『子育ちは 向き合う人に 教わって』
■子育ち12資質■
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『子育ち第2資質』
【他人を慈しみ交際できる】
《まえがき(毎号掲載)》
子育て羅針盤では,子どもの育ちを6つの方向と2つの領域から考察します。6つの方向とは,「誰が,どこで,いつ,何が,なぜ,どのように育つのか」という問題視座です。また,2つの領域とは,「自分の育ち(私の育ち)」と「他者と関わる自分の育ち(私たちの育ち)という育ち」の領域を表します。6つの方向にそれぞれ2つの領域を重ねた12の論点が「子育て羅針盤」の基本的な考察の構成となります。
この第95版では,こどもができるようになっていく資質という面から育ちを考えていきます。こどもの健全な育ちというものの中身を具体的なできることに表してみます。それぞれが程度に違いがあってもそれは個性になりますが,そのことを自覚しておけば,幸せに生きていくことができます。何となく育っているように思えても,生きる喜びをしっかりと自覚する視点を身につけて欲しいのです。もちろんこれまでのように,健全な育ちを実現する羅針盤としての全方位を見届けることができることを再確認していただけたらと思います。
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《交際するのは誰ですか?》
前号では子どもに決断する機会を与えるように書きました。子どもに決めさせたら,わがまま勝手になるという心配をされたことでしょう。その心配も当たっています。そこで第2の基礎力が必要になります。
もう一人の子どもが自分と周りの人を同じ人間と見ることができるようになれば,わがままを言うことはなくなっていきます。
少子化の中では,周りが大人ばかりとなり,子どもはどうしても優遇されて甘やかされて育つようになります。世の中は自分の思い通りという錯覚に陥ります。社会性の育ちの環境としては適切ではありません。
自立が順調に進むためには,他者を対等に受け入れられるかどうかがポイントになります。自分の意のままにならない状況をもたらす他者が存在することを受け入れることができるとき,交際の幅は大きく広がり,内容も深く豊かになります。人は皆同じという意識が確立しなければ,社会で自分を生かすことができません。
親が望んでいる子ども像は思いやりのある子どもです。もう一人の子どもが相手の立場になって考えることができるときに,自分を抑えて優しい気持ちを相手に向けることができるようになります。
子どもたちが遊んでいるとき,お互いのわがままからちょっとした衝突が起こりますが,すぐに順番にするといった社会的な解決法を覚えていきます。
毎日の生活の中で譲るという経験をさせてください。家族や友達が楽しく生きるためには,お互い様の気持ちが大切であることをいろんな場面ごとに教えてやりましょう。
自己認識,アイデンティティとは,もう一人の自分が依るべき基盤です。人格の中核であり,自分と他を区別化・同一化する作業から得られます。自分は何かという問に対する答を自覚する,それがプライドを産みます。最初のうちは,名前(他者と区別),姓(家族で同一),次に性別,年齢,役割,県人,団体,といった括りの中の自分を認識していきます。
自分を見つめる「もう一人の自分=一般的他者」との葛藤を経験します。その葛藤を通して,人は自らのあるべきものを志し,美意識を育てていき,自己形成をすることができます。人の振り見て我が振り直す,という作業が,知らないうちに進んでいきます。だからこそ,朱に交われば赤くなるといわれます。もう一人の子どもは,他者と密接に重なって,自らを律する役割を果たすようになります。自律するのです。
アイデンティティクライシス,IDENTITY CRISISが起こります。自己同一性の危機であり,平たくいえば,もう一人の自分が自分の存在を確信できないということです。我思う故に我あり,といわれるように,もう一人の自分と自分が対等に向き合っていることが,人としてのあり方の基盤です。
自らの存在感,それは自他の確固とした関係性を認識できることです。例えば,外からの規範という形で,私は○○の子ども,課長,妻である,人はこうあらねばならないという認識,一方で,内からの規範という形で,私は○○で社会に貢献したい,私は○○を信条とするものである,といった自意識を持つことです。人という字は支え合う形をしているといわれます。自他を同時に認識する「我々」という言葉によって,交際という関係を構築して生きていくのです。
保護者には,子どもを「世話しなければ!」というストレスがかかります。過剰に感じていると,「子どもは居ない方がよい」と望むようになります。ひょっとした瞬間にそう思ってしまう自分が怖くなるかもしれません。園や学校に行くようになると,「やっと手が掛からなくなった」とホッとする気持ちがあります。仕事をする上で,子どもは足手まといになるとして,結婚しない,産まないという選択が盛んです。子どもなんていない方が? 子どもであったはずの私たちですが?
★落書き★
18歳から選挙をすることができるようになりました。投票率はこれまでは全年齢で平均するとおよそ50%ということです。選挙のたびに投票率の低下に現れる政治への無関心が問題になっています。外国はどうなっているのでしょう。オーストラリアでは投票率は90%を超えています。それは義務投票制だからです。棄権すると罰則や罰金が科されます。罰金はおよそ2000円,裁判所で争うと5000円ほどの罰金と裁判費用がかかります。押収や南米など21の国が義務化しているそうです。
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