コリンズPM-2電源の不具合と修理(Sep 28. 2017)
もう10年近く前に購入した中古のコリンズPM-2電源。友人からQSYしていたKWM-2の背面へ挿入し、実家で毎日タイマーによる30分程度の通電を装置活性化のために行っていた。ある日電源が入っていないことに気付いたが、何しろ不精者「何時でも治せるから…」と言って放置してから既に1年余り。退職後の身辺整理の中に不具合品復活の項目があり、いよいよPM-2にその順番が回ってきた。
この電源はネットオークションで入手した物だが、カバーを外して中を覗くのは今回が初めて。正直なところ中身を見ていたらオークションには参加しなかっただろう程に内部は荒れていた。ケミコンの交換や電源電圧切替SWの交換が行われており、その作業はお世辞にも上手とは言えず、はっきり言って酷い。ハンダ付けや電気工作に精通していない人が手を入れたと思われ悲惨な状況だった。
これを一から手直しするには骨が折れるため、今回は電源が入らない理由の調査とその修理に的を絞ることにした。
電源が入らないのは115V系電源ヒューズ(4A)が飛んでいるから。しかしヒューズを交換して電源を投入すると、一瞬パイロットランプが付くもののブーンと唸り音があって直ぐヒューズが飛んだ。テスタでACプラグの導通状況を見るとAC側には特段の問題はない。
それでいよいよ10年振りにPM-2を後ろへ引き出して取り外す。ビス2本を緩めカバーが外すと思いのほか小型の電源トランスが顔を出す。この状態でKWM-2との接続コネクタの5番7番に相当する回路(電源SW系)を、ACをつないだ状態でワニ口リードで瞬間のタッチ。するとベーク基板の275V用整流出力リードと金属ポスト間でボォーと鈍い放電。
これかぁと、ベーク基板を外し出力リードを絶縁スパイラルで保護。同様に通電を行うと無事復活したように見えた。
ところが基板を金属ポストへ固定し通電すると再びあのボォー放電。基板を裏返してみると275V用整流出力端子の裏と金属ポストの間に放電痕。ベーク基板の表面を放電が走りベークが深く炭化していた。
炭化部分を削り取り、シリコンスプレーを吹く対策を施した。これで基板を固定しても問題のない動作を示している。
275V用の整流出力程度ではめったにない現象だが、基板を裏返してみると初期のケミコンの電解液が流れ乾いた痕が見られた。こうした部分が湿気等を含んで回路を作ってしまった可能性がある。
写真は復活させ7MHz/SSBをワッチしている様子。半世紀も前に製造されたトランシーバとはとても思えない。
KWM-2A/516F-2
と併せ当局の宝物である。
上図はPM-2の回路図(1960年版取説より)。800Vと275Vはそれぞれ別のトランス巻線から得ているのは516F-2と同じ考えと思われる。ただし516F-2の800VはCT付き巻線を両波整流しているがPM-2は全波倍電圧整流。小型化とSSB専用を意識した結果だと思われる。
我々田舎者にはこの様なトランスの入手は難しく、しばしば同一巻線を利用した。例えば
TOSHIBAの白黒TVトランス
の300Vx2巻線の両端をブリッジ整流し平滑して得る800Vと、トランスCTをチョーク入力で受けし平滑回路で275Vを得る方法を採用していた。この方が整流器の数が少なくて済みプアマンには有利であった。1960年代後半に登場した国産のSSBトランシーバの殆どはこの方式であった。
516F-2はバイアス整流ダイオード以外全て整流管を使っており時代を感じる。当時は未だTV受像機でも整流管(5U4GBなど)が主流だったことを思い出す。ところがこのPM-2は全て半導体ダイオードに置き代わっているが、これはボストンバッグにKWM-2ごと収めるための小型化優先の結果なのだろうか…。
それにしても発売当初より、電源をシステムのコンポーネントとして捉え、KWM-2/2A以外の無線機器へ積極的に流用する用意がされていたことには驚かざるを得ない。
カバーを外したPM-2電源(シャシ上部)。電源トランスは思いのほか小さい。
左は275V用チョークトランスと40μF×2ブロックケミコン。
ブロックケミコン横の双投SWは115V/230V切替。右はスピーカーと高圧ケミコン。
シャシ後面は左からAC電源、115Vヒューズ、GNDビス、230Vヒューズ、バイアス電圧設置VR。
最初にコンプレッサでエアを当て誇りを散らす。この際スピーカーのコーンには距離をおき破損に注意しながら当てる。シャシ上の汚れは、無水アルコールを布に浸したもので拭き取る。
シャシ内部。基板には主に800V用整流ダイオード(倍電圧整流)、275V用整流ダイオード(ブリッジ整流)、バイアス用整流ダイオード(半波整流)と抵抗群が搭載されている。
歴代のオーナーによりダイオード類には交換の痕を感じる。
放電していた箇所。275V出力ライン(赤)と金属ポスト間で放電。リード線絶縁材料の変質と思われる。リード線に絶縁スパイラル処理して一件落着かと思ったが、そうは問屋が卸さなかった。
さらに放電していた箇所がもう一つ。
ベーク基板の穴の位置が金属ポスト位置。その直ぐ右が275V出力端子の裏面。金属ポストにかけて放電痕があり炭化していた。
写真は炭化部分を削り取りシリコンスプレーを塗布した様子。この基板の天板(シャシ)側には800V電源用ケミコンがあり、初期世代で電解液漏れがあった模様で、基板には写真の右方向に映る様なシミが残っている。
このシミに湿気が加わり放電に至った可能性がある。その際に275Vラインのリード線もやられた可能性がある。