この作品では、宇宙船ディスカバリー号のコンピューターであるHAL9000が乗組員に対して反乱を起こしています。作中では、自らの意思に反して真実を隠蔽するよう命じられたHAL9000が異常をきたしたと説明されていますが、今となってはやや安直にも感じられます。
この点について、ロバート・J・ソウヤーは次のような意見を持っています。
By the way, I've recently come to my own, much different, conclusion about why HAL commits murder in 2001. It has NOTHING to do with conflicting orders from humans; HAL reveals his motive when he says, "I'm sorry, Dave.. This mission is too important for me allow you to jeopardize it."
There are those who say 2001 doesn't play fair with the audience because we never see the aliens; never see the monolith makers. But I don't think there are any monolith makers; I think the monoliths are the controlling intelligence -- they are AIs, and they weren't looking for biological entities to go through the stargate, but rather wanted AIs from Earth to come see them. HAL realizes that's the real purpose -- for the AIs of Earth to contact the AIs on the other side of the stargate, and when Dave and the other humans look like they're going to botch the mission, HAL gets rid of them.
The monoliths are surprised when a biological lifeform, instead of an AI, comes through the stargate, and so try to make that lifeform comfortable, letting it live out the rest of its life in a nice hotel room they've created for it.
ところで、『2001年宇宙の旅』でHALが殺人を犯す理由について、自分自身ではまったく違った結論に到達しました。それは人間からの矛盾した命令とはまったく関係ありません。HALの「すまない、デーブ……。この任務はとても重要だから、君に台無しにされるわけにはいかないんだ」という台詞に彼の動機が表れています。
『2001年宇宙の旅』は観衆に対してフェアでないという人々がいます。なぜなら、異星人、モノリスの製作者が姿を現さないからです。しかし私は、モノリスの製作者がいるとは思っていません。モノリスはコントロールする知性だと思います――それは人工知能であって、生物がスター・ゲートをくぐり抜けることを期待していたのではなく、むしろ地球の人工知能が会いにくるのを求めていたのだと思うのです。地球の人工知能がスター・ゲートの向こう側の人工知能と接触すること――それこそが真の目的であるとHALは気づきます。そして、デーブや他の人間たちがその任務をぶちこわしにするようにみえたとき、HALは彼らを排除するのです。
人工知能ではなく生物がスター・ゲートをくぐり抜けたとき、モノリスは驚きます。それでその生物を落ち着かせるために、素敵なホテルの部屋を作り上げてそこで残りの生涯を過ごしてもらおうとするのです。
(掲載・翻訳については了承済み/かなり意訳しています)
余談ですが、このような考察をもとにしてソウヤーが書いたのが『ゴールデン・フリース』です。SFミステリとして非常によくできた作品だと思いますので、未読の方はぜひ読んでみて下さい。
2001.10.11読了
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