144MHz GU-74B/4CX800A HPAの高圧電源不良と修理(Nov 9. 2017)
11月7日の夕刻、久し振りに
GU-74B/4CX800A(144MHz)
と
GU-84B(50MHz)
の電源を投入しヒートランした。特に送信テストをする訳でもなく、気が付いたときに行っている恒例行事だ。この日はローカル局とラグチュウ中、思い付いた様に電源を入れたのだが、電源を落とすのを失念したまま深夜になった。そして寝る時間に近くなった頃、急にけたたましくバチッバチッ音が発生。暫くすると鳴り止んだが、カミサンはビックリして立ち上がりオロオロ。真空管AFアンプの電源が機嫌を悪くしたのだろう位に考えていたが、実はそうではなかった。無線部屋に赴くと、電源を切り忘れた144MHzのHPAがSWオンのまま切れて(ヒューズ断)いた。あの音はどう考えても高圧のスパーク音…高圧整流か平滑に問題ありか?。
時間が出来た翌々日の9日朝、想定した通り高圧部に異常を発見し修理を行った。以下その概要を記した。
なおこのHPAは、2003年EME用に製作したリニアアンプで、分解するのはそれ以来ではないかと思う。
障害ヶ所の特定@
高圧ユニットのメッシュアルミ板を外し、テスターで8本のケミコンの状態をあたる。するとC22(上記リンク参照)がテスターの方向性を変えても53Ωで導通があり異常(短絡)。ただし放電痕の確認はこの段階では出来ず。
左は作業風景。ユニットのメッシュアルミを外してある。青色っぽい箱はDCファン用電源(12Vx2)。下はユニット上部の基板配線面。テスタはここのケミコン端子をあたった。
障害ヶ所の特定A
続いてユニットを固定しているビスを緩めて取り出す。ビスはタンクボックス上蓋と側板を外し、タンクボックス内側から回す。
そして底板のベーク板を外すとビックリ。ユニットを固定する板ナットとC19の上部角の間に放電痕(C19・基板・金具)。C19の上部は、放電で絶縁チューブが破壊され筺体のアルミが顔を出し表面が凸凹、そして少量だが電解液が浸み出していた。
バチッバチッ音はここで発生したと思われる。判明した不良とその対策は以下の通り。
@C22の短絡(直流抵抗53Ω)…交換
AC19の破損(絶縁チューブ破損・筺体凸凹・液漏れ)…交換
Bベーク基板の黒化…黒化部分削り取り、シリコンスプレー塗布
Cヒューズ断…交換(20A)
左は取り外し底板を外したユニット。左上がC19で液の付着が判る。下は底板のベーク板。右下がC19の位置で、同様に液の付着が判る。右側の金具との間で放電。黒化の様子も確認できる。
ケミコンの交換
交換実装したケミコン。左下(黒)がC19、中央右がC22。手持ちの関係でC19はRubicon製470μF/450V、C22はNichicon製470μF/400Vを使用。オリジナルはNichicon製470μF/450V。
下は取り外したC19(右)とC22(左)。C19は実に無残な状況。C22は見た目は全く問題ないが、どう診断しても端子間の直流抵抗が53Ω。両者とも早々に廃棄処分とした。
ユニットの収納
高圧ユニットとファン用DCパックを所定の位置へ収納する。最後にメッシュアルミをビス留め。
左はユニットの収納作業。下は収納を終えメッシュアルミを取りつけた様子。高圧出力リードのギボシ(貫通コンへ)はこれからつなぐ。
所見
ほぼ想定通りの不具合だった。ただ、C22の短絡は部品単体の問題として片付けられそう(どの時点からかは謎)だが、C19の放電は事情が異なる。
実は、高圧を「High」で使用していた10年程前(EME落成の頃か)、一度バチッ音を確認している。恐らくその時の痕跡が尾を引き、今回の大放電に至ったものと推測している。
ではその最初のバチッ音はどうして発生したか。これは紛れもなくケミコン(C19)と金具の距離(形状含む)の問題と思われる。ただ、距離は10mm近くあり、DC3.5KV程度なら問題はないと思うのだが…。
夜間の商用受電電圧上昇で、高圧電源電圧が連動して上昇し放電を誘発した構図だが、それにしても…と言うのが正直なところ。
今回はたまたま交換したケミコンの背が低く、金具加工の必要は無かったが、今後間隔の確保に併せ鋭角部を作らない工夫が必要だろう。
左は、高圧ユニットの実装を終え、これからタンクボックス側板と天板、そして上下カバーの取り付けを待つHPA。 PS:動作は極めて良好で通常状態に復帰している。内部、特に同調方式を見ていると、製作当時の思いが脳裏に浮かんでくる。