(C)Two-Way/学級経営/小学校1年/給食指導/嘔吐/「魔法の砂だよ」
子供が嘔吐したら…。教室の中のささやかな危機管理。
「これは魔法の砂だよ。」
と言って、私は、パラパラと汚物の上に振りかけた。
子どもたちは、またまた驚きである。
私のまわりに人垣ができた。
この光景は、ちょっと不思議である。
給食中、吐いたものが近くにあると正視できず、顔をゆがめたり、キャーと言って後ずさりする方が多いからである。
そして、野次馬が出て、教室が騒然となるからである。
子どもたちは、汚物と私の様子を見ている。
私は、これをほうきで、サーッと掃きとった。
「うわー、きれい!」
一年生の言葉である。
汚物を片付けてこんな言葉を言われたのは初めてであった。
「セメントみたいだね」
と言った子もいた。
砂を汚物にかけると水分を吸収して固まるのである。
さらに悪臭もシャットアウトされるのである。
私は、掃きとったものをちりとりに入れ、外へ捨ててしまった。
学校教育の現場には、このようなささやかだけれども確かな知恵がたくさんある。
そこに子どもたちのドラマが生まれる。
数ヶ月後、また給食のとき、教室で吐いてしまった子がいた。
今度は、ちりとりやほうきを持ってきてくれる子がいた。
砂をまきたいという子もいた。
また、足りなくなった砂を缶に補充してくれる子もいた。
空いた缶を持って運動場の片隅の砂場まで駆けていく二人の子どもたちの姿が何ともかわいらしかった。