた時は、外部電源構成にして、自分で用意するだろう。

通電とRFドライブ…動作良好(Aug 23. 2024)
ようやくDC48V供給とBias設定、更にRFドライブまで漕ぎつけ基板動作を確認。結果は「良く出来ている!」の印象。受領したままでドレインへDC48Vを供給。Biasは基本設定は済んでいるだろうと思い端子へDC12Vを供給すると、いきなりドレイン電流が30A超(1.5kW)。こりゃまずいと電源を切りDC5Vで供給。するとドレイン電流は1A台に収まる。微調整で250mA程度に設定。暫くヒートシンクの発熱やBias電流の変動を診てからRFドライブする。エキサイタはIC-7300(100W機)で出力は1%(10MHz/CW)から始め、2%でほぼ400W超を出力。ドレイン電流は約20A超で入力は960W程度で効率は52%。エキサイタ出力を2%に上げると出力は500W超に達し、ドレイン電流は22Aを超え効率も上昇。同じテストを50MHzで行うと、利得低下はあるものの、ドレイン電流を20A確保出来れば出力500W超が得られることが判明。その時のエキサイタ出力は5%だった。真空管じゃこんな芸当は出来ないと頷く。写真はテスト風景。ドレイン電源はMRF429x4のSSPAから引き込み電流はクランプメータで測定。今後、電源を3kW級に強化し出力1kW超でのデータを取得する。

電源の強化…2.5kW電源でテスト(Aug 24. 2024)
MRF249x2_SSPAの電源容量はAC100V受電の出力1.5kW。当初誤ってBias設定したら30Aを超えた。RF駆動した時も時間が長くなると電源内の保護回路が働きシャットダウンする。徐々に扱う電力が増えると、使い辛くなるので、2.5kW電源に変更し簡単なテストを実施した。
ドレイン電流30Aを目標にRFドライブ(10MHz)すると5%程度で容易に900W程度を出力する。更に徐々にドライブレベルを上げ15%程度まで様子を見ると、1kW超にはなるが素直にドレイン電流が伸びない。電流飽和している感じだ。それで、電源(ドレイン)電圧を48Vから50Vへ変更してみた。するとどうだろ、5〜6%で1.2kW程度まで伸びる様になった。ちょっとしたドレイン電圧の違いで、飽和点が上昇する様だ。数Wのドライブで容易に1kW超を出力する驚きは今日も継続している。
ところがコア材の温度上昇が普通ではない。最終出力のトランスのコアは90℃以上になり危ない。透磁率の低下でインダクタンス不足に陥ると思われる。10MHzでは影響が出ていなかったが、1.8や3.5MHzでは影響が出そうだ。 実用機のイメージとしては、1基板あたり600W程度の出力として2合成する形がベターと思われる。平行してコア材を現在より低透磁率にしてコイルのターン数を増やすか…。

電力計にBIRD投入(Aug 26. 2024)
これまで出力電力の測定は、無線部屋のシステムのAux入力(テスト用)につなぎ込み、DAIWA/CN-720Bで行っていた。30年以上も前の製品で、校正などしたことが無かったので、信憑性を高めるためにBIRDを取り出した。4410Aを挿入したら電池が電圧低下でダメなため、43(1000H)で測定してみた。 写真はその様子。エキサイタ出力は4%でSSPA出力は丁度1000Wを示している。終日通電し、時々FT8もどきの送信を数インターバル繰り返すが、状態は安定している。ドレイン電圧は52V、ドレイン電流は28.4A、Bias電圧は2.4Vだった。
ちなみにエキサイタ出力を5%に上げると、SSPA出力はスケールアウトするので1200W程度と思われ、ドレイン電流は30.9A程度となる。
なお冷却ファンは48V用が軒並み不調なため、暫定的に12V用に交換している。但し風量は大分少ないので、冷却テストにはならない。

30分間1kW連続KeyDownと温度(Aug 27. 2024)
FT8の送受信インターバルを数分間繰り返し、各部の温度上昇や電圧・電流・出力の変化を確認するが、RFトランスの発熱が気になっていた。それで、ヒートシンク(LDMOS)の冷却に併せ、基板上の部品(コア材)向けにもファンを用意し冷却してみた。そして、30分間の連続KeyDownテストを1kW出力で行った。最終的に出力は900W程度まで低下。RFトランスやチョークの最終温度は以下の通りとなった。

○エキサイタ:IC-7300(4%≒4W/CW/10.1MHz)
○入力Trans:82℃
○BLCU188XRS:112℃(上)/106℃(下)
○HeatSink:80℃(Cu)/54℃(Fan)
○ドレインCH:71℃/74℃(上)/73℃/89℃
○ドレインTrans(同軸2Tバイファイラ:64℃(上)/68℃(下)
○出力Trans(同軸4Tバイファイラ):92℃
○出力変化:1000W⇒900W…数分の送信停止で復活
*(上)(下)はプッシュプル回路の上側と下側の意
*ドレイン電圧=52V、ドレイン電流≒28A
*Bias=2.4V(ゲート)/≒0.3A(ドレイン)…開始時

この結果から、LDMOSのヒートシンクによる冷却に併せ、コア類の冷却も必須であることを再確認出来た。出力低下は数分の送信停止で復活すため、コア材への冷却を強化すれば、出力低下は抑えられると思われる。当該基板については以下の感想(疑問・要望)を持っている。
○容易にkW出力が広帯域で得られ再現性が高い。
○現状で最大効率が得られる出力(設計値)不明。
○各コア材のデータ不明。
○ドレインCHの直流磁化(磁器飽和)と線材。
○同一Bisa電圧で、デバイス上側下側動作で発熱不揃い。
○推奨冷却方法。
○推奨ドレイン電圧・電流・Bias。
○回路図・取扱説明書無し。
○設計者とのコンタクトと技術フォロー。
○基板印刷のURL:http//bg7sgm.taobao.comは何処。

ドレイン電流・電圧計を変更(Sep 1. 2024)
ドレイン電流の測定に苦肉の策でDCクランプメータを使っていた。ところがこれ、クランプ状態で表示がふら付いたりして安定しない。何しろ本体にあるスイッチを押さないと電源が入らない。一方テスト環境は、他にアナログとデジタルのテスターが1台ずつあり余り綺麗じゃない。それで本日、50Aシャント抵抗と60mV電圧計による電流表示を行ってみた。ところが1kW出力でこれまで表示したことのない34Aも振れる。これ振れ過ぎじゃん!。それで、デジタル表示の50A/100Vの電流電圧計に変更しようと家探ししたが見つからない。結局リモートシャックへ赴きバッテリ回路に挿入してあるモノを外して持ち帰った。写真はそれを電源のリターン側に挿入し、表示器をBird43に乗せたもの。1kW(10MHz)出力時のドレイン電圧と電流を表示させている。電流は29A台に戻り、電圧は調整された53Vを示している。オンマウスはRFドライブしない状態のBias電流を示す。1kW出力を行ってもドレイン電圧は微動だにしない。
ちなみにドレイン電圧を60V付近まで上げて出力飽和の状態を確認しようと思ったが、故障でそれが叶っていない。これ一つのテーマなので電源を修復させ試してみたい。ドレイン損失はほぼ横ばいなので、デバイスより周辺コイル(コア)の発熱(冷却)とドレイン耐圧のマージン(リアクタンス負荷時)を考慮しながら…。
リモートシャックはAmazonへ急遽発注した同型の電流電圧計を投入する予定。
このところ終日通電し、気が向いたらエキサイタのプレストークSWを押す行為が続いている。

そろそろ電力合成の話(Sep 2. 2024)
これもモノグサは話だが、自分で基板を起したり部品を集めるのが面倒なため、再び中華サイトにあるBG7SGMの基板のお世話になる。マウスをクリックするだけで届いてしまうのだから、残り時間が見えて来た年寄りの選択肢として無視できない。などと妙なことを言ってる。
写真は注文してから数日で届いた電力分配(Splitter))&合成(Conbiner)基板。先月末に到着していた。分配も合成もウィルキンソン型を採用している。それぞれに合成用(3T)とZ変換(2T)のコイルとアイソレーション抵抗(100Ω)が確認できる。アイソレーション抵抗は、分配側は一般的な高周波抵抗だが、合成側は金属ベースにセラミック封じダミー抵抗(未ハンダ)を使っている。規格では合成機の電力は1.5kWとされていて、コア材はPA基板の最終変換トランスと同サイズのコアが2個使われている。ここでも相応の熱処理が必要になると思われる。PA側の動作は最大で600W程度を考えているが、この時のドレイン効率は必ずしも最大ではなく、効率よりはIMの抑制が主目的になると考えている。

もう1系統の基板をマウント(Sep 11. 2024)
ヒートシンクの反対側に2系統目の基板を取り付けた。1系統目の基板とは点対称の位置。元々デバイスの位置が中央に来ないため、ヒートシンク全体を2つの系統で均等に使いたい考えからこの様にした。
これで電源を繋げば動作する筈。ヒートシンクの側面にデバイダーとコンバイナーを取り付けてRF系をつなげば、電力合成のテストも行える。ただ、その前にケーブルの取り回しが面倒なので、RFの入出力をコネクタ化する予定。
オンマウスは、最後に残ったシリコングリスを絞り出して塗った銅板放熱器。反対側にデバイスがボンディングされている。シリコングリスは足らないかと思ったが辛うじて間に合った感じだ。何十年か前の名古屋時代にカトー無線か仲野無線で買ったサンハヤトのモノ。

昨日9月10日、拙作HPのBBSにスレッドを立ち上げました。
ご意見やご感想、関連情報をお寄せください。
BBSは以下URLです。
https://radiovillage.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=7594069

Coffee Break1…QEXのSep-Oct/2034(Sep 21. 2024)
QEXのSep-Oct/2034(今月号)に、AMPLEON社のLDMOS(ART2K0**)を2個使ったSSPA(50MHz/1.5kW/リニアアンプ)の製作記事が掲載されています。記事はN0KC/R J CRUMRINE氏によるものです。
ART2K0**はドレイン損失が2kWありる65Vデバイスです。BLCU188XRSより大分パワーアップされた感じがあります。1つのデバイスをパラ接続して2つをプッシュプルで使っていますが、相当余裕を持った使い方をしている模様です。
LDMOSでkWアンプを自作される場合の参考になると思います。画像をクリックするとQEXの記事(PDF)を閲覧できます。回路図ページに関連部品のデータが記されています。
電力合成するよりは、最初からデバイスをパラっちゃう手法の方が、部品点数を減らせ合理的だなぁと今思いつきました。この種のLDMOSは、出力側でのSWR悪化等のストレスに相当強い筈ですから…敢えてアイソレートされた合成など必要ないと考えても良いのではと。チト動揺しますHi。
写真とオンマウスは記事からの抜粋です。写真の青いパッケージ2つにART2K0**が配置されています。

もう1系統の動作確認と電力分配・合成基板準備(Sep 23. 2024)
マウントしたHPA2系用のドレイン電源を用意し、その他電源関係の配線を行い、RFドライブを試みる。HPA1系とほぼ同等の特性(利得・出力)が得られることを確認。写真はHPA1とHPA2のドレイン電圧とドレイン電流(レスティングカレント/BIAS)。ドレイン電源のリターン側に入れたシャント抵抗で電流を測定している。ドレイン電圧はそれぞれ53.2V、BIASはBLCU188XRS_1個(1系統)あたり0.5Aとしている。
オンマウスは、電力分配と電力合成に備え基板の準備を行っている様子。分配側は小電力なので思い切って1.7D2Vと思われる細線を利用。出力は3D相当のテフロン同軸を利用している。各系統の長さは均等にしているが、それ以外はテストなので切り出したジャンク品をテキトウに使っている。

Coffee Break2…JA0TJUからのメール(Sep 24. 2024)
今年は所用で ハムフェアに行けなかったので、友人のJA0TJU真貝氏と会っていない。時々何してるかなぁと思うことがあるが、23日午朝に珍しくBBSへ書き込みがあった。BBSから携帯に届いたアラームでそれを知り、さらに前日深夜にメールを送って頂いたことも分かった。
そして、その後メールを開いてビックリ!。写真の如き新作「LDMOS/MC011K3VXS_50MHz_HPA」。知らぬ間にLDMOSを始めたんだぁ?と早々に電話を入れ携帯でラグチュー。諸々の情報や苦労話を聞くことが出来た。奇しくもクソ暑いこの夏、ほぼ同じタイミングでこちらもLDMOSを突き出したことに、二人とも共通する思いを感じた。しかし彼は既に完成の領域だが、こちらは未だ部分的なベンチテスト状態。もう少し真面目に取り組まないと先に行かれてしまう…。
写真は氏のモノ作りの考えが伝わって来るようなフロントパネル。メーターは私の好きなYamakiタイプを使っているとコメントにあった。やはりFAULT系を充実させている様子で納得。
オンマウスは内部の様子。この解像度では分かり難いがMC011K3VXS(Innogration Technologies)が、右の基板中央に2個鎮座している。50MHzだからトランスはコアを使わず、同軸線路のみで対応している。これで出力は2kW超までほぼ直線に伸びている模様。利得や出力は十分だが、果たしてIMDはどんなものなのだろうか。悪い癖で、密かに浮気心が動き出している。

分配出力を2系統HPA(非合成)を駆動(Sep 24. 2024)
JA0TJU真貝氏からの情報でやや気持ちが焦る。それを抑えきれずに24日深夜、分配器出力をHPA1とHPA2へ繋ぎ、出力と電圧・電流を個別に表示(測定)する系統を作った。
写真とオンマウスはその様子。IC-7300(10MHz/CW)の出力を4%として分配器へ入れ、分配出力をHPAへ入力し、HPA1(左)とHPA2(右)の出力とドレイン電圧・電流を表示させている。オンマウスはレスティングカレント(Bias)状態。大雑把だが、HPA1は800W(Bird43)/25.8A、HPA2は900W(Bird4410A)/26.8A、電圧は両者53.2Vを表示している。ちなみにIC-7300出力を6%に上げると、HPA1は900W/28.3Aで、HPA2は1000W/29.2V、電圧53.2V(変動なし)となる。さらに7〜8%へ上げると、HPA1は950W、HPA2は1050W辺りに達するが、既に飽和領域に達しそれ以上入力を上げても出力は伸びない。Biasはここでは700mA(RF入力待ち状態)としているが、RFドライブ後にこの値に戻るまで暫く時間が掛かる。ドレイン電流約1Aの差が、出力差になっていると思われるが、これ利得差が原因だろうか…。
電源はSW電源で安定化されているので、デバイスとRFトランスの能力がそのまま出ていると思われる。ファン音は別として、静かにkW級を出力する様は、まさに高周波電源的印象。共振に依存する真空管アンプとは全く趣を異にするものだ。
また、この電力になると、測定系やHPA系、そして電源系の接地(コモン)は管理しないと、筐体に異常な電圧が発生するので注意が必要になる。
この後FT8モード(30秒50%ディーティkeying)での連続送信等のテストを行い、発熱等の確認を行う予定。
出力合成は暫く先になりそうだ。

焦る気持ちを抑え切れず出力合成…しかし(Sep 26. 2024)
安定にkWを出力する2系統のHPAを見ていると無性に合成したくなって来る。慌てる乞食は貰いが少ないと昔から言われるが、そんな状況に陥ってしまった。合成基板に繋いだテフロン同軸を、HPA1とHPA2の出力へ繋ぎ、合成出膂力はBird4410Aへ繋ぐだけだから大した作業じゃない。配線を確認し、IC-7300の出力を0%にし、PTTて送信状態にする。出力を4%に上げると合成出力は容易に2kW近くまで振れた。ドレイン電流も両者30A前後でまずまずの値。暫く送信と停止を繰り返してみたが、合成機のバランス抵抗に発熱も無く順調。ところが、4410Aの入力ケーブルのL型変換が窮屈だったので取り外して再び送信すると豹変。PTTを押した時にプツと音がした様な気もするが、気のせいの様な感じもあって定かでない。それ以降、HPA1系のBiasが流れなくなり、カットオフ状態に陥ってしまった。こうなるとバランス抵抗が短時間に発熱し触れなくなる。何てこったぁ!と動揺し、それまでの「順調」が吹き飛んでしまった。
調べるとBias電圧が40mV程度しか供給されない。3端子Reg出力は5V程度あるので問題ない。その後はチップ抵抗群や温度補償ダイオードがあるが、目視では異常は認められない。ややトホホだが、考えたらこの程度のことは良くある話。思い出話にしたいが果たして…。
写真は合成実験の様子。オンマウスは基板上のBias回路部品。12Vを受け、最終的にゲートへ2.6V程度を供給する仕掛け。上のリード線2本は温度補償用ダイオード。あれ、「Vdd=2.6V OR Idd=1A」って書いてあるけど、こんなに掛けてないし流してもいなかったなぁ…。

気になるIC-7300の%出力表示…昨日の余韻(Sep 27. 2024)
当初から気になっていたのだが、エキサイタのIC-7300の%電力表示。4%だったら4Wだろうと思いたいが、それ大間違い。先ず電源電圧の変化で、100%に設定しても100Wにはならない。今までの記録が怪しくなるかもしれないが、今回データを取得して表にしたのが左。先ず100%の表示で出力が100Wになる様に電源電圧を測定。続いて10%間隔で下げて行き、10%以下は1%間隔で測定してみた。電力系はBird4410A。
これまで4%だから4W程度だろうと思っていたのは大間違いで、2.9Wしかない。5%だと3.4Wと言う具合だ。全体の傾向としては50W以上はほぼ一致しているが、それ以下は電力側の数字が低い。真ん中辺りの50%で50Wにセットすれば全体にズレを散らすことが出来ると思われるが試していない。
てことは、このBLCU188XSRのSSPAは、3W程度のドライブで1kWを出力してしまう。利得は何と約33.3倍(25dB)もあることになる。これ、危なくて5W以上のエキサイタは使う気にならない。大分前後する話だが、あらためてその能力に驚愕している。利得があるのは有難いが、エキサイタの出力管理が求められチト厄介でもある。
ところでHPA1のBias。回路図が無いのと、チップ部品の定数が読めなくて苦慮している。ゲート〜グランド間のDC抵抗を診るとテスタの±に無関係に71Ω、正常なHPA2は4.7kΩと∞。これ可笑しいじゃん…LDMOSのゲートの半田付けを外してみる必要がありそうだ。ひょっとしたら逝っちゃってるかも…。

やはり逝っていたHPA1のLDMOS(Sep 28. 2024)
HPA1の不具合(ドレイン電流流れず)がどうも気になって尾を引ている。家業やその他諸作業をやっていても気になる。それで今朝、古墳まつりの道具を会場へ運び入れた後の8時過ぎ、思い切ってBLCU188XRSのゲート側の半田を吸い取り、入力基板を切り離してみた。するとどうだろう、テスタのΩレンジであたると、片側は±の極性に関係なくオープンで正常。しかしもう片側は何と±で68.5Ωを示す。これ完全に逝ってる!。渋々交換の段取りを始めることになった。ドライブ電力はドレイン電流30A程度だから、合成前に単独で長時間テストしていた時より条件は良い筈…何故。確かに入出力のケーブルが立体的につながっていて、コモン系の電位差は随所に発生していることは事実だが、それが直接悪戯したとも思えないし。同軸のシールド側は十分な接地をしてあるがクラックが入ったとか…でもそんなことは無いよなぁ。Bird4410Aへ繋ぐコネクタのシールド側が半断だったとか…色々想像が巡る。写真は、デジタルテスタでゲート〜接地間のDC抵抗を測定している様子。奥に取り外した入力基板が見える。テスタは68.5Ωを示している。Bias回路はかなりオーバーロードだったが、発熱や焼損したところは無かった。テスタでBias電圧を当たると正常な値を示していた。

気を取り直して基板を外すと…RCA-PinJack@1kW(Oct 3. 2024)
先月末から所用の連続で作業が停滞気味だった。逝かれたHPA1系の入力基板は既に外してあった。そして本日出力基板を外そうと、LDMOSのドレイン端子にたっぷり付いたハンダを吸い上げた。続いて基板固定ビスを緩め基板を横へスライドしようとした瞬間にパカッ!。BLCU188XRSの上部が、少し残っていたハンダで基板にくっ付いたまま外れてしまった。大した力を入れたわけでもないのに。これまでかなり乱暴な扱いをしたり、火傷する位に発熱しても大丈夫だったのに何故?。写真は銅ベースにボンディングされた方のセル側(右)と外れてしまった電極の出た上部蓋側(左)を並べた物。上部蓋側にはセルへのボンディングワイヤーと思われるヒゲがドレイン側にみられるが、反対のゲート側には何も見えない。経験的には黒焦げになって切れたりタッチしたりはあるが、こんなに綺麗な状態で残っているのを見るのは初めてのこと。経験豊富な提供者へ打診したら、その彼も初めて見ると言うことだった。資料として価値がありそうなので保管することにする。提供者は顕微鏡で見たら状態が分かりそうだと言っていたが…ルーペじゃだめか?。
話は変わるが、実験でケーブルの取り回しをしているとコネクタが欲しくなる。そこで過去にもSWR測定したり、600W程度のSSPAで試したことのあるRCA-PinJackを試してみた。オンマウスがその様子。3D級のテフロン同軸の両端をPin-Plug処理し、基板側(HPA2系)をPin-Jack処理した。これで15秒送信、10秒待機を15分程度続ける。勘合部の発熱は殆ど感じられない。出力SWRの悪化で電圧の上昇が考えられるので、Jack自身の絶縁強化が必要になるかも知れないが、予想以上の結果に驚いている。これアマチュアの世界だから…業務機ではあり得ない話だけど。

合成機を改修する(Oct 4. 2024)
合成機(Conbiner)を改修した。大きく3件。1件目は、入出力をコネクタかするためにRCA-PinJackを取り付け配線。2件目は、先日片肺ドライブを下関係で、合成機のバランス抵抗が耐え切れず焼損したと思われ、抵抗値100Ω/100Wが値上がりしてkΩオーダーになっていた。これを高電力化した。放熱をしていたにも関わらず、ほぼ瞬間に焼損したと思われるので50Ω/200W級(容積比で倍以上)を2個背中合わせに組み取り付けた。これでHPAが片肺になっても瞬間に焼損することは無くなった。3日目は、バランスが崩れたままで合成動作をするのは余りにも酷なので、背中合わせしたバランス抵抗間にスペーサーを噛ませてリンクコイルを巻き、アンバランス情報としてRCA-Jackに出した
写真は改修した合成基板の全景。大分雰囲気が変わった印象だ。オンマウスは変更したバランス抵抗とリンクコイルの取り出し。この出力を検波してFAULT動作の1要素にする。FAULT要素はこれ以外に、ドレイン電圧不揃い、ドレイン電流不揃い、過大入力、過大出力、反射電力大、温度、その他を考えていて、送信拒否か、程度によっては電源遮断する。
多数のRCA-Jackを見ると、愚の骨頂だと笑われるOMもいらっしゃると思う。しかし、良質なRCA-Pin/Jackは勘合も良くRF特性も良い。耐圧は樹脂チューブを交換すれば改善される。アナログのAudio/Video専用とは思いたくない。外線用は別として筐体内のRF配線にはもっと使われて良いと思っている。一度伝送データを測定し、その可能性を信じて欲しい。

BLCU188XRSを再投入するもいきなりバチッ…悶々の日々(Oct 4-15. 2024)
10月4日の晩、HPA1のBLCU188XRSを良品(と信じて)へ換装する。入力はHPA1とHPA2は分配するものの、出力は合成せず独立した電力計とダミーロードへ接続。基板の出力をRCA-Pin/Jack化したことで、ケーブルの取り回しが格段に良くなった。
これで大丈夫だろうと、先ずBias電圧をアバウトに1.6V辺りに設定、続いてドレイン電源を投入する。レスティング電流が0.5A程度でHPA1/HPA2共に揃っていて気持ちが良い。そしていよいよRFドライブとなりIC-7300(CW)のPTTを押す。4%程度のドライブで元々正常だったHPA2は容易に800Wを超える。しかしLDMOSを交換したHPA1は20W程度とショボショボ。ドレイン電流も4.5A止まりだ。何これとあちこちを突き出すが原因が分からない。それでBias電圧を揺すって見よう考え、基板上のVRを回しドレイン電流の増加を確認しながら10A超まで行ったところで、LDMOSがバチッ!と音を立てて昇天。ゲート側から見ると上部蓋の左手が膨れ上がり、黒焦げになった内部が覗ける状態になっていた。
これ発振?、元々デバイスが不良?、何らかの外乱?、操作・作業ミス?…色々思いが巡る。
写真は景気よく焼けているBLCU188XRS。オンマウスは入力基板をチェック中に発見した異変。上が正常基板で下がHPA1の基板で、相互の違いをテスタで調べていた。分かり難いが、下側のトランス右下にあるチップ抵抗「R3:4700、R4:2R70」の左端(黄点)でハンダクラックを確認(抵抗値∞)。クラック間の静電容量でLDMOSの駆動は出来ていたと考えられるが、Bias電圧を動かして10A程度のドレイン電流で逝かれちゃうのは発振か、電力測定系に挿入したRCA-M変換のM側(シールド)の勘合不良(締め切れず遊び)、或いはその他の要件?…と悩ましい。友人のJA0TJU真貝氏とJR2UBH近藤氏から、貴重な助言がメールで届いている。
悶々としていたのは、地元の祭りや極早生ミカンの収穫などが続いたから。それに、今年はカメムシの異常発生で早生は例年の半分もあるかどうか悩ましいことも拍車をかける。
極早生ミカンの収穫が一区切りついた15日、思い切ってHPA1のBLCU188XRSを交換してみた。入力基板は上記の事情があるため、別の基板を実装した。2度もLDMOSのご臨終に付き合うと、ちとトラウマ状態になるから人間て面白い。全ての操作が恐る恐るになって来る。まぁ気を取り直して作業を進め、最初目指したHPA1/HPA2の単独動作確認を行い、ドレイン電圧・電流そして出力に極端な違いがないことを確認。暫く送信・スタンバイテストを繰り返した後、いよいよ2合成作業に踏み切った。これがいとも簡単に出来てしまったので拍子抜け状態だった。これで不具合が始まった9月26日の状態の前まで復帰したことになる。
写真は2合成後の電力測定。合成機の前後はRCA-PinJack処理したテフロン同軸を使っている。表示は1.8kW程度と思われるが、Bird4410Aのバッテリが半分以下に落ち込み振れが悪い。実際には2kW程度と思われる。ちなみにRCA化テフロンケーブル、合成機アイソレーション抵抗・合成トランスの発熱は殆ど無いが、出力トランスは相応の発熱を感じる。オンマウスは、2系統独立で出力確認をしている様子。両系統とも1kW程度を示していて、ドレイン電流もほぼ揃っていて気持ちが良い。

BLCU188XRS再々投入も妙な動作でバチッ…それでもLDMOS交換追試(Oct 17-18. 2024)
2合成は安定に動作していたかに見えたが、17日から18日へ変わった頃妙な動作をし始めた。写真はその時の合成出力の様子。2kW出力で、送受信をデューティ比50%で繰り返している最中、HPA1/HPA2で30A前後あったドレイン電流が24A前後に低下した。しかし出力は2.6kW程度に上昇。こんな事あり得ないと、カメラを用意して撮影したもの。しかし暫くすると再びバチッ。前回及び前々回と同じHPA1系のLDMOSが昇天した。しかし前回と異なるのはドレイン電流は5.5A流れ出力は130W程度出ている。入力基板を取り外してG-S間の直流抵抗を双方向で計ると、片側のデバイスが85Ωを示した。ちなみにもう片方は∞。ただし、パッケージの損傷はなく綺麗だ。
こうなるとトホホを通り越して「面白い!」の見方に変わって来るから困ったもの。
オンマウスは歴代の昇天LDMOS3個を並べた画像。クリックすると拡大する。それぞれに特徴があって興味を引く。
さて黙って見ているのもしゃくなので、18日夜、再びLDMOSを交換実装してみた。銅ベース(スプレッダー)へタップ立てや、ヤスリ掛けなどの金属加工が伴うので面倒だが、それより興味が先行しているんだろう…。出力合成回路の同軸線路やSSPA基板とのグランド(アース…同軸ケーブルだけで繋がっている)の管理不十分を承知のうえでテストを繰り返してきたが、どうもそのボロが発覚して来た様な雰囲気だ。それで、合成機の基本動作は確認は出来ているので一旦休止し、初心に返って入力分配はするものの、出力は別個の電力計とダミーで観察することにした。 写真は再び登場したBird43でHPA2、Bird4410AでHPA1をレスティングカレント状態(Bias電流)を示して。オンマウスはIC-7600を4%出力でドライブした様子で、それぞれ27A程度のドレイン電流で900W超の出力を示している。この状態は大変安定に動作している。

気になるId低下でも出力2.6kWへ上昇…再び別障害(Oct 21. 2024)
17日深夜のSSPAの振舞、すなわちドレイン電流が30A前後からHPA1/2で同時に24A前後へ低下したのに、出力が2kWから2.6kW伸びた件について(写真)、どうも解せない。友人や先輩の意見を伺ったが今のところ「合成機の動作点変動によるもの」と結論付けている。動作不良とは、合成機と変換トランス間にぶら下がっている補償Cの容量変動、或いは変換トランスコアの温度上昇による透磁率の低下。前者は見た目も温度も特段の問題は無いが、問題は後者。元々1.5kWと謳う合成機なので、1kWの2合成で相当な発熱状況にあった。そこで、発熱がコアのキュリー温度付近まで達し、急激に透磁率を低下させたと推測。これにより、LDMOS側から見た負荷Zがドレイン効率を上げる(ドレイン電流を低下させる)方向へ動いたものと思われる。この結果、合成機出力が2kWから2.6kWへ上昇したと考えている。自己発振も考えられるが、これ現在の結論。
HPA1が不具合になったのはその後の障害で、これまで記してきた状況が発生していたと考えている。もちろん出力が増加した分、発生し易くなっていることは事実だろう。
ところで、これまでとは全く別の症状が発生した。レスティングカレント状態で、何時間か放置しておくのが習慣になっているのだが、21日午前中に部屋を開けていて戻ると異臭。見ると冷却ファンの電源を入れるのを失念していた。レスティングカレントだがヒートシンクはチンチンだ。電源を落としファンと扇風機を当て冷やしてから電源を入れると妙!。HPA2でRFドライブすると1.7V付近のBias電圧が1V近くに低下する。出力は一瞬1kW程度振れるが、直ぐに低下して130W程度になる。正常なHPA2で確認するとBias電圧は2V近くで常に安定している。そう言えばBias設定VRにヒステリシスがあり、このところ特に微妙な設定がやり辛かった。これまで何らかの障害を持っていたモノと思われる。VRのガリとか、RFのバイパス不良が併発している様だ。

気を取り直し配置等変更と状況調査…HPA2の入力障害(Oct 23. 2024)
今日は終日雨のため空き時間はSSPAと戯れた。再び回り道状態にあるが、気を取り直して状況を整理した。そのために、ややオーバースペックと思われる出力48A電源x2台を1台体制にした。1台化により、電源アースが自然な状態で1つにまとまることになる。ヒートシンクも底に15mm程度のゴム足を装着した。基板がヒートシンクの両側面になり、Bias-VRが回し難くなるが、頻繁に回すものでもないし、ドライバーを入れにくい場合は90度起きたタイプへ変更も出来る。写真は配置換えした実験ベンチ。左がHPA2系で右がHPA1系。
ところで21日より動作が可笑しいHPA2。RFドライブはHPA1が750W出力になる程度(IC-7300で3%程度)で行うと、一瞬同じ位の出力となるが、その直後出力低下となる。Bias電圧はRF入力時は1.75Vだが出力に連動して1V程度に低下する。ドレインのレスティングカレントは0Aで、RFドライブした瞬間は10.2Aだが早々に9.3Aに低下し安定する。出力も600W程度振れてから150W程度に低下し安定する。写真とオンマウスはその様子を捉えたもの。ただ瞬間なので表示は正確に追い切れていない。
当初は前回記したようにBias回路の不良と思っていた。ところがBias電圧を上げて行くと1.8V付近から飽和してしまう。VRは0Vまで下げることが出来、1.8V以上は未だ回せるのに制限が掛ってしまう。そして1.8Vにしてもレスティングカレントは0Aのまま。HPA1ではこの様はことは無く0〜3V程度の可変が出来ている。
更に、ドレイン電圧を切るとHPA1と同様に可変できることが判明。LDMOSのゲート側で非線形の制限が掛ってると考えられる。恐らく片側のゲートのみが不良で、もう片側は正常と思われる。Bias電圧とレスティングカレントの関係は明らかに妙ながら、RFを入れた瞬間だけ出力が伸びるってのが解せない。入力基板を切り離せば解明しそうだが…。

実験ベンチをリニューアル(Oct 26. 2024)
これまでの実験環境をリニューアルした。これまで合板上に各部材を展開させていたが、電気的・RF的な安定性を改善するために金属板に変更した。更に金属板とヒートシンク間を電線で接続している。金属板は500m×350o×20oの箱状で、材質は鉄。某社のラック組み込み式引き出し机だったもの。写真はその様子。
オンマウスはヒートシンクとHPAブロックの上面。HPA基板は、デバイスの設置位置が側面中央に来ないため、左右を点対称に配置しヒートシンクへの熱分散の均等化を考慮している。ファンはAC100V/12W級だが役不足を感じるので24W級へグレードアップする予定でいる。これまでの実験から、デバイスの冷却に併せて基板上のコアの冷却が必須。実装時は別のファンを追加するか、ダクト構造にして基板上を冷やすルートが必要になる。
この作業で不良と思われるHPA2のBLCU188XRSが改善される訳ではない。症状は相変わらずだが、動作はそれなりに安定しているのが面白い。しかし、このままでは先に進まないので、近日中に手持ち最後のデバイスを投入する予定でいる。

最後のBLCU188XRS不具合…作業中に上蓋バカッ!(Oct 29. 2024)
最後に残った虎の子のBLCU188XRS。不具合が続くHPA2へ搭載しようと、ボンディングした銅スプレッダに基板固定用の加工(ボール盤で穴開け等)の最中、気付くとBLCU188XRSの上蓋が無い。内部のセルが綺麗に見える。丁度一番最初に上蓋が外れた時と同じだ。なーんてこったぁ!。これに向けてHPA2では入力基板を外し、G-S間をテスタであたるとオープンで、オーバーロードに至る状況ではない。ところが入力基板実装時は、Bias電圧を可変すると、一定値を超えてからはツェナーダイオードの様に、電圧が抑えられて上昇しない。この現象がG-S間で起きていると推測していた。
写真は歴代のNG化したBLCU188XRS群。分かりやすいように古い順に番号を入れてみた。銅スプレッダ上の上側がゲート、下側がドレイン。外れた上蓋はその下方に展開してある(向きは開いた方向を保っている)。画像クリックすると拡大する。NG化と言っても取り外し品だから、完全な物は無いかも知れないし、当初からNGと思われる分も含まれている。6番は1番と同じように上蓋が電極と共に外れてしまった物だが、前述の用に銅スプレッダ加工中に発声した物で、一度も通電しておらず実に悲しい。
これまで実験出来るのは提供者である友人のおかげで、大変有難いことだと頭が上がらない。しかし、更にオネダリをする気でいるから、アマチュアと言いながらも随分図々しいことをしている自分に苦笑する。

HPA再び1台体制の日々…FAN交換と冷却ガイド(Oct 31. 2024)
気を取り直して1台体制で出来る実験を行う。名古屋(都城から)経由で廃材の投棄に来られたM氏が置いて行った段ボール箱に、OAFANの115V/12W級で38mm厚のファンが多数あった。これ幸いとヒートシンク上のファンを入れ替えた。標準のソケットの差し替えで使えるので便利。これで相当風量が増え冷え方が大幅に改善された。その風量を見て、ひょっとしたら周辺を囲ったら、ファン底から吸い上げるエアを、SSPA基板上面も冷やせるのではと思い付いた。早々に段ボール箱を切り細工してエアガイドを作り実装してみた。
写真はその様子。これで15秒間隔で50%デューティ(FT8相当)で連続送信を試みる。30分連続で行っても電力低下は感じられない。それでもコアは触れない程暑くなる。しかしこの措置によりこれまで10分程度で出力していたのが大幅に改善されることになった。筐体への実装は、薄手のガラエポ基板を使えば容易に行えると考えている。
今回、以前から気になっていたコアの発熱によるインダクタンスの変化で、最適負荷領域への誘いを確認することが出来た。時間を早めるために、CW連続KeyDown(出力800W)を行っていると出力トランスのコアが発熱。触れない状態になるが、そのまま続けると突然ドレイン電流が低下し始め、それに連動して出力が1kWを超えて来る。さらに続けると出力は低下を始め800Wを切った辺りで実験を停止。この症状は再現性があり、コアの冷却や間欠出力でで発生までの時間を拡大出来る。ただ、どれ位の冷却を施すかは運用やモードで違うので判断は難しいが、FT8基準で良いのかと思っている。24H連続KeyDowだとしたら、ベラボウな冷却設備になってしまう・・・。

取り外し品お裾分け…2台体制復活(Nov 2. 2024)
友人におねだりしていたBLCU188XRSを頂戴する。朝から雨の中、R1バイパスを東走し富士宮方面を往復した。その甲斐あって、晩までにHPA2への実装が完了した。恐る恐る電源を投入するが無事復活となった。久し振りにHPA1とHPA2の2台体制が整った。
ところで復活したHPA2のドレイン電流が、半分の15A程度しか振れない…実に妙。出力は正常だから益々不思議。電源のリターン回路にシャント抵抗を入れているから、HPA1台に2本の電源リターン線があり、クランプメータを噛ますと片側がゼロ。そんあこたぁ無いだろうとテスターで中継のファストン端子を当たっても問題はない。揺すっても突いても変わらない。同一電源から分配するHPA1側は元より正常に表示されている。原因を探すよりHPAの安定動作が先だと思い、再び2電源体制として復活させた。簡単に追加変更できてしまうので、本当は良くないと思いながら…。写真はその様子。後部にしっかりと電源が2つ並んでいる。右がHPA1、左がHPA2(左)。ドレイン電流が1.3A程HPA2が低く、出力も若干低いのは利得の問題か。電力系のスケールは両者共1000W。
このまま2合成へ突っ走りたくなるが、今回はちょっと慎重になっているのが可笑しい。

再び2合成に挑戦…2kW超出力確認(Nov 10. 2024)
HPA1とHPA2の出力2合成については、前回の経験から随分と慎重になっていた。毎日単独出力を眺める日々が続いていたが、動作は安定しているし、単体での動作の特徴も分かって来た。デバイスの冷却と同時に、出力トランスのコアの発熱を押えない限り安定な動作は望めないことも分かった。前回の2合成時の不具合からややトラウマになっていた感があったが、本日深夜いよいよ合成テストに踏み切った。合成器基板は、ヒートシンクの側面へアルミバーを渡し、そこへビス締めした。これで強電界時の基板のGND電位も安定する筈である。
色々気をもんでいたが、IC-7300を6%出力(4.4W)で出力すると、合成出力はほぼ2kWを示した。そして暫くデューティ50%の送受信を繰り返すとHPA1/2のコアが発熱するが、出力は低下せず2.6kW程度まで上昇する。そしてさらに送受信を繰り返すと出力は低下を始め2kWを下回る様になる。この出力の変動時は、HPA1とHPA2で出力にずれ(変化が不一致)が発生する様で、それが合成機のアイソレーション抵抗の発熱を招いている…手で触れる範囲だが。この傾向は前回の合成時と同じ状況と言える。ただ前回は、GND系の不備でデバイスの不具合を誘引したと思われる。現状の動作は安定しているので、暫く通電とRF駆動を繰り返すことにする。
写真は出力2.6kWを示すBird440A。オンマウスはヒートシンク側面に取り付けた合成器基板。何れもRCA-PinJackが大活躍している。

2.6kW出力の再現性…28MHz動作良好…ところが(Nov 15. 2024)
毎日通電して10MHzでの動作を確認している。出力が2.6kWへ上昇する件は再現性がある。それで28MHzだったらどうかと友人から質問が届き試してみた。利得の関係で出力は1.2kW程度で30分間の連続キーダウンを行った。結果は10MHzであった出力やドレイン電流の増減はなく、終始安定に出力し驚く程だった。各HPAのコア(出力側バラン)の発熱は指で触れる程度だが、合成機の出力コアは触れなくなる。30分も続けるとBird8890−300(2.5kW)ダミーも触れなくなり、部屋の暖房は不要になる。合成器のバランス抵抗の発熱は殆どない。この違いはやはりコアによるものだろうと考えている。
ところが、その直後10MHzに戻ると妙。2.6kWで頭打ちになり低下する動きになると思いきや、Bird4410Aの3kWレンジをスケールアウトしてしまった。自分の目を疑ったが振れは間違いない。ところが早々に出力は減少に転じ1kWを割り込む状態になった。暫く冷却すれば復旧するだろうとトライするが出力は1kWを切ったまま。HPA2のBiasはゼロで合成機のバランス抵抗はチンチン。HPA2は再び不具合に陥った様だ。電源を落としテスタでG-D間のDC抵抗を測ると何と65Ω。これって過去に幾度も経験している値だ。10MHzだけのテストではドレイン電流の流れが少ない感じはしていたが、まぁ安定な動作を示していた。28MHzの連続キーダウンで何かストレスが掛ったのだろうか。ここまでやって来るとトホホを通り越し、(代替デバイスも有るし)怖いモノが無くなっている。