サムウエイ社135KHz送信機TX2200Aをテストする
2009年8月2日、職場に届いたCQ誌9月号の表紙に怪しげなキカイを発見。よく見るとTHAMWAYのロゴ。ひょっとしたらとサムウエイ社のサイトを覗きに行くとあった!。新しくアマチュアバンドに加わった135KHz専用送信機TX2200Aだった。 この周波数なら安価なパワーMOS-FETで高周波電源を作る感覚で出来てしまうから、工業用高周波電源を製造するサムウエイさんならお手のものだろうと勝手に想像。
実はこの周波数帯には以前から興味があり、DDSとMOS-FETを組み合わせて自作しようと考えていた。しかしTX2200Aを見て一気に製作意欲が喪失。早々に手に入れて様子を見てみる事にした。
それにしても何台出るか分らない世界に挑戦するサムウエイさんの心意気(アマチュアスピリッツ)に拍手である。 (2009年9月2日)。

TX2200Aの主要スペックと特徴(詳細は上記Link参照)
構成:DDS&CPLD+PowerMOS-FET(D級/パルス幅)で新手法に挑戦
周波数:135KHz(世界初のメーカー品?)
定格出力:50/100W(連続)
スプリアス:-70dB以下(定格出力)
出力デバイス:SW用パワーMOS-FET(2SK2233 x2)を使用で超ローコスト
MultiMeter:VD/ID/OFF/FWD/REF
小型軽量:200(W)×90(H)×220(D)o/2.1Kg 大幅な重量軽減と小型化
電源:13.8V外部電源
構成品:本体・DC電源ケーブル、取扱説明書
荷姿:ダンボール(発砲スチロールクッション・製品出荷票)
その他:RxMute機能など受信系考慮 (写真はサムウエイ社サイトにリンク)

 なおTX2200A開発のきっかけは、JA1FGW吉田OMからの働き掛けによるとの事です。
測定系統
電力:135KHzが相手なのでHF用の電力計は誤差が大きいと見て・・・BirdのHF用では振れなかった。
 @オシロスコープ波形(p-p)から実効値(rms)換算
 Aテスターで測定・・・手持ちのデジタルテスタのACモードは全滅、f特が伸びていない(当たり前か?)。
 BTX2200A内臓電力計・・・手持ち品の中ではこれが一番精度が高そう。
スプリアス:スペアナのカバー範囲で問題は無い・・・但しサンプラのf特が怪しい。
温度:背面ヒートシンク中央で測定。
周波数:GPSにロックさせたHP8657D出力との比較をオシロで行う・・・面倒なので周波数カウンタにする。


使用測定機
オシロスコープ:475(Tektronics)
周波数カウンタ:TR5211A(TakedaRiken)
スペアナ:R4131A(ADVANTEST)
ダミーロード:8404(BIRD)
サンプラ:自作抵抗結合
ATT:UBA-761A(多摩川電子)
テスター:PM-7(SANWA)
温度計:おんどとりRH(TandD)
モニターRx:IC-756(icom)
電源:13.8V/DM-330MV(ALINCO)
クランプメータ:2017(KYORITSU)

測定日時・他
2009年9月6日 21時〜23時 室温:30℃
TX2200A:製造番号09B0014
(写真は連続キーダウンテスト準備中の様子。)

100W出力時のスプリアス特性(高調波)

自作サンプラで適正レベルが確保できなかったので、オシロプローブ(1MΩ)で直接サンプラの同軸ラインにタッチしてレベルを確保。左は100W出力時の高調波状況。ポンコツスペアナなので測定限界付近のf特やIM特性が如何程か怪しい。写真では2ndで-51dB程度あるが、これはメーカースペックの-70dBに及ばない。測定機の能力か測定環境の違いによるものと思われる。
下はサムウエイ社から提供のスプリアス特性。2ndで見事に-70dBをクリアしている・・・流石だ!。
その他の測定データ
 @ブレークインに要するKey-Z・・・17.8KΩ以下。
 A110W出力時のAC入力・・・DM-330MVのAC入力で190VA(100Vx1.9A)。
 B110W出力時のTX2200Aメーター表示・・・ID=11.5A、VD=13.5V(155W)。
 CSWRプロテクション・・・無負荷フルパワー送信で「瞬時」に停止動作。



100W連続キーダウン時の出力・ヒートシンク温度・周波数変動



内臓WattMeterが手持ちの測定機のどれよりも良好であったのでこれを読んだ。全く出力の低下が見られず見事である。工業用RF電源を製造するサムウエイさんにはお手のものなんだろうか・・・。
温度はヒートシンク中央に「おんどとりRH」のセンサーを挟み込んだ。元々常温から連続30分のデータを取得する予定であったが、13分過ぎにTX2200AのTEMPプロテクタが働いたため測定はそこまでとした。プロテクション温度の設定(マニュアルには規定値とあるが何℃か不明)がやや低目に感じるが通常のCW運用では全く問題ないと思われる。
周波数はTX2200Aを136.00KHzに設定し出力を周波数カウンタで測定した。ここでは絶対周波数より温度によるドリフトに主眼を置いたが全く問題ない。少しは動くかと思ったが最小桁1Hz(最大分解能)のカウンタ表示はは全く動かない。ちなみにカウンタの表示は常に135.999KHzであった。
100W連続キーダウン時の出力波形



出力100W連続波の波形。リップル状況(左)と136KHz1.5サイクル(右)の波形。前者AF帯域の不要信号の重畳、後者はD級処理による階調やギザのチェック。両者全く問題ない。まるでオーディオSG出力を見ているようで見事である。
オシロスコープ・プローブ(10MΩ)は自作サンプラを空け同軸ラインにタッチさせた。
100W出力時のキーイング波形

エレキーが無いのでDC12V小型リレーでブザーもどきを作り連続Keying信号を発生させる。リレーコイルに抱かせたケミコンで時間調整して短点を生成。リレーの空き接点から出力を取った。左は、これによりTX2200Aをキーイングした様子。リレーとケミコンの簡易メカニカル・エレキーなので、時間軸方向にジッタがあり短点の終り時間が変動している。
ここで注目すべきは、立ち上がり時に16段階の諧調が確認できること。これはCPLDプログラムで意識的にエンベロープ制御している模様。一風変わった作りと言うか設計者の心意気が感じられる。ところで、何かそうする理由が別に有るのかにも興味がある。0.2ms/Divとかなり拡大している。立下りはジッタではっきりしないが比較的急峻に落ちている。モニターRxでは非常に良好なCWトーンが確認できるので念のため。 下はIC-756をフルブレークインにし外部Ry出力でTX2200Aをキーイングした短点。立ち上がり時に微量のオーバーシュートを感じるが非常に綺麗だ(0.2ms/Div)。



TX2200A写真集



フロントパネルが箱状になっていて嬉しい(DXV500Lもこの形に期待したい!)。余計な物が無く操作し易い。受信用アンテナ系統(アンテナ切替やMuteレベル)の組み込みも有り難い。アンテナと受信機をつなげば直ぐ使う事が出来る。
内部の俯瞰写真を撮らせて頂いた。中央の基板は上がDDS&CPLD、下が出力LPF、背面のヒートシンク内側にD級HPA。配線は主にフラットケーブル・同軸・電源線が各部を行き交う。さすがに135KHz、LFP基板のトロイダルコイルの巻数は、当然だがHFとは大きく異なる。
アンテナオープン時の保護回路は非常に良好に動作する。アンテナや同軸をオープンにして送信すると一瞬にして出力制限がかかり動作停止する。



 
希望的観測・・・所見
 @冒頭にも記したがフロントとリアパネルが箱型にプレスされ、上下からのコの字のカバーが取り付く形はグッド。
 Aこの大きさはスペースを必要とせず有り難い。
 Bハードの塊かと思いきや、ソフト処理によるアイデア満載に拍手。
 CKeyingモニター用にサイドトーンが欲しい。
 D受信機能を組みトランシーバにしたら・・・。
 ETEMPプロテクションの温度設はもう少し高目でも良い・・・常温なら連続キーダウン可仕様にしたい。
 F出力LPFの単体特性を見たい。
 G設定ダイアルツマミは半埋め込みが良い・・・突起を減らしたい。
 H内部配線の処理がもう少し綺麗だと有り難い。
 Iワットメーターは手持ちの測定機より正確だった。
 JFWD/REF機能はグッド。
 KSWR悪化時のプロテクション動作は素早く見事。
 LTEMPを数字(温度)で表示したい。
 M回路図を公開して欲しい。
 N全体の構成からして\50K程度にまとめ込むには相当な苦労を感じる。
 O幸か不幸か自作派の制作意欲を殺ぐ製品の様に思う。
 P設計者の心意気・内部構成・コンセプト・新バンド・・・全てに新鮮。
 Q底面に折畳みのアングルが欲しい・・・フロントパネルを目線に正対させたい。
 *この他の追試や気付いた点は随時追加します。色々記していますが、サムウエイさんの努力は大変なモノだと思います。      
参考資料
 @TX2200Aによる135KHz変更申請