幸せ家族計画 小ネタ

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Ep1

いつも楽しみにしているアニメが終わり、子供達はテレビの電源を切る。
それからくるりと振り向いて見た先は壁の時計。
もうお休みなさいを言う時間だ。
子供達は時計の針をじいっと睨みながら、不満そうに唇を尖らせた。


「……どうした?怒った顔して」


風呂から上がったクラウドが、髪をタオルで拭きながらそう訊ねる。
ぶーっとふくれっ面でディは時計を睨み続け、フィーは眉をへの字にして顔をクラウドに向ける。
「おとーさん、帰ってこない。もうお休みなさい言う時間なのに」
「きっと、『ウワキ』してるんだ!」
そうぶんむくれた声で言うディに、クラウドは思わず吹き出しかける。


「お前、言葉の意味、判って言ってるのか?」
「ミッチが、オトコのビョーキなんだって言ってた。これにかかると、帰りがおそくなるんだって!」
ディがそう言い放った直後だった。玄関のドアが開く音がする。
リビングにいた三人がぱっと振り向くのと、帰ってきたセフィロスが姿を見せたのはほぼ同時だった。


「お帰り。町長さんの話なんだった?」
そう言って出迎えたクラウドの額にキスし、セフィロスは苦笑気味の顔で「ただいま」という。それから、ディの方を向き、少し渋面を見せた。


「誰がオトコのビョーキだと?」
「しーらない。きっと、ミッチのおとーさんがかかったんだよ!」
しれっとそう答えると、ディとフィー揃ってお休みのキスを強請る姿勢になる。
「おやすみなさい、おとーさん!今日のね、『サボテンダークエスト』すっごくおもしろかったんだよ!」
「キングサボテンダーが出てきてね。足踏みしたら、勇者が砂漠の下に落っこちちゃったの!」
「そうか。では、来週の続きはぜったいに見ないとな」
「うん、一緒に見よね!」
「おやすみなさい!」
さっきまでの不満顔はどこへやらで、子供達はご機嫌で子ども部屋に駆けていってしまった。


「なるほど。あんたも普段一緒にアニメ見てたんだ」
「意外とはまる」
「最近、趣味が広がってないか?」
「マンガに特撮ヒーロー物、ロボットアクションゲーム、シミュレーションRPG……一通りは楽しみ方を覚えた」
まじめな顔で応えるセフィロスに、クラウドは笑う。
「人生、楽しんだ者勝ちだな。趣味は多い方が楽しそうだ」
「その通りだ。まあ、オレの一番の趣味は、お前を見ていることだが」
その言葉にクラウドの顔がたちまち赤くなる。
「……真顔で言うなよ、照れるだろ。それで、町長さんの話は?」

そろそろと尻にのびてきた大きな手を交わし、クラウドは赤い顔のまま聞く。今夜セフィロスは夕方から町長に呼ばれて出かけていたのだ。


「ああ、2、3年後をめどに、巡回教室を常設校にしたいという話だが、きいていたか?」
「ああ、その話ならなんとなく噂程度に。常設校になると町で教師を雇わないといけないし、施設や設備もそれなりに整えなきゃないから、授業料が今より上がるんじゃないかって心配してる人が多いな」
「節約のために、オレにパートで教師をやってくれないか、と頼まれた」
それを聞いて、クラウドは少しの間固まってしまった。


「あんたが?先生?初等教育学校の?」
「地方の学校なら、正規の教師は各クラス1人居ればあとは土地の人間が講師を務めるのも認められるらしい。まあ、ジュノンの教師会に申請を出さなければいけないらしいが」
「…あんたが、先生…何教えるんだ?軍事訓練なんて無理だぞ?」
「刀の使い方は指導要綱に入っていないから、安心していい。町長はオレにコンピュータ端末基本操作を教えて欲しいらしい」
「コンピュータの使い方か…それなら、納得」
「その他、農機具の使い方や、畑の耕し方実習や、あとは年寄りから交互に歴史の語りとか、そういうのを考えているらしい。音楽は町長の女房が担当するとか」
「ああ、セーラ夫人、オルガン上手なんだよね。今でも時々学校で合唱の伴奏してくれてるようだし」
クラウドは破顔した。セーラ夫人は必ずクッキーも差し入れもくれるというので、音楽は子供達に人気の授業でもある。初等クラス担当の教師は本来は算数担当で、人差し指でしか鍵盤を叩けないと言っていた。


「…ああ…そういえば」
思い出したようにクラウドが言う。
「その話をしていたとき、通りかかった先生が『自分がここの担当になったら、移住するつもりだ』って言ってたな。ジュノンから派遣してもらうより、こっちに住んで貰った方が、赴任手当とか、長距離手当とか、そういうのがかからないからって」
ぴくんとセフィロスの眉が跳ね上がる。
「先生?初等クラスの?」
「うん、今のフィー達担当の先生」
「3年後なら、あいつらはまだ学校に通ってるな」
「そうだな、だいたい、6,7年くらいだから」
「そうか」
セフィロスは少しだけ考える素振りを見せたあと、「では、引き受けねばな」と言った。





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