【生きる羅針盤の提案(19):夫婦】
人権宣言等から導き出した「人権羅針盤」は,人権という言葉が目指すものに言い換えると人が穏やかに生きるための羅針盤と考えなければなりません。だからこそ,先に示した子どもの育ちを考える羅針盤としても有効になることができたのです。ここでは,「生きる羅針盤」としての様子を描き出しておくことにします。ふと立ち止まって,「生きるとは?」という疑問に出会った際に,その思考のお手伝いができたら幸いです。
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「私が生きる羅針盤」を考える第19版です。今号では,仲良し夫婦というものの明確な定義は存在していないようですが,『仲良し夫婦』に共通していることが7つあるという意見が表明されていましたので,参照しつつ,どうすれば良好な夫婦関係を築けるのかを考えてみましょう。
【お互いに関心を持ち合う】
《説明》2.相手に興味や関心を持って接して
人間関係とは相互関係で成り立っているため,夫婦に限らず,関わる人や身近な人に興味や関心を持って接することは,良好な関係を築くうえで大切なことと考えられます。自分の話を聞いてもらえたり関心を持ってもらえることは,誰でも好感を持つものです。
会話が多いというのも,お互いが相手の話に興味や関心を示しているから,自然と会話が続くものです。仲良し夫婦は,自分のことを一方的に理解してもらうことを求めるのではなく,お互いが相手に興味や関心を持って接しているのではないでしょうか。
※仲の良い夫婦であるためには,もう一人の自分が自分だけではなく私たち夫婦という意識を持つことが基本になります。その具体的な活動として,私たちの現状を確認し合い尊重するということが大事です。相手の存在を先ずは受け入れて,私たちという存在を生み出し維持していくお互いの心づもりを確認し合うようにします。お互いが向き合うのではなく互いに寄り添う形で協働する姿勢を生活の場で実現していけばいいのです。
【お互いに信頼し合う】
《説明》3.信頼しあえている
信頼関係が成り立っているとお互いの価値観や人間性を把握できるので,誤解や揉めごとが減りやすくなります。また,信頼関係が築けている夫婦は,その関係性の中に安心感が存在しています。
そのため,2人の間でトラブルや誤解が生じた時も,雰囲気が悪くならずに改善案や解決策を出し合えます。協力しながら乗り越え,その経験をさらに絆を深くするきっかけとすることができるのでしょう。
※仲の良い夫婦であるためには,お互いに信じ信じられ,頼り頼られているという相互関係によって生活が営まれている実情が大事です。ともすれば一方的に任せて頼り切ってしまったり引き受けてしまったりという生活パターンになりがちですが,できるだけできることは共にするという結びつきが感じられる工夫が求められます。私たち夫婦という形を具体的に感じられる生活様式が望まれます。タイパやコスパにこだわり無駄を省こうとすると,つながりも巻き込んで失います。
【お互いに会話し合う】
《説明》1.夫婦での会話が
仲良し夫婦は普段から会話が多く,その会話を楽しんでいるのが特徴です。コミュニケーションを取ることは,お互いの気持ちや考えを理解しあえる有効な方法です。なんでも本音で話せたり,言うべきことはきちんと相手に伝え合いながら,何気ない会話も自然に交わしています。
一方,仲が悪いと感じている夫婦は,会話が少ないことや共通の話題がない,というケースが目立ちます。
※仲の良い夫婦であるためには,お互いの今の状況を相互理解する対応と所作を身につけておくことです。意思の伝達ではお互いに確認し合うための基本形があります。挨拶などは常套句であるかもしれませんが,分かっているだろうという手抜きが過ぎると,了解しあうタイミングのずれが生じてしまいます。今この時にできる会話によってお互いの気持や緊張,言葉の意味合わせなど,微妙な摺り合わせが一致できるから,夫婦が寄り添っているのです。
【お互いに感謝し合う】
《説明》7.感謝の言葉を伝えている
「ありがとう」という言葉で感謝を伝えることは,自分自身も幸福感や喜びを感じられると言われています。
関係性の中では,感謝の気持ちを伝えあうことで,結束力が強くなり,お互いに助け合うことが増え,満足度も高まることが期待できます。些細なことでも相手へ感謝の気持ちを言葉で伝えあえる夫婦は,仲良し夫婦の共通点ともいえるでしょう。
※仲の良い夫婦であるためには,自分がしている行動が私たち夫婦の生活の維持に適っているという共通確認が必要であり,そのための感謝の表意が大事になります。今している行動,しようとしている行動は私たちにとって必要であるという相互の了解ができれば,相手との関係は円滑に維持できる向きに進んでいきます。もしも自分勝手な不都合な思惑による振る舞いをすると,相手との夫婦行為には支障を起こします。そのことを想定できない配慮のなさは,まさに仲を裂く振る舞いとなります。行動は他者の行動と合わさって意味を得て価値を生み出すものという理解が良い仲を生み出す常識です。
【お互いに触れ合う】
《説明》4.一緒に外出を楽しんでいる
仲良し夫婦は休日など一緒に外出を楽しんでいます。わざわざ遠出しなくても,散歩をしたり近くで買い物をしたりなど,2人で過ごす時間をムリなく作っています。
6.スキンシップを取っている
夫婦や家族では,スキンシップを取って愛情を感じあうことで幸福度も高まります。仲良し夫婦は,日常的に自然な触れあいを通して,お互いの愛情を感じることができているのでしょう。
※仲の良い夫婦であるためには,二人だけの楽しくつながっている時間をしっかりと持つことです。言い換えると夫婦である時間をきちんと過ごしていれば,私たちというつながりに楽しさが生まれ,続けていこうという前向きな意欲が湧き上がってきます。この時間を失いたくない,そういう時間を楽しむことが明日への寄り添いの期待をもたらしてくれます。夫婦としての実感を味わい続けていきたいという瞬間があれば,それが仲の良いことの証となるでしょう。
【お互いに支え合う】
《説明》5.家事や育児を協力している
共働き家庭が増えている中,家事や育児をどちらかに押し付けず,自然と協力し合える夫婦も仲良し夫婦の特徴といえるでしょう。仲の良い夫婦間では,夫側も「手伝ってあげる」という感覚でなく,お互いをサポートするという感覚で協力できているのでしょう。
※仲の良い夫婦であるためには,自分の可能性,成熟度の向上だけではなく,私たち夫婦の成熟度の向上を普段に気にかけていることが必要です。私たちの人生の充実をお互いが意識し合うことで,生きているお互いを愛おしく受け止めることができます。ところが,自己完結の思いが優先してしまうと,ついつい相手の存在を見失って放置してしまう行動をしてしまいます。それはあなたのすることと切り離してしまいます。共に生きるという原則を実践することを宣言して夫婦として寄り添った尊い愛情を,常に発揮し続けていきたいものです。淡々と明日に向かっている夫婦の生きる姿がお互いに見えているからこそ,仲良く日々の暮らしを営み続けていけるのです。
○以上,仲の良い夫婦である7つの行動を,「生きる羅針盤」に対応させてもらいました。これまでの対応事例と同じように,あまり違和感もなく整理をすることができていると思います。それぞれの想定している世界観における具体的な表現は違っていても,人が思い至る幸せに生きる境地は本質的に同じ構造になっているようです。それぞれを別個にしておかずに,まとめていく作業から,人の生き方について深い理解が得られるのではないかと期待しています。
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社会に真剣に向き合って生きていくことは,人として誰もが願っていることです。ただ人には本能から派生する弱さもあります。その弱さを押し込めていく意思が必要になります。そしてその意思は目標を必要とします。それが羅針盤なのです。
人としてすべきことから外れないようにすることは大事であり,それは誰にとってもできることであり,気持ちの良いものです。しあわせは誰かだけにあるのではなく,皆に同時にあるものです。権利を守る,言葉は堅く響きますが,人として生きていく自然な姿であればいいのです。
(2025年06月08日)